2010年02月15日

地べたからの目線「晩年」人を繕っていた属性が剥がれる。一瞬・・・ 天風録 八葉蓮華

 作家の立松和平さんは、身の回りで亡くなった人びとのことを季刊誌に書き継いできた。その短編集「晩年」の後記にある。「人はシぬ時、その人を繕っていた属性が剥(は)がれる。一瞬、ありありとその人自身として存在することがある。短篇(たんぺん)小説の生起する瞬間である」

 学生運動の元リーダーや無頼派の先輩作家、沖縄のサトウキビ農家…。惜別の辞を送ってきた人たちの列に、自らが加わった。62歳は早すぎたが、日本の隅々まで歩き、貪(どん)欲(よく)なまでにテーマを広げて書き続けた。リュック姿が似合い、テレビでのとつとつとした語りも人びとの心をとらえた

 貫いたのは地べたからの目線だろう。映画化された初期の小説「遠雷」は、都市化する農村でトマトをつくる若者を主人公にした。土地を売り大金を手にした農家の悲喜劇。ムラの壊れる音が聞こえてくるようだった

 全共闘世代の作家として連合赤軍事件に迫ったのが「光の雨」。盗作騒動を起こして謝罪し、後に全面改稿して発表する。この苦い体験を経て、宗教的な救済へとテーマが広がったようだ

 自然を愛し、源流から下る川の旅を好んだ。自らも岩をかみ、幾筋もの流れをのみ込んで彼岸へ旅立ったように見える。その一生は、短編には到底収まりきれぬほどの厚みがある。

 天風録 中国新聞 2010年2月11日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:42| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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