2010年05月01日

読んで使えればOK「2136字」細部まで覚えきれない漢字を打ち出せる時代・・・ 天風録 八葉蓮華

 「きみたち日本人のためを思つていつてゐるんだ。漢字の重荷をおろしなさい」。先ごろ亡くなった井上ひさしさんの小説「東京セブンローズ」。敗戦直後、連合国軍総司令部(GHQ)で日本語政策を担当する将校が自信たっぷりに説く場面が出てくる

 もくろみは日本語から漢字を追放してローマ字にすること。難しい字の習得に費やす時間が浮けば、民主主義を勉強できるという理屈らしい。そんな国語を襲った危機を、膨大な資料で裏付けた物語だ

 幸い、ローマ字化は免れたものの、使える漢字にたがをはめられた。1946年に内閣が示した「当用」の1850字である。81年「常用」に衣替えして制限色が薄まり、1945字まで増やされた

 それが今年中にも一挙に2136字になるというから驚く。憂鬱(ゆううつ)の「鬱」、語彙(ごい)の「彙」のように細部まで覚えきれない字もある。「書ける必要はなく、読んで使えればOK」という。たちどころに変換できるパソコンや携帯の普及が追い風になったのだろう

 漢字学者の白川静さんは「その形は漢字が成立した時代の人々の生き方や考え方を具体的に示している」と書く。GHQ将校の企ては頓挫し、生き残った漢字を今やうろ覚えでも軽々と打ち出せる時代。はて、喜ぶべきことなのかどうか…。

 天風録 中国新聞 2010年4月26日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:51| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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