人間の弱さ、ずるさも描く。だからこそ、自らの半生も重ね合わせ舞台に立ち続けてきたという。初演から四十八年で、芙美子といえば今や森さん。二人のイメージも、こだまのように響き合う
貧しさをばねに小説家の夢をかなえた芙美子。森さんも芸歴は長いが、なかなか主役になれなかった。演劇界の大御所、菊田一夫から一度はこう言われる。「やっぱり脇役だな。越路吹雪のようにグラマーでもないし、宮城まり子のような個性もない」
それが負けん気に火を付けた。芸をさらに磨き、放浪記の主役に抜てきされる。「何事も手を抜いた瞬間から坂道を転げ始めます」。著書の言葉通り今も努力を欠かさない。足腰を鍛えるスクワットは毎日百五十回。一連の公演が終わると、せりふを忘れ、新鮮な気持ちで覚え直す
演技はなお進化している。常に坂を上ろうとする気概が支えなのか。「百歳までできれば幸せ」とも。まんざら不可能とは思えない不思議な力を感じさせる人である。
天風録 中国新聞 2009年5月11日
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