昨年夏に登録されたのが「アンネの日記」である。ナチスの弾圧により、わずか15歳で命を落としたユダヤ人の少女が書き残した。隠れ家で暮らす厳しい生活の中でも希望は捨てず、思いをつづった。「私は生きたい。生きて世界中の人のために働きたい」
戦後になって父の手で出版され、ホロコーストの悲劇を広く知らせた日記。中学生のころに初めて読んで、胸が詰まったのを思い出す。少女の願いは違う形で実った。「遺産」になったのも、たった1人の記憶を世界中の人々が共有したからだろう
ヒロシマにも、重い記憶が被爆者の数だけある。だが65年の歳月とともに語る人は少なくなり、街を歩いてもツメ跡に気づかない。生きているうちにあの日のことを絵や手記にして残しておきたい…。そんな営みが脈々と続いている
記憶とは、一人ひとりの心のひだに刻みつけられた記録なのだろう。やがては忘却の波間に沈む日が来るかもしれない。それでも、人類が忘れてはならぬ記憶もある。
天風録 中国新聞 2010年3月5日
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