暮れなずむ浜辺で若者が二人、海水を一升瓶に詰めている。なぜと問うと…。「ぼくら生まれて始めて海を見た/海は昼も夜も揺れているのは驚くべきことだ」。そこで海の水を持ち帰り、たらいにあけて、終日揺れるさまを眺めるのだという
現実世界と遠く離れたメルヘンのような話である。問うた人はうれしくなった。ところが詩にはオチがつく。「あなたもかつがれたのかね/あの二人は/近所の漁師の息子だよ」
今年はエルニーニョ現象によって、地球の大気の揺れがいささか変調をきたしているらしい。梅雨明けも8月までずれ込み、水温もなかなか上がらなかった。それでもその後の暑さ。やっと「夏の海」になった
まぶしいほどの日中の明るさと、夜の闇。そのはざまにある夏の夕暮れは、心が緩むような不思議な時間だ。川崎さんの詩も、ほとんど実体験をもとにしている。一場の夢のようなハプニングや、心揺れる忘れがたい出会い。あちこちの海辺の夕暮れに、詩の種が生まれ始めているに違いない。
天風録 中国新聞 2009年8月9日
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