2010年08月07日

安全保障についての政治主導が見えない「核の傘」にしがみつく日本外交・・・ 天風録 八葉蓮華

 米国で「ヒロシマの声は届いていますか」と尋ねた。すると「日本政府にこそ届けて」と軍縮の専門家に切り返されたという。おとといの国際シンポジウムで、本紙の金崎由美記者が報告した情けなくも、考えさせられる話だ

 オーストラリアのエバンズ元外相は昨年5月、「日本は核兵器が大好き」と皮肉った。生物化学兵器などの脅威を念頭に、核の先制使用の選択肢は何としても残したい。「核の傘」にしがみつく日本外交が核軍縮の足を引っ張っていると言うのだ

 昨秋の政権交代後も、この分野での官僚の力は強い。岡田克也外相が先月、核軍縮の有識者懇談会を設けたのもその対抗策だろう。一方で、菅直人首相の諮問機関は非核三原則の見直しを近く求めるという。安全保障についての政治主導が見えない

 見過ごせない動きもある。政府はインドに原発関連の機器を輸出できるよう原子力協定の交渉を始めた。核拡散防止条約(NPT)に加盟しない核保有国への輸出はNPT体制を崩しかねない。野党時代に民主党も反対していた

 先日の会見で、成長著しいインドへの輸出拡大を説いた菅首相の感覚を疑う。ビジネスのために被爆国の責務を置き去りにするのか。6日の平和記念式典に臨む首相にこそ、ヒロシマの声を届けねば。

 天風録 中国新聞 2010年8月2日
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2010年08月05日

らくだ「元気でいる」生きていると装い、金をせしめるプライバシーの壁・・・ 天風録 八葉蓮華

 長屋の嫌われ者を兄貴分が訪ねると、フグにあたって変わり果てた姿になっていた。家財は金にならないガラクタばかり。通夜の酒や料理を工面しようと、嫌がるくず買いに亡きがらを背負わせ、大家のもとへ…。歌舞伎にもなった落語「らくだ」である

 気味悪さではこちらも引けを取るまい。東京都内で最高齢の111歳で生きているはずの男性が、民家の自室からミイラ化した状態で見つかった。亡くなったとみられるのは約30年前

 一つ屋根の下で暮らしてきた家族は「元気でいる」と近所に話していた。生存確認にきた民生委員にも「会いたくないと言っている」と面会を拒んだという。プライバシーが厚い壁になっているのなら、何とも割り切れない

 「長寿番付19位」の110歳で都内在住と公表された女性が、実は40年以上も前から行方不明だったケースもある。複雑な家庭の事情のせいで、家族は届け出ていなかったとされる

 かの男性の口座には教員だった妻の遺族年金約950万円が振り込まれた。少なくとも600万円が引き出されていたという。落語の方では、シ体を踊らせて大家を縮み上がらせ、首尾よく酒やさかなにありつく。生きていると装い、金をせしめる昨今の事件に比べれば、まだかわいげがあると言うべきか。

 天風録 中国新聞 2010年7月31日
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2010年08月04日

極刑の在り方「現場」を見届けた、人権派として知られた法相・・・ 天風録 八葉蓮華

 禁固35年はあまりに軽すぎる。カンボジアの人たちの本音ではなかろうか。1万数千人を闇に葬った政治犯収容所の元所長に先ごろ下された判決だ。「頭をなぐられたようだ」と元収容者。拷問の苦しみがよみがえったのかもしれない

 1970年代、極端な共産主義を振りかざしたポル・ポト政権。裁判抜きの処刑や強制労働で国民の4人に1人が命を絶たれた。おぞましい記憶が、アジアで初めてシ刑の廃止に踏み切らせる原動力になった

 多くのユダヤ人が虐サツされたアウシュビッツ強制収容所の元所長は戦後、権勢を振るった収容所の庭先で絞首刑に処された。そのシ刑台は今も見学者に公開されているそうだ。肉親を奪われた無念は、容易に消し去ることはできまい

