2010年06月15日

時は金なり「時の記念日」時間を大切にし暮らしの無駄を省こう・・・ 天風録 八葉蓮華

 平城遷都1300年祭でにぎわう奈良。南に向かうと、さらに古い飛鳥の里が広がる。石組みの掘割に囲まれ、木柱が並ぶ一角。日本初の時計「漏刻(ろうこく)」の遺跡と教わる。池に満たした水が階段状の水槽から次々に漏れる。その量を棒状の目盛りで読み取る仕組みという

 1339年前のきょう「初めて時を打つ」と日本書紀は記す。それまでは季節や昼夜をもとに「時」を大まかにとらえていたのだろう。文明の歩みとともに細かく刻むようになる。漏刻のひと目盛りは、ほぼ3時間だったようだ

 この故事にちなんで6月10日を「時の記念日」としたのは1920年。第1次世界大戦中の好景気から一転、株価が暴落し銀行が破綻(はたん)するなど戦後恐慌に陥ったころである。政府の後押しを受けた団体が「時間を大切にし暮らしの無駄を省こう」と呼びかけた

 「時は金なり」の勧めである。時を刻む幅は、その後もますます細かくなる。めまぐるしく変わる株式や為替の相場は、今や秒刻みだ。交通機関も1分、1秒をと時間短縮を競う

 先のバンクーバー五輪では、手に汗握り100分の1秒の争いをテレビ観戦した。そんな勝負はスリル満点だが、時に追われ、時に縛られる身。たまには、おおらかに時を告げる漏刻の時代に帰ってみたい。

 天風録 中国新聞 2010年6月10日
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2010年06月13日

主役の交代を機に支持率はV字回復、息の合ったハーモニーを響かすことができなければ・・・ 天風録 八葉蓮華

 ♪また君に恋してる/いままでよりも深く/まだ君を好きになれる…。坂本冬美さんがしっとりと歌い上げるラブソング。CDだけでなく、若い人たちの利用が多い携帯電話の着信メロディーでも人気を集めている

 旋律の美しさもさることながら、長年連れ添った二人のきずなをつづった詞が共感を呼ぶのだろう。そんなファンに、民主党の枝野幸男幹事長がいる。カラオケで自慢ののどを披露するという

 きのう発足した菅直人政権を支えるバックコーラスの指揮を執る枝野氏。「全員参加」や「自由闊達(かったつ)な議論」といった真新しいタクトを振り始めた。昨夏の衆院選でメンバーは一挙に増えたものの、前任の指揮者はおそろしく統制が強く、しまいにはろくろく声も出なくなった

 さながら歌を忘れたカナリアのよう。「口を開くなといわんばかりだった」と新人議員から聞いた。議員同士の勉強会すら思うように開けなかったらしい。息が詰まるような党内の空気だった、というのもうなずける

 主役の交代を機に支持率はV字回復した。いったんは愛想を尽かした国民に「聞く耳」を持ってもらえたようだ。だが、そうそう甘くはない。党全体で息の合ったハーモニーを響かすことができなければ、もう「君を好きになる」ことはなかろう。

 天風録 中国新聞 2010年6月9日
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2010年06月12日

時代とともに変わる「顔」最近は一見しただけではどこなのか分からない・・・ 天風録 八葉蓮華

 駅前にはその土地ならではの「顔」がある。例えば東京はどっしりと風格を漂わす丸ビルや中央郵便局。名古屋といえば、地球儀そっくりの屋上看板があったビルが浮かぶ。車窓からでも、街や暮らす人の手触りを感じるものだ

 先日、京都駅を出て思わぬ人波にもまれた。駅のすぐ南側に7階建ての大型商業施設が開業したばかり。スーパーやシネコン(複合映画館)、専門店など130店が入るという。古都にふさわしい新たな顔となるのかどうか

 時代とともに変わるのは当たり前で、広島や福山などもご多分に漏れない。大手スーパーやビジネスホテルが駅前の一等地を占めた高度成長のころ。消費者金融の看板も競い合った。今や再開発の高層マンションやホテルが主役になりつつある。デパートが撤退して空き地になった所も

 昭和の時代に各地を歩いた民俗学者の宮本常一は、10万枚に及ぶ膨大な写真を残している。旅の途中で降り立った駅前の街並みや店先のスナップも数多いという。日常のありふれた風景の向こうに、街の活気や人々の暮らしぶりを見て取ったようだ

