世の中が一色に染まることを何より嫌った。昭和一けた生まれ。滅私奉公でお国に一生をささげると誓った「よい子」が、戦後は民主主義を唱えるようになった。正義がひっくり返る恐ろしさが骨身に染みていたのかもしれない
「学者も一種の芸人や」と言って長唄や歌舞伎に親しんだ。古今東西の小説、詩の選集も編む。漫画家、タレントなど対談の相手に選んだ顔触れが、またすごい。旺盛でしなやか。そんな好奇心の一端が垣間見える
時事問題から宝塚歌劇、プロ野球の評論に至るまで、新聞やテレビに引っ張りだこになったのも道理だ。「一刀斎」と親しまれた風ぼう。世の動静に切り込み、時に「常識」をいなしてみせる快刀乱麻ぶりが小気味よかった
大学では定年までずっと教養部に。難しそうな数学も、幅広い視点からとらえ直したら面白い、という含みではなかったか。教養とは物知りのことではあるまい。「ええんちゃうの」と人生を楽しめる懐の深さ。森さんの伸びやかな一生が教えてくれた。
天風録 中国新聞 2010年7月27日
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