 国際人権団体によると、昨年のシ刑執行国は日本など18カ国にとどまったという。廃止国は増えている。ならば禁固刑を何十年、何百年と積み上げるか、獄中に一生とどめ置く終身刑で代えるのか。どちらにしてもシ刑との落差は大きい

 千葉景子法相が極刑の在り方について議論を呼び掛けた。執行の署名だけで済ませてきた歴代大臣と違い、初めて「現場」を見届けたという。シ刑廃止論にくみする人権派として知られた法相。その胸にどんな思いが去来したのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年7月30日
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2010年08月03日

干満の激しい動きが海中の養分をかきまぜ、多くの命をはぐくんできた・・・ 天風録 八葉蓮華

 「生きている化石」と呼ばれるカブトガニにとって、この時季の大潮はよほど特別なのだろう。上げ潮に合わせて砂浜の奧へ進み、卵を産む。ちょうどふ化にぴったりの、砂の温かさになるらしい

 決まって旧暦の6月17日。宮島の管絃祭も夏の大潮が舞台になる。今年はきのうがその日に当たった。「月の出と潮の満干がこの祭の夜の事実上の進行係であった」。広島市出身の作家竹西寛子さんが代表作の「管絃祭」に書いている

 廿日市市沖の大野瀬戸を巡った御座船は大鳥居をくぐり厳島神社の奧へ向かう。回廊ぎりぎりまで海水が満ち、平安絵巻は最高潮へ。船を引く広島市の江波漕伝馬(こぎてんま)保存会や呉市の阿賀漁協のこぎ手たちも腕の見せどころだ

 300年前、転覆しかけた御座船を両地区の船が助けて以来続く大役という。かつて江波では20歳を迎えた地元漁師の「一生に一度の晴れ姿」だった。今や近隣からボランティアがはせ参じるのも、時代の流れかもしれない。「管絃の船を曳(ひ)きゆく八丁櫓(ろ) 鈴木厚子」

 きのう夕刻から深夜にかけ、神社付近の潮位は3メートルほども上がった。干満の激しい動きが海中の養分をかきまぜ、多くの命をはぐくんできた瀬戸内。連綿と続く祭りは「母なる海」を実感させてくれる舞台装置でもある。

 天風録 中国新聞 2010年7月29日
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2010年08月01日

一刀斎「ええんちゃうの」と人生を楽しめる懐の深さ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「みんなで渡れば怖くない」。世相を風刺する漫才がはやった約30年前。もう一ひねりしたのが京都大名誉教授の数学者、森毅さんだった。「ひとりで渡ればあぶなくない」。何でも横並び、がんじがらめの管理社会を皮肉った

 世の中が一色に染まることを何より嫌った。昭和一けた生まれ。滅私奉公でお国に一生をささげると誓った「よい子」が、戦後は民主主義を唱えるようになった。正義がひっくり返る恐ろしさが骨身に染みていたのかもしれない

 「学者も一種の芸人や」と言って長唄や歌舞伎に親しんだ。古今東西の小説、詩の選集も編む。漫画家、タレントなど対談の相手に選んだ顔触れが、またすごい。旺盛でしなやか。そんな好奇心の一端が垣間見える

 時事問題から宝塚歌劇、プロ野球の評論に至るまで、新聞やテレビに引っ張りだこになったのも道理だ。「一刀斎」と親しまれた風ぼう。世の動静に切り込み、時に「常識」をいなしてみせる快刀乱麻ぶりが小気味よかった

 大学では定年までずっと教養部に。難しそうな数学も、幅広い視点からとらえ直したら面白い、という含みではなかったか。教養とは物知りのことではあるまい。「ええんちゃうの」と人生を楽しめる懐の深さ。森さんの伸びやかな一生が教えてくれた。

 天風録 中国新聞 2010年7月27日
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2010年07月31日