 当時と違い、最近は一見しただけではどこなのか分からない。そんな特徴のない駅前が増えたような気がする。何げなく見過ごしているわが街はどうだろう。

 天風録 中国新聞 2010年6月8日
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2010年06月11日

沈黙がまた憶測を呼ぶ、静かにと言われても、口数はもともと多くない・・・ 天風録 八葉蓮華

 人は権力から遠ざかるとき、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いをすることがある。「言葉に対する信頼がなくなったら政治はやれない」と民主党との連立を解いた福島瑞穂社民党党首。鳩山由紀夫首相の言葉の軽さをばっさりやった

 権力に手が届きそうなときは捨て身の発言もいる。「小沢(一郎)氏はしばらくは静かにしていただいた方が本人、民主党、日本の政治にとってもいいのではないか」。これで菅直人氏は民主党代表選の流れを決定づけた。「脱小沢」の虎穴に入って得た新首相の座

 権力を手中にすると安全運転に戻るのも無理からぬところか。首相選出後の会見で、「代表選が終わればノーサイド」と宣言。何を聞かれても慎重な受け答えは、まるで前任者の裏返しのようにみえる

 さて、党幹事長の権力を手放した小沢氏。しばらく静かにと言われても、口数はもともと多くない。「忖度(そんたく)政治」と批判されたように、黙っていることが権力の源泉のようでも。表向きの沈黙がまた憶測を呼ぶ

 ほかの動物にない知性をヒトが得たのは言葉を身につけたからという。政治は人知を結集する営みだ。「この20年にもわたる日本の行き詰まりを打破するような政策を実行できる体制を」。その決意で人事に心を砕く新首相に一番ほしいのは、言葉の重みだ。

 天風録 中国新聞 2010年6月6日
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2010年06月10日

「人生唯一度」20年にわたる日本の行き詰まりを打破する・・・ 天風録 八葉蓮華

 幕末の志士、高杉晋作が下級武士や農民たちに呼び掛けて決起した奇兵隊。長州藩の実権を握る守旧派と立ち向かい、やがて倒幕につながる。駆け抜けた27年の生涯だったが、晋作は草の根パワーで維新の扉を開いた

 座右の銘は「人生唯(ただ)一度」。そっくり同じ言葉を信条に掲げるのが宇部市生まれの菅直人新首相だ。高校生の時には墓参りに行くほど晋作にあこがれた、と著書で明かしている。庶民のエネルギーを一つにした郷土の先達に心ひかれたようだ

 得意の弁舌は中学時代から。生徒会の役員選に立った。同級生の間では「頭が良くて口が立つ」と評判だった。わずかの差で涙をのんだが、クラスを回って熱っぽく公約を訴えたという。自らの可能性を試す気概も培われたに違いない

 金権選挙が幅を利かせていた1970年代。故市川房枝さんとの出会いが政治に目を向けるきっかけになった。当時81歳の市川さんを半年かけて口説き落とし、参院選に担ぎ出す。カネを使わない「理想選挙」で当選させた志は、今も健在だろう

 鳩山由紀夫首相の退陣で、にわかに出番がめぐってきた。きのうの記者会見で「20年にわたる日本の行き詰まりを打破する」と宣言した新首相。ここは一期一会の覚悟で新しい政治を切り開いてもらいたい。

 天風録 中国新聞 2010年6月5日
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2010年06月09日

「とうかさん」身が軽くなれば、思わず気持ちも浮き浮きしてくる・・・ 天風録 八葉蓮華

 「半袖はもう出した?」。そんな会話をあちこちで耳にする。暑いと思ったら、また肌寒くなる。妙な天気が続いてきたが、ここにきてやっと汗ばむ陽気となってきた。衣替えもそろそろのようだ

 広島に夏の訪れを告げる「とうかさん」がきょうから始まる。その年の浴衣の着始めとされる。デパートの売り場は、色とりどりの新製品で花が咲いたよう。今年もたくさんの若者たちが新調して街に繰り出すに違いない。身が軽くなれば、思わず気持ちも浮き浮きしてくる

 たんすから夏服を取り出すと、ほんのりナフタリンのにおいがしたものだ。「更衣(ころもがえ)しばししらみを忘れたり」。小林一茶の句にある。まだ芽が出ずに各地を放浪していた30歳のころ。シラミに悩まされるビン乏暮らしの憂さも、少しは紛れたのだろう

