野菜や魚を放り込み、そのままふたをする。水は入れなくていい。弱火にかけると食材から出る水分が蒸気になって、全体を蒸らす仕組みだ。「ぐつぐつ」というにぎやかな音が聞こえないのは寂しいが、耳を澄ませば「くつくつ」と小さな音がかわいい
カブやニンジンで試してみた。ゆでた時より甘く感じる。水気が抜けた分、野菜そのもののうまみや香りが、強くなるのだろうか。何かに似ていると思ったら、お好み焼きのキャベツ。鉄板で蒸らされて生まれるのも甘みである
このところ、蒸した料理が復権の兆しという。おおむね薄味。栄養も逃げず、肉の場合は脂が抜けてヘルシーだったりするかららしい。ある家電メーカーが、蒸気で調理するオーブンレンジを売り出すと、飛ぶように売れた。タジン鍋の人気も、その延長にあるのだろう
たっぷりの湯の中で素材のうまみを引き出すのが日本の鍋。貴重な水を使わずに味わいを濃縮するのがモロッコの鍋、ともいえるだろうか。暑い砂漠の国の知恵を、寒い冬にお借りする。
天風録 中国新聞 2009年12月6日
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