2010年03月20日

平成の大合併で、生まれ育った町の名、どんどん消えている・・・ 天風録 八葉蓮華

 山田詠美さんの近作「学問」は「美流間(みるま)」という架空の小さな市が舞台だ。引っ越し話に揺れる小学生の気持ちを、こう描く。「彼女の思う美流間は、もはや地名であって地名ではないもの。彼女を包むさまざまなものをひとまとめにした名称でした」

 思い出の場があり、人がいる。よそにいてもその名を聞いただけで押し寄せる波のような感情。生まれ育った町の名は、子ども心にも深く刻まれているに違いない。ところが平成の大合併で、小さな自治体がどんどん消えている

 とりわけ2千近くあった「町」。1200も減って783となり、ついに市の数を下回った。象潟(きさかた)、余呉、信楽、長船(おさふね)、坊津(ぼうのつ)…。多くの人が耳にしたことのある由緒ある町名も例外ではない。住んでいる人の喪失感はどれほどだろうか

 半世紀前の昭和の大合併でなくなったのは6千以上の「村」。それでも最近まで、消印の郵便局名や小学校名にしぶとく存在感を示していた。しかし合理化や統廃合。こちらも急速に失われつつある

 民族移動や植民が盛んだった欧米と違って列島には古名が多く残る、と専門家は言う。合併による町村の墓碑銘に心が痛むのは、地名であって地名を超えたものを、そこに見るからだろう。世界に誇れる「地名遺産」。粗略にしてはなるまい。

 天風録 中国新聞 2010年3月14日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:23| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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