 元の服が裂けてしまった民主党政権にとっても、きょうが衣替えの日。代表選に続いて国会での新首相の指名、組閣と駆け足のうちにどんどん色直しが進みそうだ。だが、うまくあつらえることができたとしても、さすがに浮き立ってばかりはおれまい

 この8カ月余りの間に、知らず知らず政権の内側にわいてきた数々のシラミは、一向に退治されないままだ。首相選びの熱気によって、かゆみが治まってくれるかどうか。

 天風録 中国新聞 2010年6月4日
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2010年06月08日

「そろそろ戻ってこいよ」国民にそっぽを向かれ、耐えきれなくなった胸中・・・ 天風録 八葉蓮華

 「続投」と踏んでいたら、鳩山由紀夫首相の口から「退陣」宣言が飛び出した。鶴ならぬ鳩の一声。永田町はてんやわんやのようだ。年中行事のような辞任劇には、ほとほとあきれてしまう

 降板のあいさつで締めくくりに持ち出したのは野鳥の話。首相宅の庭に寄りつくヒヨドリとそっくりな1羽を、首脳会談で渡った韓国のホテルで見かけたという。「そろそろ戻ってこいよ」と呼ばれた気がする、と。国民にそっぽを向かれ、耐えきれなくなった胸中を重ねたかったのだろうか

 名前をだしにされて気の毒だが、首相には鳥にちなむ余談がついて回った。「米国からはチキン(臆病(おくびょう)者)とみられ、中国にはカモにされ、政権交代に夢をかけた有権者の目にはサギと映っている」。笑って済まされない小話が広まったこともある

 1月末の施政方針演説では「いのち」や「平和」を連発。ハト派ぶりを際立たせ、非暴力で知られるマハトマ・ガンジーを引き合いに理想をうたった。しかし実権を握るのは幹事長。野党から「小鳩内閣」とやゆされ続けた

 年端もいかないまま失速したひな鳥の新政権。再び翼を広げ、約束の地を目指せるだろうか。ルートを引き直すことを勧めたい。安定飛行には民意という風も欠かせぬことをお忘れなく。

 天風録 中国新聞 2010年6月3日
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2010年06月07日

パパ、ママへのごほうび「子ども手当」起きて泣く子の ねんころろ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「ねんねこ/しゃっしゃりませ/寝た子のかわいさ」。井原市発祥とされる「中国地方の子守唄」の一節だ。10年ほど前、幼い2人のわが子を寝かしつけるのによく口ずさんだ。なかなか寝てくれず、困り果てたのを思い出す

 月々の保育料やベビーシッター代…。共働きのせいもあって、子育ての出費がかさんだ。周りを見回せば、子どもがほしくても「お金のことを考えると無理」とため息を漏らす夫婦も。少子化が進むのは当たり前、と納得したものだ

 そんな流れを変えようと創設されたのが子ども手当だろう。本年度でいえば1人につき月額1万3千円の国からの「仕送り」。広島県内で最も早い廿日市市などでは4日から支給がスタートする。待ちかねていた人も多いかもしれない

 全国で給付される総額は年2兆円余りに上る。広島市の玩具店が「子ども手当で買ってね」と書いたステッカーを店内に張れば、特典付きの商品券を売り出すスーパーも登場。「財布のひもを緩めてもらうチャンス」とばかり、あの手この手を繰り出す

 子守唄はこう続く。「起きて泣く子の/ねんころろ/面(つら)憎さ」。子育てに追われていると、イライラが募りがちだ。たまにはパパ、ママへのごほうびに子ども手当を使っても、罰は当たるまい。

 天風録 中国新聞 2010年6月2日
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2010年06月06日

もうすぐ梅雨入り 季節の移ろいに心を響かす五感も磨きたい・・・ 天風録 八葉蓮華

 「お日様に暈(かさ)がかかると雨」。幼いころ、祖母から教わった。太陽の周りに薄雲がかかって光の輪ができる。低気圧が近づく前触れなのだという。経験を土台にした、昔の人たちの観察眼に感心する

 自然にかかわる言葉も豊かだった。例えば風。漁師たちは吹く時季や強弱、天候などで言い分けた。同じ南風でもマジ、ハエ、ヤマジなどさまざま。全国を調べた民俗学者柳田国男は、風の呼び名を900も書き連ねている

 空を見上げ、風を感じ、時には虫や草木の様子を見る。「観天望気」による気象予測は、暮らしの知恵だったのだろう。やがて気圧計や温度計などを使った近代的な観測が始まる。東京気象台ができた1875年6月1日のことだ

