そういえばバブル景気のころ「淡麗辛口」が全盛だったことを思い出す。水のようにさわりがない、ともてはやされる酒もあった。その後「失われた十年」を経て、再びトンネルの中。酒はなぜ変わったのだろう
景気が悪いと「アテは辛いものをちょっと」となりやすい。だからバランスをとって甘い酒が好まれる―というのは、昔からの説だ。辛口はすいすい飲めて、不況時には財布に負担がかかる。そこで「量を抑えるために甘口」説も分かりやすい
それ以上に「マインド」もあるに違いない。ほんのりとした甘みには、包み込まれるような快さがある。体だけでなく心の疲れをも取ってくれそうだ。辛(つら)い時代に辛口はちょっと…という気分が広がったとしてもおかしくない
景気が底を打つ兆しが見える。輸出が持ち直し、在庫も減っている。マツダは来月から工場休業をやめ、トヨタは残業を再開する。ただ一九九〇年代の日本では、何回か「偽りの夜明け」(白川方明日銀総裁)を本格回復と見誤ったことがある。景気の判断だけは甘口に傾いてはなるまい。
天風録 中国新聞 2009年5月29日
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