学生運動の元リーダーや無頼派の先輩作家、沖縄のサトウキビ農家…。惜別の辞を送ってきた人たちの列に、自らが加わった。62歳は早すぎたが、日本の隅々まで歩き、貪(どん)欲(よく)なまでにテーマを広げて書き続けた。リュック姿が似合い、テレビでのとつとつとした語りも人びとの心をとらえた
貫いたのは地べたからの目線だろう。映画化された初期の小説「遠雷」は、都市化する農村でトマトをつくる若者を主人公にした。土地を売り大金を手にした農家の悲喜劇。ムラの壊れる音が聞こえてくるようだった
全共闘世代の作家として連合赤軍事件に迫ったのが「光の雨」。盗作騒動を起こして謝罪し、後に全面改稿して発表する。この苦い体験を経て、宗教的な救済へとテーマが広がったようだ
自然を愛し、源流から下る川の旅を好んだ。自らも岩をかみ、幾筋もの流れをのみ込んで彼岸へ旅立ったように見える。その一生は、短編には到底収まりきれぬほどの厚みがある。
天風録 中国新聞 2010年2月11日
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