 天気予報はその後、レーダーや気象衛星、スーパーコンピューターも加わり、どんどん進化してきた。先週からは大雨や洪水などの警報、注意報が、全国の市区町村ごとに細かく分けて発表されている。警報が出ていたのに肩すかし、ということも減るかもしれない

 天気予報の的中率は80%台。昔に比べると、ずいぶん当たるようになった気もする。ただ100%となるのは難しいだろう。もうすぐ梅雨入り。ハイテク情報に頼るだけでなく、季節の移ろいに心を響かす五感も磨きたい。

 天風録 中国新聞 2010年6月1日
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2010年06月05日

存在感をアピールしようと政権に加わるのだが、現実と理想の間で翻弄される・・・ 天風録 八葉蓮華

 江戸時代の「三くだり半」といえば、夫からの一方的な離縁状とばかり思い込んでいた。ところが妻の離婚要求に応じたり、協議の上だったりしたものも少なくない。当時の離婚事情に詳しい専修大教授の高木侃(ただし)さんの著書で教わった

 「先渡し」の離縁状まであったそうだ。あらかじめ夫に書かせた離縁状を、妻が手元に置いておく。「今度、約束を破ったら即離婚だよ」。妻の方から夫にくぎを刺すための証文だったという

 きのう社民党が決めた連立政権離脱は、先渡しの離縁状を実行に移したようなものだろう。昨年末、福島瑞穂党首は「辺野古への移設なら離脱も」とけん制していた。そして今回、政府方針に署名せず大臣を罷免された。「最低でも県外」の約束をほごにした鳩山由紀夫首相こそ責任があるとの言い分だ

 もっとも、その社民党も連立離脱は初めてではない。前身の社会党時代を含めれば3度目。存在感をアピールしようと政権に加わるのだが、現実と理想の間で翻弄(ほんろう)される。その揚げ句に離脱というパターンの繰り返しのようにも見える

 与党側からは復縁が難しければせめて参院選で協力を、との声も聞こえてくる。何事も選挙目当てで右往左往するようでは、国民から三くだり半をたたきつけられるのではないか。

 天風録 中国新聞 2010年5月31日
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2010年06月04日

懐かしいにおい「ゲゲゲの女房」1960年前後の暮らし・・・ 天風録 八葉蓮華

 身の回りでの視聴率は抜群だ。佳境に入ってきた連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」。1960年前後の暮らしをそのまま味わえるのが、魅力の一つだろう。松坂慶子さん演じる女主人の姿から、古里の街で通った数軒の貸本屋を思い出す

 販売用の本とは違い、貸本向けの出版社が発行する漫画本。水木しげるさんは当時、戦記物が有名だった。迫力ある艦隊と兵士のリアルな表情で、マリアナやレイテなどの戦線をたどった覚えがある。白土三平さんの「忍者武芸帳」で戦国時代の民衆の歴史を学んだ

 店内では、そばで大人たちが交わすうわさ話も耳に入る。学校や公園の遊び場とは違う世界。背伸びしていた。「まだ早い」と借りた漫画を家族に取り上げられたことも

 それだけ大人向けが多かった。水木さんや白土さんを支えた貸本出版業界のリーダー、長井勝一さんは「各地の青少年健全育成条例にひっかかった」と振り返っている。既成の考えにとらわれず読み応えのある漫画を世に出したい。そんな思いがコマからはみ出したこともあったのだろう

 今も活躍するベテランの多くが、貸本から育ったのは間違いあるまい。書店では最近、水木さんの作品など貸本漫画の復刻本が目を引く。手に取ると、あの店先の懐かしいにおいがする。

 天風録 中国新聞 2010年5月30日
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2010年06月03日

迷走した末に、米軍普天間飛行場の移設先は、辺野古沖に舞い戻った・・・ 天風録 八葉蓮華

 ひすいの輝き―。沖縄県名護市の辺野古沖に浮かぶ小島から海を眺め、実感した。だが、うっとり気分も長く続かなかった。シュノーケルを着けて岸に上がってきた数人の若者。対岸に広がる米軍キャンプ・シュワブの海兵隊員だった

 隆々たる腕や胸にはタトゥー(入れ墨)も。非番なのか、ダイビングを楽しんでいるようだ。表情にはあどけなさが残る。あいさつ代わりに手を上げると、照れたように同じしぐさを返してきた

