決まって旧暦の6月17日。宮島の管絃祭も夏の大潮が舞台になる。今年はきのうがその日に当たった。「月の出と潮の満干がこの祭の夜の事実上の進行係であった」。広島市出身の作家竹西寛子さんが代表作の「管絃祭」に書いている
廿日市市沖の大野瀬戸を巡った御座船は大鳥居をくぐり厳島神社の奧へ向かう。回廊ぎりぎりまで海水が満ち、平安絵巻は最高潮へ。船を引く広島市の江波漕伝馬(こぎてんま)保存会や呉市の阿賀漁協のこぎ手たちも腕の見せどころだ
300年前、転覆しかけた御座船を両地区の船が助けて以来続く大役という。かつて江波では20歳を迎えた地元漁師の「一生に一度の晴れ姿」だった。今や近隣からボランティアがはせ参じるのも、時代の流れかもしれない。「管絃の船を曳(ひ)きゆく八丁櫓(ろ) 鈴木厚子」
きのう夕刻から深夜にかけ、神社付近の潮位は3メートルほども上がった。干満の激しい動きが海中の養分をかきまぜ、多くの命をはぐくんできた瀬戸内。連綿と続く祭りは「母なる海」を実感させてくれる舞台装置でもある。
天風録 中国新聞 2010年7月29日
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