2009年05月29日

豊かだけど寂しくもある時代「作詩家」五七調の折り目正しい詩の数々・・・ 天風録 八葉蓮華

 石本美由起さん直筆のはがきが手元の切り抜きファイルにある。肩書は作詞家ではなく「作詩家」だ。一編の詩ともいえる歌詞を生み続けた誇りが、丸っこい筆跡から伝わってくる

 北原白秋やハイネの詩を読みふけった青年時代。大竹市の生家から瀬戸内海が望めた。そこから生まれたのが、♪晴〜れた空…と岡晴夫が歌う「憧(あこが)れのハワイ航路」だ。キラキラ光る海の明るさが、戦後間もないころのヒット曲によく似合う

 口ずさんでみると、歌い出しは朗らかな「ア」の響きが心地よい。♪な〜がい旅路の…と始まる美空ひばりの「港町十三番地」もそうだ。石本さんは幼いころ、ぜんそくの発作に悩まされた。いつか大きく口を開け、思いっきり息をしたい―。「ア」列の音には、そんな願いがこもっているのかもしれない

 自由な空気を胸いっぱい吸うだけで幸せだったころから、豊かだけど寂しくもある時代へ。古里ではぐくまれた詩心は、歌姫ひばりという伴走者も得た。こぼれた哀歓をすくい、「悲しい酒」などの名曲を世に送る

 平成の世となり、歌詞を後回しにする「メロ先」の曲作りが全盛だ。八十五歳で死去した石本さんの口癖は「演歌こそ心の古里」だった。五七調の折り目正しい詩の数々。遠くなった昭和が行間からよみがえってくる。

 天風録 中国新聞 2009年5月28日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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