 「辺野古の海の写真は、志願兵を募るPRにも使われているそうです」。地元市議の東(ひがし)恩納(おんな)琢磨さん(48)が教えてくれた。南海の楽園のような景色が、兵士になろうという気にさせるのかもしれない。入隊者には移民などヒン困層の若者が多いとも聞いた

 世界のどこかで戦火が上がれば、明日の命も知れない隊員たち。基地に反対する東恩納さんらの市民グループは毎年、クリスマスカードを配っている。「戦地ではなく、お母さんのもとへ」。家族への愛に基地の内も外もない

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先は、辺野古沖に舞い戻った。政権が迷走した末の結論に、失望と怒りが沖縄に渦巻く。ジュゴンが泳ぎ、サンゴが群生する「ちゅら(美しい)海」は、戦地へ飛び立つ滑走路になるのだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年5月29日
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2010年06月02日

「砂かぶり席」相撲界の仕切り直しはおぼつかない・・・ 天風録 八葉蓮華

 マツダスタジアムで気を吐くのが「砂かぶり席」だ。7月までほぼ予約で埋まる。グラウンドと同じような目の高さでプレーを追い、選手の声も聞こえる。カープの負けが込んできても、かぶりつきの魅力は衰えないようだ

 砂かぶりの本家といえば相撲である。土俵の砂が飛んでくることから名が付いた。力士も吹っ飛んでくるほどだ。もっぱらテレビ桟敷で観戦する身には想像もつかない迫力に違いない。その特別席に疑惑の目が向けられている

 昨年夏の名古屋場所。暴力団組員が場所中、入れ代わり立ち代わり陣取った。目的は観戦だけではなかったらしい。テレビ中継に映った姿を服役中の組長に見せる魂胆があったのでは、というのだ。国技の放送は刑務所でも視聴が許されている。ありそうな話に思える

 とはいえ事実とすれば、たまったものではない。日本相撲協会の有力な後援者限定のチケットが、どうして組員の手に? 入場券を手配した親方2人は「暴力団に渡るとは知らなかった」と話したというが、黒い関係を勘ぐられても仕方ないだろう

 協会はきのうの理事会で親方2人を降格とけん責処分にした。ここは砂ならぬ泥をかぶる覚悟で暴力団とのつながりを断ち切りたい。さもなければ相撲界の仕切り直しはおぼつかない。

 天風録 中国新聞 2010年5月28日
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2010年06月01日

生涯童心を失わぬように「古筆学」それを地で行く人生だった・・・ 天風録 八葉蓮華

 20歳の鉄道員は広島駅で被爆し、床に伏していた。ふと目にした本紙の記事に「厳島神社の秘庫が開かれ…」とある。表に出さない平家納経を、文化人に特別に見せたという。あの清盛が奉納し、金銀で装飾したお経。さぞ美しかろうと胸躍らせた

 一目見たいと思うと、いてもたってもいられない。仕事に戻るや神社に日参したが相手にされない。最後は進駐軍に便乗して対面を果たした。85歳で旅立った小松茂美さんの若き日の逸話だ。後の大著「平家納経の研究」は今もこの分野の必読書である

 独学が高じ、上京して博物館の職員に。ばらばらになった平安時代などの古い書との格闘が始まる。思わぬところで駅の貨物係の体験が役立った。通過する貨車の番号を次々に記録する作業は、書の断片と膨大な文献を突き合わせる仕事と相通じていた

 筆跡をたどり、いつ誰がどんな形で書いたかを推理する―。とうとう「古筆学」という学問を自分で打ち立てた。編著書は数百冊に及ぶ。宮島研究を志す若者には「眠るのは3時間でいい」とハッパを掛けた

 学問の世界では時に歯に衣(きぬ)着せぬ物言いがあったのも、こだわりの強さ故か。母校の広島市内の小学校に残した言葉が「生涯童心を失わぬように」。それを地で行く人生だった。

 天風録 中国新聞 2010年5月27日
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2010年05月31日

赤じゅうたんの議場「平成の大合併」の思わぬ置き土産・・・ 天風録 八葉蓮華

 ツキノワグマのはく製、赤や緑に輝くシジミチョウ、草原性植物のマツムシソウ…。所狭しと置かれた動植物の標本に圧倒されるようだ。廊下に出て見上げると「傍聴席」とあった

