2010年06月19日

100年を迎える遠野物語「最小不幸社会」幸せの行方は時に人知を超える・・・ 天風録 八葉蓮華

 見ていると吸い込まれそうな深い淵(ふち)。道ばたには無数の石仏が並ぶ。岩手県遠野市の風景は、人が自然に包み込まれるようなたたずまいだ。小盆地に息づく伝承を集めた「遠野物語」がきょう、刊行から100年を迎える

 柳田国男が地元の青年から聞き書きし、日本に民俗学を広げるきっかけとなった。人里でいたずらする河童(かっぱ)。奥山に分け入れば天狗(てんぐ)や山女に会う。キツネに化かされ、神隠しにも遭う。限りある人の力。怪異の物語は、自然と折り合って暮らす人々の記憶だったのか

 忘れられないのがザシキワラシだ。古い家にはたいてい住む、と信じられていた。家の神として繁栄をもたらすが、他の家に移り、やがて没落するという。幸と不幸はあざなえる縄のごとし、と諭しているかのようだ

 出版当初は「恥をさらした」というのが地元の受け止め。迷信が残る非近代的な所と見られるのを嫌った。それから1世紀。今年は記念行事が花盛りで、物語の原風景を見に来る観光客も多い。地域にとっても、何が幸いするか分からない

 政府は成長戦略の一つとして、国民の「幸福度」の目安づくりをするという。菅直人首相の持論も「最小不幸社会」。だが幸せの行方は時に人知を超える。ザシキワラシが都合よく動いてくれるかどうか。

 天風録 中国新聞 2010年6月14日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:49| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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