翻訳出版は40カ国近い。米国やロシアの書店ではコーナーまであるほど。日本人作家の中では別格の扱いだ。その人気の秘密はどこにあるのか。ブームが起きる年の世界史年表を見つめると、ヒントが浮かんでくるという
ベルリンの壁が壊れた年もあれば、あの米国を揺るがした「9・11」もある。絵空事の世界と思われたものが、この世のものとなる。いつまでも続くと思われた現実が崩れたとき、漂流するような心が出現する。そんな時「傷ついても人は成長し、つながり合える」。それが村上作品の救いなのだろうか
揺るぎないように見える体制を「壁」に、もろそうな命や心を「卵」にたとえる。そのうえで「私は卵の側に立つ」と言い切った。今年2月のエルサレム賞を受賞した際のスピーチである。世界はいつか変わり得る、とも受け取れるメッセージだ
自民党の長期政権崩壊と前後したのが、最近作の「1Q84」だった。ミリオンセラーの売れ行きはなぜか。崩れた壁の向こうに、「卵」の心が漂っているようにも見えてくる。
天風録 中国新聞 2009年10月9日
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