口がきけなくなると、手で合図して助けを借り、トイレに立った。「凜(りん)」という言葉が似合う、この人らしい身じまいだったのだろう。長年マネジャーを務め、14年前に最期をみとった山崎洋子さんのエッセーにある
おそらく対極の光景に違いない。都内の病院から老人ホームに転じた医師の石飛幸三さん(74)=安芸高田市出身=が目にしたのは90歳前後の入所者たちだ。ほとんど意識がなく、ノーも言えない。胃に開けた穴から管で栄養剤を注入され、人によっては何年も生きられる
皮肉にもこの「命綱」が窒息や肺炎を起こし、救急車で運ばれることも珍しくない。老衰になっても8割の人が病院で亡くなる現実。「静かに最期を迎えようとしているのに医療が揺り起こしていいのか」と問う
最後の1週間何も食べず、家族に囲まれて大往生を遂げた102歳もいる。そんな日々の実践を先ごろ「『平穏シ』のすすめ」(講談社)につづった。2万部を超える売れ行きという。老いて口から食べられなくなったらどうするか。誰しも人ごとではない。
天風録 中国新聞 2010年6月22日
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