広島の秋を代表するマツタケ。ピークを迎える時季なのに、県内の産地は軒並み、かつてない不作に見舞われている。世羅町では集荷量が例年の20分の1がやっと、と本紙が報じている。盆すぎからぶり返した残暑。9月以降の雨不足も追い打ちを掛けているようだ
「もう松茸(まつたけ)も出る頃(ころ)でせう。松茸どころかこちらは一カ月以上も米の味を忘れて居ます」。被爆後に上京した原民喜が廿日市の兄にあてて、食糧難にあえぐ日々をつづった手紙である。古里への思いをマツタケのある風景に重ねたのだろうか
そのものの味を舌で受け止めるというよりも、香りと歯ごたえを楽しむのがマツタケ。「風味」という言葉がぴったりくるようだ。「器を味わう」のと同じように、日本人が古くからはぐくんできた食文化かもしれない
山も荒れて、すっかり高根の花になってしまったマツタケ。手ごろな値段の外国産にしたり、食感が似るエリンギで代用したりする向きも多かろう。古里の山の香味の再生に、打つ手はないか。
天風録 中国新聞 2009年10月21日
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