幽霊「父と暮せば」江戸の昔から怪談は夏の風物詩・・・ 天風録 八葉蓮華

 「講釈師、冬は義士、夏はお化けで飯を食い」。江戸の昔から怪談は風物詩だったようだ。お岩さんが「うらめしや〜」と出てくる歌舞伎「東海道四谷怪談」の初演が185年前のきょうに当たる

 浪人の夫に父をコロされ、揚げ句に毒薬を飲まされて醜い顔に変わり果てたお岩。もだえシんだ後、怨霊(おんりょう)となって夫たちをのろいコロしていく…。おなじみのストーリーながら、あらためて人間の業の深さを思い知らされる

 芝居や話だけでなく、幽霊を描いた絵も多く残る。安芸高田市八千代町の善教寺に女性の幽霊図が伝わっている。白装束に腰まで髪を垂らし、まなざしをつり上げた鬼気迫る形相。両の手はだらりと。写真で見るだけでも鳥肌が立ちそうだ

 とはいえ冥界(めいかい)に旅立った人がこの世に残した思いは、恨めしさや憎しみばかりではなかろう。井上ひさしさんの戯曲「父と暮せば」には、原爆で亡くなった父親の幽霊が登場。生き残ったことに負い目を感じる娘を励ます

 「幽霊は意見が変わることはない」と言ったのは評論家の加藤周一さんだ。暗サツされた源実朝や戦シした友人ら今は亡き「幽霊」との対話を通じて今を問うた。戦争反対の生涯を貫いた加藤さんならではの姿勢だろう。幽霊の効用を暑さ払いだけにしておくのは、もったいない。

 天風録 中国新聞 2010年7月26日
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2010年07月30日

しばらく静かに「次の一手」彼を攻めるに、我を顧みよ・・・ 天風録 八葉蓮華

 この夏、囲碁ファンの熱い視線を浴びるのが、小社などが主催する第35期碁聖戦だ。5連覇で史上3人目の「名誉碁聖」を目指す張栩(ちょうう)碁聖に、医師から棋士に転じた坂井秀至(ひでゆき)七段が初めて挑んでいる。話題性もたっぷりだ

 第3局までは張の2勝1敗。8月の第4局は坂井のホーム、関西棋院で行われる。過去の対局はほぼ互角。坂井が逆転して新しい碁聖の座に就けば、経歴も相まって棋界のスター誕生となろう。タイトルの行方は予断を許さない

 刻一刻の情勢といえば、こちらの「局」も先が読めない。参院選で大敗した菅直人首相は、臨時国会で野党の攻勢をかわしきれるのか。その一方で、息を潜めて首相が身構えるのが、民主党の小沢一郎前幹事長の「次の一手」だ

 碁の打ち手としても知られる小沢氏。「局」を読む力業で、政界での存在感を保ってきたといえる。「しばらく静かに」との首相のご託宣に従い、音無しの構えで9月の党代表選を迎えるとも思えない

 とはいえ、党内政局が景気対策などの重要課題を行き詰まらせるようでは困る。首相が消費税発言で「ねじれ国会」を招けば、小沢氏も政治とカネの問題にけりをつけないままだ。彼を攻めるに、我を顧みよ―。碁の心構えを説く中国の格言がある。政治もまたしかりだろう。

 天風録 中国新聞 2010年7月25日
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2010年07月29日

堂々のファン投票1位「マエケン」カープ投手陣の中で、まさに孤軍奮闘・・・ 天風録 八葉蓮華

 ぎりぎりまで引き絞った弓から矢を放つ。細身の体をしならせながらの投球には、そんなイメージがある。直球を投げ込むときの指先の感覚を開幕直後につかんだという。力を抜いて腕を振り、ボールを放す瞬間にだけ力を入れる。ぐんと球威が増した

 マエケンことわれらがカープの前田健太投手である。矢のようなストレートが、昨夜のオールスター戦でもさえ渡った。あこがれの舞台に堂々のファン投票1位で出場。そこで期待通り、打者6人をノーヒットに抑えてしまう。やはり並の22歳ではない

