生きていれば22歳。「就活」して来春は大学を卒業する年ごろだ。友達は盆や命日に来て、近況を聞かせてくれる。「うれしい半面、複雑な気持ちも」と父親の忠さん(52)。周りの時は流れても、娘は少女のまま。成長した姿までは思い浮かべられないという
「事件らしい」との連絡で、地元の支局から現場に駆けつけた。ロープの向こうでは捜査員が血相を変えて動いている。やがて「娘さんがコロされた」と聞く。白昼の住宅での惨劇。受けたショックは今も鮮明だ
犯人の靴の種類は分かっている。若い男の似顔絵もある。父親は、これはと思った男性がいると、すぐ靴を見る。それから顔をのぞく。5年のうちに習慣になってしまった。ただ世の関心は薄らぎ、事件を話題にする人もだんだん少なくなってきた
このままさらに10年たつと、時効の日を迎える。家族の時は止まったまま。なのに犯人の「時」は時効に向かって刻々と進む。「納得できない。逃げおおせれば罪にならないのか」。そう問われて、返す言葉に窮する。
天風録 中国新聞 2009年10月5日
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