人間にとっても音は一種のサインだろう。それで何かのスイッチが入ることもある。雷鳴がとどろけば身が縮む思いがし、野外なら隠れ場所を探してしまう。授乳期の母親は、赤ちゃんの泣き声がすれば寝床でも反射的に目が覚めるという
車のエンジン音の場合はどうだろう。うなる回転音に胸躍らせるドライバーもいれば、騒音にしか聞こえない人もいよう。それともう一つ、クラクションなしで車の接近を教える合図でもある
その「存在音」がにわかに注目されている。低速時はモーターで動くハイブリッド車が増え、電気自動車も普及が進む。音もなく迫る車体に驚いた人もいるだろう。とりわけ、目の不自由な人は耳だけが頼り。恐怖の体験に違いない
ならばと、低速で走る時の人工音を自動車メーカー3社が開発した。ホワンホワンとかキーンとかの電子音である。聞き取りやすさを追い求めたそうだが、まだたどたどしい響きだ。横断歩道の青信号を知らせるカッコーやヒヨドリのように、街になじむ日がいつかは来るのだろうか。
天風録 中国新聞 2010年5月12日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録