 いつも通り両腕をブラブラさせる「マエケン体操」。あれで要らぬ力が抜けるのだろう。ゆったりしたフォームからテンポよく繰り出す速球が打者をつまらせた。満ちたりた笑顔も華やかな球宴にぴったり。欲を言えばあと1回投げさせたかった

 故障者続きのカープ投手陣の中で、まさに孤軍奮闘。味方の援護が1点どまりで敗れた試合の後、「1―0で勝てる投手になりたい」とコメントした。この負けん気が、セ・リーグ前半戦で投手成績の三冠をもたらしたに違いない

 35年前の球宴を思い出す。山本浩二、衣笠祥雄両選手が連続アーチを架け、その勢いでカープが初優勝を果たした。マエケンに続く二の矢、三の矢よ出てこい。

 天風録 中国新聞 2010年7月24日
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2010年07月28日

元工作員との対面「絶対生きている」との言葉に希望をつなげたい・・・ 天風録 八葉蓮華

 一度見ると忘れ難い写真だ。音戸瀬戸を背に、笑顔の少女が躍り上がるように立つ。両手は弟たちとしっかり結ばれている。小学生のころ広島市で暮らした横田めぐみさん。36年前の家族旅行の一こまだ

 転勤族で何度も引っ越した横田家。「広島時代が一番幸せだった」と父の滋さんは振り返っている。家族の中心にいためぐみさん。動物好きで、太陽のように周りを明るくしたという。写真から3年後、新潟の地で人生が暗転する

 片や元外交官を父に持ち、北朝鮮で恵まれた日々を送っていたのが金賢姫(キムヒョンヒ)元工作員だ。大学で語学力を見込まれ、国家のテロ工作に駆り出された。めぐみさんより2歳上。運命の糸が交わるように、本来なら接点がないはずの2人が26年前に出会った

 拉致被ガイ者とテロ事件実行犯。北朝鮮という国家によって翻弄(ほんろう)されたことには違いなかろう。母の早紀江さんは元工作員との対面で「懐かしさを感じた」と明かした。まな娘の境遇と、目の前の女性の数奇な半生を重ね合わせたのかもしれない

 たくさん猫を飼い、周りを楽しませた。元工作員が伝えためぐみさんの暮らしぶりは、少女のころの面影をとどめる。「絶対生きている」との言葉に希望をつなげたい。運命の糸が解きほぐされる日はいつか。

 天風録 中国新聞 2010年7月23日
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2010年07月27日

大暑、無理せず、水分や塩分を補給して休憩し、涼しい服装で・・・ 天風録 八葉蓮華

 草を枕とした漂泊の俳人に、夏の日差しはひときわこたえたに違いない。「暑さきはまる土に喰(く)ひいるわが影ぞ」。種田山頭火の句にある。今ならアスファルトにあぶり出されるわが影ぞ、とでもなろうか

 17日に梅雨が明けた途端、連日の猛暑に見舞われている日本列島。きのうは群馬県館林市でついに38・9度と、今年一番の記録を塗り替えた。人の体温でもこれほど上がれば、寝込んでしまう「高熱」である

 冷夏だった昨年を上回るペースで増えているのが熱中症だ。広島市消防局に問い合わせると、梅雨明けからおとといまでの4日間に、21人が救急車で運ばれたという。9人は屋内にいて具合が悪くなったというから侮れない

 体温がどんどん上昇し、体の水分や塩分が失われ、シに至るケースもある。多い年には全国で600人近くが亡くなっている。無理せず、水分や塩分を補給して休憩し、涼しい服装で体調管理を、との専門家のアドバイスを日ごろから心掛けたい

 江戸時代、突然倒れるので「霍乱(かくらん)」などと呼ばれていた。怖さは知られていたようだ。暑気あたりしないよう夏の土用にはうなぎ、しじみ、京都にはあんころもちを食べる風習があると聞く。まずは「精を付ける」のが乗り切るこつかもしれない。あすは大暑。

