一目見たいと思うと、いてもたってもいられない。仕事に戻るや神社に日参したが相手にされない。最後は進駐軍に便乗して対面を果たした。85歳で旅立った小松茂美さんの若き日の逸話だ。後の大著「平家納経の研究」は今もこの分野の必読書である
独学が高じ、上京して博物館の職員に。ばらばらになった平安時代などの古い書との格闘が始まる。思わぬところで駅の貨物係の体験が役立った。通過する貨車の番号を次々に記録する作業は、書の断片と膨大な文献を突き合わせる仕事と相通じていた
筆跡をたどり、いつ誰がどんな形で書いたかを推理する―。とうとう「古筆学」という学問を自分で打ち立てた。編著書は数百冊に及ぶ。宮島研究を志す若者には「眠るのは3時間でいい」とハッパを掛けた
学問の世界では時に歯に衣(きぬ)着せぬ物言いがあったのも、こだわりの強さ故か。母校の広島市内の小学校に残した言葉が「生涯童心を失わぬように」。それを地で行く人生だった。
天風録 中国新聞 2010年5月27日
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