同じ人の手で書いても、これほど形が違ってくるものか。広島県安芸太田町に住む陶芸家岡上多寿子さん(60)の自筆の詩画集「いっぱいごめん いっぱいありがと」(木耳社)。ページをめくりながら気付かされた
認知症の母文枝さんを自宅で介護した10年間の日々。絵日記風につづる。ごみ箱からおむつを引っ張り出した「母」。輪郭は角張ってとげとげしい。症状が進んできても「あんたぁ食べたか」と気遣ってくれた「母」は柔らかだ
本当につらかったのは下の世話や徘徊(はいかい)ではない。そんな母を認められず、しかりつけたり手まで上げたりした悔いや情けなさ…。母の字に託したありのままの思いが、介護のただ中にある人をはじめ幅広く共感を呼ぶのだろう。初版から4年、6刷りを重ねている
ハチローさんの詩はこう続く。「やせすぎたり 太りすぎたり ゆがんだり/泣きくずれたり…笑ってしまったり」。不格好にも見える形は、母を思う子の心情にほかなるまい。きょうは母の日。どんな字が書けるだろうか。
天風録 中国新聞 2010年5月9日
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