 天風録 中国新聞 2010年7月22日
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2010年07月25日

海の藻からバイオ燃料を作る技術の開発「藻刈り」が形を変えて・・・ 天風録 八葉蓮華

 「藻刈り」は夏の季語である。浅海に茂った藻を舟から刈り取り、肥料にした時代があった。暑い盛りの重労働だが、畑に入れるとサツマイモの味がぐんと良くなる。因島の重井地区では特に重宝し、戦後間もなくまで農家に藻刈り舟があったほどだ

 女性も舟に泊まり込んで藻を刈った。民俗研究家の神田三亀男さんが聞き取りを著書「女人天耕」に収めている。舟いっぱいになるまで1週間はかかる。その間に真っ黒く日焼けし、手にはまめができたという。「舟溜藻刈りの舟も来て憩ふ」(能村登四郎)。つらい作業ゆえの深い安息感が漂う

 この半世紀で、瀬戸内海の藻場の多くは埋め立てられた。手間をかけて藻を使う農家もほぼ絶えた。残された藻場ではこの時季、深緑色のアマモが1メートル余りに伸びている。やがて枯れ、多くは切れて流れる

 夏の季語通りの営みが今も続くのは、広島県中部の三津湾付近である。竹原市忠海で石風呂を営む稲村喬司さん(68)が、今年も近く舟を出す。竹ざお2本をアマモにからませ、ねじるように刈る昔ながらのやり方だ

 一方で、海の藻からバイオ燃料を作る技術の開発も進む。「藻刈り」が形を変えて復権する日は来るのか。アマモを敷き詰めた石風呂で、海の香りに包まれながら夢想してみる。

 天風録 中国新聞 2010年7月20日
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2010年07月24日

ほとんど見かけなくなった「二千円札」日本人の肌に合わないのかもしれない・・・ 天風録 八葉蓮華

 最近、ほとんど見かけなくなったものに二千円札がある。沖縄のシンボル守礼門と源氏物語絵巻をデザイン。2000年のミレニアムと沖縄サミットを記念して、10年前のきょうデビューした

 これまでに8億8千万枚を発行。今も流通しているのは沖縄を中心に1億1千万枚にとどまる。残りは日銀の金庫で眠っているという。6年前からは印刷もされていない。たんすの奥にしまい込んでいる人もおられよう

 使い勝手が悪いこともあるようだ。利用できない自動販売機が多い。五千円札と間違えたという笑えない話も聞いた。20ドルや20ポンド、200フランなど外国では広く使われる「2」の付く札。「1」と「5」になじんできた日本人の肌に合わないのかもしれない

 二千円札発行が始まった時の首相は森喜朗氏。失言が相次いで支持率を下げ、1けたまで落ち込んだ。就任1年で辞任した森氏を含めて6人の首相が交代。とりわけ小泉純一郎氏が退陣してからは、入れ代わり立ち代わりが激しい

 「42年ぶりの新しい額面の紙幣」。当初のふれこみと裏腹に二千円札が消えゆく日も遠くなさそうだ。こちらも「16年ぶりの政権交代」という鳴り物入りで登場した民主党政権。2人目となる菅直人首相にすれば、二千円札の二の舞いはごめんだろう。

 天風録 中国新聞 2010年7月19日
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2010年07月23日

「ゲリラ豪雨」雷雨が起きやすい状態は続くという。まだまだ気は抜けない・・・ 天風録 八葉蓮華

 「屋根の上より、おけにてうつすがごとく」。今から214年前の寛政8年7月、現在の広島県安芸太田町一帯が集中豪雨に見舞われた。そのすさまじさを、手に取るように地元の古文書が伝えている

 潰(つえ)と呼ばれた土石流や洪水に、太田川沿いのあちこちの集落がのみ込まれた。近郷も含めた犠牲者は60人以上に及んだという。古文書に記された降り方から専門家が推定したところ、1時間50ミリを超える激しさだったようだ

