岩国市内の民家では、幻の新聞が嫁入り道具のたんすやトランクの底に眠っていた。昭和10年代、小社が山口県内で発行していた「中国防長新聞」。記録には残っていたものの、本社や支局にも実物はなかった
岩国のシンボル錦帯橋を題字にあしらう。1面トップは戦地に向かう兵士の話題。「怒濤(どとう)の歓呼に送られ我等(われら)が新精鋭征途へ」の大見出しが躍り、戦争に突き進んでいった時代の雰囲気が目に浮かぶようだ。「目立つ女性の大陸進出」「野犬が跋扈(ばっこ)」といった記事も
片や、庶民の関心事や流行をさりげなく映し出しているのが広告ではないか。「胚芽(はいが)米の五百倍のビタミンB」「健康美容に」。さまざまな薬や食品、乳液などが並ぶ。健やかで美しくありたいとの願いは、いつの世も変わらないと見える
取材した同僚によると、昭和初期の新聞は黄ばみ、ざらざらした手触りだったという。歴史の瞬間を日々切り取ってきた新聞。はるかな時を超えて伝えてくれるのも紙ならではの、ありがたさだろう。
天風録 中国新聞 2010年7月10日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録