天風録 中国新聞 2010年7月9日
両親の出身地が別々だと、人はどちらをより身近に感じるだろう。松本清張の場合は極端だった。父親の古里、鳥取県日南町には直筆を寄せた文学碑の除幕式をはじめ、機会あるごとに訪れたという
母方の東広島市志和町に来たのは一度きりのようだ。親せきの人たちと言葉も交わさず「滞在は40分くらいだった」と自伝に記す。あぜ道でそれらしい姿を見かけた一人は「縁者を紹介できたのに」といまだに残念がる
地元でさえ、ゆかりの地と知る人が最近までほとんどいなかったのは無理もあるまい。清張生誕100年の昨年、実行委員会を設けて多彩な記念行事を催した日南町とは、対照的のように見える
広島市郷土資料館での「松本清張展」や市立中央図書館での作品展で、市内にあった生後間もない写真の撮影場所や自伝が紹介されている。志和とのつながりもやっと注目されるようになった。「これを機会に、清張文学にちなむ地域づくりを始めたい」と志和公民館長の藤岡武士さんは知恵を絞る
志和の印象を「この村の農家は…かなり裕福にみえた」と書き残した昭和の文豪。豊かな村に文化面の財産が加われば、地元の知名度も上がろう。父方とは同じ中国地方の農村同士。清張の縁で新たな交流がはぐくまれるかもしれない。
天風録 中国新聞 2010年7月9日
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