今回の挑戦者は、一手に3時間考えたこともある郷田真隆九段。持ち時間9時間をフルに使おうとする対局シーンが、テレビで中継された。沈思黙考する2人の表情を見つめていると、こちらまで息が詰まりそうだった
天才少年と呼ばれた羽生名人も、今や40歳に手が届きそうな年齢になった。名人戦で連覇したのは1996年以来というから、随分久しい。7番勝負では、最終局までもつれ込むケースが増えている。それだけ体力も余分に消耗するようだ
そんな真剣勝負の世界から生み出される言葉には、味がある。「勝つためには、覚えるよりも忘れる努力が必要です」。なるほど、ひらめきを呼び込むには、記憶でいっぱいだと回転の邪魔になるというわけか。棋風と同じような当意即妙の受け答えが楽しい
そのせいか「言葉の対局」の方も増えているようだ。相手は経営コンサルタントもいれば、人工知能の科学者も。どうすれば、これほど融通無碍(むげ)になれるのか。「直感の7割は正しい」とも言う。これなら何とかなりそうだ。詰め込むのではなく、捨て去れる心境にあやかりたい。
天風録 中国新聞 2009年6月26日
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