秘密は単純なことだった。だしを取った貝は捨て、椀には新しい貝を入れて出していたのだ。海老沢泰久著「美味礼讃」にある三十数年前のエピソードだ。すでにそのころ国産のハマグリは貴重な食材だった
きのうは桃の節句。ハマグリの吸い物とちらしずしで祝った家庭もあるだろう。今が旬だが、多くが中国などからの輸入物。国内では激減している。ところが、益田市の高津川の河口付近で再び採れ始めた。10年前から次第に増え、一昨年は12トンも。よみがえった清流の恵みといえよう
箱眼鏡で海中をのぞき、棒の先に付いた金具で一個ずつ挟み採る。目当ては、わずかに見える吸管や潜った跡の砂のくぼみ。7センチ以下のサイズは海に戻す。ここだけの漁の流儀も資源回復に一役買っている
みんなの宝にと、稚貝の調査に乗りだした市民たちの動きも頼もしい。辻さんが案内した米国の美食家に「コンソメより洗練度は上かも」と言わせた吸い物の主役。純和風を支える「食財」と呼びたくなる。
天風録 中国新聞 2010年3月4日
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