 広島県北広島町の芸北支所2階。もとは旧芸北町の議会スペースである。5年間、ほこりが積もるに任せていたところ「第二の人生」が巡ってきた。約1万3千点を収蔵する自然学習の場に変わりつつある。赤じゅうたんの議場は今やカーペット敷きの研修室だ

 にぎやかな「余生」を送っているところもある。庄原市の西城支所では、旧西城町の議場が学童保育の場になった。夕方ともなれば小学生十数人の声が高い天井に響く。ホールや図書室、プラネタリウムに転身したケースも耳にする

 今春で一区切りした「平成の大合併」の思わぬ置き土産でもあろう。中国地方では市町村が318から109に減った。不要になった議場は階段式だったり、机が作り付けだったりして改修もままならない。持て余し気味の市町も多いと聞く

 かつての議場に立つと、合併の是非などをめぐり熱い議論が交わされた往時がよみがえるようだ。元の芸北町議会ではこの冬、生物の多様性をテーマにした企画展が始まるという。いろんな主役があちこちで登場するに違いない。

 天風録 中国新聞 2010年5月26日
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2010年05月30日

誇りと平和への願いがこもる「万国津梁の鐘」あらゆる国への懸け橋・・・ 天風録 八葉蓮華

 「普天間」の問題でおととい、首相と知事が顔をこわばらせて向き合った沖縄県庁の知事応接室。ひときわ存在感を示す漢文のびょうぶに気付いた人も多いだろう。首里城正殿にかかっていた「万国津梁(しんりょう)の鐘」の銘文を写した書と知った

 15世紀半ば、琉球国の尚(しょう)泰(たい)久(きゅう)王が造らせた鐘という。津梁には橋渡しの意味がある。明(中国)と日本の中間に位置するあこがれの島、琉球。船でアジアの国々と交わり、あらゆる国への懸け橋となろう。そんな気概が伝わってくるようだ

 その名を冠した施設がある。10年前の沖縄サミットで主会場になった名護市の「万国津梁館」だ。知事との会談後、市町村長との懇談でこの館に赴いた首相。「最低でも県外」と約束しながら、豹変(ひょうへん)した「君子」に市民から「帰れ」の声が飛んだ

 銘文に「日本とは唇と歯のように寄り添う」というくだりも見える。しかし薩摩藩の侵攻や明治政府による日本への併合、沖縄戦、米国の軍政、そして今回…。かの地の人からすると、果たして助け合う関係だったのかどうか

 くだんの鐘は国の重要文化財に指定され、県立博物館にある。痛々しい銃弾の跡も残っているという。県民の誇りと平和への願いがこもる鐘。橋を懸ける相手は米国だけでないことに思いを致したい。

 天風録 中国新聞 2010年5月25日
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2010年05月29日

いつかその日がくる、どこにもいないのではない、どこにもゆかない・・・ 天風録 八葉蓮華

 猫好きの彼女と所帯を持った。大の苦手なのに。ニャオと鳴く「家族」は懐いたかと思えばふっつり姿をくらます。振り回された新婚の日々を詩人の長田弘さんがエッセーにつづったのはもう40年ほど前だ

 愛猫たちが蒸発したりシんだりするうち、詩人はある境地に至る。いつかその日がくる。そう観念しなければ猫なんかと一緒に暮らせない―。もしそれがわが肉親との別れだったら、と読みながら想像を巡らせる

 長田さんは、その奥さんを昨年失った。一周忌を前に編んだ詩集「詩ふたつ」に、亡くなった人についてのこんな一節を見つけた。「どこにもいないのではない。どこにもゆかないのだ」。病床で顔をゆがめていた母があの世では元気になった、とも

 たとえ姿が消えても、その人との思い出や絆(きずな)は生き続けるということだろう。そう受け止めることができたら、みとった悲しみも少しは軽くなるかもしれない。しなやかな詩に目を開かされる

 今年の中国短編文学賞の大賞作も、家族に先立たれた孤独を描いていた。交通事故で逝った孫娘のお気に入りだったトナカイの電飾。それが近所と絆を結び、命拾いの種となる。長田さんの詩集の後書きにはこんなくだりもある。「近しい人が遺(のこ)してくれる記憶は、生の球根です」

 天風録 中国新聞 2010年5月24日
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2010年05月28日

夢の通り道を大掃除する大馬力のエンジンはないものか・・・ 天風録 八葉蓮華

 広島デルタの本川沿いを歩くと「銀の玉」が目に入る。西平和大橋下流の緑地にあるステンレス製の球形彫刻のことだ。買値の5千万円は高すぎないかと、広島市議会で問題になった。バブル経済が絶頂のころだ