 おととい多くの土石流を発生させた庄原市の豪雨も、それに勝るとも劣るまい。夕方のわずか3時間に集中。観測史上最大の時間雨量64ミリを記録した。日中は晴れ間がのぞいていたと聞く。同じ市内で全く降っていない地域もあった。典型的なゲリラ豪雨だろう

 救助された住民が語っている。「夕飯を作っていたら雷が鳴り、大雨が降り始めた。気付かないうちに家の中に水が…」。記録的な豪雨には雷がつきもの。お天気博士の倉嶋厚さんによれば「梅雨どきは一鳴り50ミリ」という予報官の言い伝えもあるそうだ。今回も例外ではなかった

 きのう、中国地方はようやく梅雨が明けた。といっても太平洋高気圧の縁に沿って暖かく湿った空気が入り、所によって雷雨が起きやすい状態は続くという。まだまだ気は抜けない。

 天風録 中国新聞 2010年7月18日
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2010年07月22日

尾道と倉敷の間「福山発」の映画づくり、現地ロケもふんだんに・・・ 天風録 八葉蓮華

 「どこにある街ですか」。福山市出身の作家島田荘司さんは古里を聞かれるたび、悔しさをかみしめていたという。人口46万人余を数える中核市。尾道と倉敷の間と説明して、やっと分かった顔をされることも珍しくない

 もどかしさを吹き飛ばそうとばかり、「福山発」の映画づくりが佳境に入っている。長崎俊一監督の「少女たちの羅針盤」。市が3年前に創設した「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の初回優秀作品の映画化である

 選者の島田さんが受賞作に加えたのも「これなら映画に」との思いがあったらしい。そんな熱意が映画プロデューサーの佐倉寛二郎さんや美術監督の部谷京子さんらを動かし、全国デビューのチャンスをつかんだ

 それだけに来春公開を目指す映画は、福山での現地ロケもふんだんに。間近に城を望む新幹線ホームの撮影を手始めに今月いっぱい、早朝から深夜までカメラを回す。夕暮れの公園に、夜の商店街に、響く「カット」の声にわくわくする市民も多かろう

 映画に出演するエキストラをはじめ、官民を挙げて盛り上げる態勢も整えている。「心を揺さぶる傑作」と島田さんは太鼓判を押す。最近は「鞆のある福山」として知名度も上昇中。映画の大ヒットで街の存在感がさらに高まれば…。

 天風録 中国新聞 2010年7月17日
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2010年07月21日

起業家の卵どころか、「カネの卵」の方に飛びついてしまった・・・ 天風録 八葉蓮華

 ある日、家のガチョウが金の卵を産んだ。次の日も、次の日も1個ずつ。欲張りな飼い主は我慢できず、めんどりの腹を探ってシなせてしまう。イソップの物語は目先の利益にとらわれる浅はかさを教える

 「卵をかえす銀行」。そんな英語の会社名を持つ日本振興銀行が、金融庁の検査を妨げた疑いで捜査されている。大手の銀行なら、はなも引っかけない中小企業。その救済を6年前の設立時の旗印には掲げていたはずだ。いったい何が起きているのだろう

 おいそれと借り手が見つからない。そのうちに消費者ローンなどと結び付きを強めていったようだ。ローン会社に高利で融通し、債権回収も委ねて荒稼ぎする手口。起業家の卵どころか、「カネの卵」の方に飛びついてしまった

 借り手の家の子どもが不法労働に駆り出されていないか、学校に通っているか。アジア最ヒン国とされるバングラデシュのグラミン銀行は、独自の物差しで「金の卵」の育ちようまで見極めようとしている。ヒン困救済への貢献が認められ、ノーベル平和賞を受けた

 グラミン銀行を創設したムハマド・ユヌス氏は言う。「社会問題を片付けるのが目的であり、目先の利益のためではない」と。二つの銀行とも、当初の志はそんなに変わらなかったはずなのに。

 天風録 中国新聞 2010年7月16日
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