北原白秋やハイネの詩を読みふけった青年時代。大竹市の生家から瀬戸内海が望めた。そこから生まれたのが、♪晴〜れた空…と岡晴夫が歌う「憧(あこが)れのハワイ航路」だ。キラキラ光る海の明るさが、戦後間もないころのヒット曲によく似合う
口ずさんでみると、歌い出しは朗らかな「ア」の響きが心地よい。♪な〜がい旅路の…と始まる美空ひばりの「港町十三番地」もそうだ。石本さんは幼いころ、ぜんそくの発作に悩まされた。いつか大きく口を開け、思いっきり息をしたい―。「ア」列の音には、そんな願いがこもっているのかもしれない
自由な空気を胸いっぱい吸うだけで幸せだったころから、豊かだけど寂しくもある時代へ。古里ではぐくまれた詩心は、歌姫ひばりという伴走者も得た。こぼれた哀歓をすくい、「悲しい酒」などの名曲を世に送る
平成の世となり、歌詞を後回しにする「メロ先」の曲作りが全盛だ。八十五歳で死去した石本さんの口癖は「演歌こそ心の古里」だった。五七調の折り目正しい詩の数々。遠くなった昭和が行間からよみがえってくる。
天風録 中国新聞 2009年5月28日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録