女性も舟に泊まり込んで藻を刈った。民俗研究家の神田三亀男さんが聞き取りを著書「女人天耕」に収めている。舟いっぱいになるまで1週間はかかる。その間に真っ黒く日焼けし、手にはまめができたという。「舟溜藻刈りの舟も来て憩ふ」(能村登四郎)。つらい作業ゆえの深い安息感が漂う
この半世紀で、瀬戸内海の藻場の多くは埋め立てられた。手間をかけて藻を使う農家もほぼ絶えた。残された藻場ではこの時季、深緑色のアマモが1メートル余りに伸びている。やがて枯れ、多くは切れて流れる
夏の季語通りの営みが今も続くのは、広島県中部の三津湾付近である。竹原市忠海で石風呂を営む稲村喬司さん(68)が、今年も近く舟を出す。竹ざお2本をアマモにからませ、ねじるように刈る昔ながらのやり方だ
一方で、海の藻からバイオ燃料を作る技術の開発も進む。「藻刈り」が形を変えて復権する日は来るのか。アマモを敷き詰めた石風呂で、海の香りに包まれながら夢想してみる。
天風録 中国新聞 2010年7月20日
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