 実は同じ作家によるそっくり作品が東京に二つあった。一回り小さいが、それぞれ1千3百万円と2千万円。値段があってないような世界とはいえ、きわめて分かりやすい価格差だ。市の大甘チェックは、購入費の出所がすべて日本宝くじ協会だったことも影響していた

 庶民が夢を託す宝くじ。その果てはどういう勘定になっているのか。「自治」の名が付くから地方の財源にと想像できても、実態は霧の中。年間売り上げ1兆円という巨大な懐に、仕分け人が手を突っ込んだ

 45%という当せん者への還元率は意外に低い。驚いたのは、総務省関連の公益法人などへの天下り役職員が60人余りもいたことだ。立派すぎるオフィスや高給は庶民とかけ離れている。どうやら触れてほしくない懐だったようだ

 収益金での宣伝や地域振興事業もやり玉に挙げた仕分け人たち。無駄がなくなるまで宝くじの販売凍結を求めた。ただ、おいそれと従う総務省一家ではなさそうだ。夢の通り道を大掃除する大馬力のエンジンはないものか。

 天風録 中国新聞 2010年5月23日
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2010年05月27日

都会と農山村の交流、毎年、幸運を運んでくれるフクロウ・・・ 天風録 八葉蓮華

 新緑がもえるころになると、屋根裏から「ピイ、ピイ」というかわいい声が聞こえ始める。広島県神石高原町の見永豊子さん(79)は胸が高鳴るという。「待っとったよ」。今年もやってきたフクロウのひなたちだ

 かやぶきの屋根裏にかけた巣から毎年、決まったようにひなが1、2羽落ちてくる。鶏のささ身をやると、大きな口を開けてついばむ。2週間育てた後、迎えに来る親鳥の元に帰す。そんな「里親」を足かけ20年。見永さん方の居心地がよほどいいのだろう

 これまでに育てたひなは50羽に上る。くりくりした目。見永さんの肩や腕にちょこんと乗るしぐさも愛らしい。最近は、伝え聞いた大勢の人たちが「ひと目みたい」と各地から訪ねてくるようになった

 40年前に夫を失い、3人の子を育て上げた後はずっと一人暮らし。ふとむなしさを感じ、ふさぎ込むこともあった。そんな見永さんの心を慰めてくれたのがフクロウのひなたちという。「毎年、幸運を運んでくれるフクロウ(不苦労)」とも

 うれしい話はまだある。外に出ている子や孫たちが電話をくれ、会話が弾むことだ。今年、都会と農山村の交流を目指す会から賞を贈られた。フクロウがはぐくんでくれた人のきずな。フクの神はきっと来年も戻ってくるに違いない。

 天風録 中国新聞 2010年5月22日
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2010年05月26日

コメ作りへの思い、作り手の高齢化も進んで、おいそれと増やすのは難しい・・・ 天風録 八葉蓮華

 きょうは二十四節気の「小満」。草木が育って茂る意味がある。梅雨入り前の日差しを受け、田んぼの苗も少しずつたくましさを増す。田植えに続く「植田直し」。筋をたどり、苗の欠けたところを手で植え足すしんどい仕事だ

 最近は直さない田んぼが目立つ。田植え機で広い面積をこなすから、昔ながらの手作業が敬遠されるのだろう。おまけにコメ余りで価格も安い。田の真ん中にしか作付けをしない「額縁転作」も見かけるようになった

 「あぜの三筋はようできる」。風通しが良く、肥料分もたっぷりのあぜ際。それを見逃す手はない、と説くことわざだ。広島の民俗に詳しい神田三亀男さんの著書に教わった。「1粒でも多く」。そんな田んぼへの愛着がみえる

 しかし増え続けた転作に、あぜ際はかすみがちだ。コメ作りへの思いもなえるばかり。そんな空気が今年は、いくらか変わってくるかもしれない。新政権がコメの戸別所得補償を打ち出した。少しはやる気がわいてきたという農家もあるのではないか

 ここ数年、広島県では国から割り当てられた作付けの面積を下回っている。作り手の高齢化も進んで、おいそれと増やすのは難しいという声も聞く。あぜ際に手植えは無理だとしても、せめてその心だけは忘れないでいたい。

 天風録 中国新聞 2010年5月21日
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