浪人の夫に父をコロされ、揚げ句に毒薬を飲まされて醜い顔に変わり果てたお岩。もだえシんだ後、怨霊(おんりょう)となって夫たちをのろいコロしていく…。おなじみのストーリーながら、あらためて人間の業の深さを思い知らされる
芝居や話だけでなく、幽霊を描いた絵も多く残る。安芸高田市八千代町の善教寺に女性の幽霊図が伝わっている。白装束に腰まで髪を垂らし、まなざしをつり上げた鬼気迫る形相。両の手はだらりと。写真で見るだけでも鳥肌が立ちそうだ
とはいえ冥界(めいかい)に旅立った人がこの世に残した思いは、恨めしさや憎しみばかりではなかろう。井上ひさしさんの戯曲「父と暮せば」には、原爆で亡くなった父親の幽霊が登場。生き残ったことに負い目を感じる娘を励ます
「幽霊は意見が変わることはない」と言ったのは評論家の加藤周一さんだ。暗サツされた源実朝や戦シした友人ら今は亡き「幽霊」との対話を通じて今を問うた。戦争反対の生涯を貫いた加藤さんならではの姿勢だろう。幽霊の効用を暑さ払いだけにしておくのは、もったいない。
天風録 中国新聞 2010年7月26日
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