2010年05月10日

ハイテクが進み、仕組みがよく分からない暮らしの中に・・・ 天風録 八葉蓮華

 コイルに磁石を出したり入れたりすると、人形の耳や足が動く。夢中になって操作しているのは、お父さんお母さんたちだ。今月でオープン30周年を迎えた広島市のこども文化科学館。「主役」のお株を奪うかのような大人の姿が目立つ

 そういえば最近は大人向けの科学雑誌が静かなブームを呼んでいる。「鉱石ラジオ」に「風力発電キット」「ミニエレキギター」…。懐かしい道具から最新科学を取り入れたものまで、付録の組み立てキットがお目当てと聞く。読者は30〜40歳代が中心だ

 小学生のころ、プラモデル作りなどに熱を上げた世代でもあろう。説明図を見ながら、初心者でも作り上げていくことができる楽しさ。同時に、日ごろは考えもしない原理や仕組みに気付かせてくれるのも人気の秘密らしい

 子どもだけでなく、大人も科学や理科離れが進んでいるといわれる日本人。だがノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんは「不思議なことがあると、どうしてだろうかと謎を解く作業が科学。人はそういうことを本質的に好む」と語っている

 ハイテクが進み、仕組みがよく分からない「ブラックボックス」が暮らしの中にあふれている。手軽にできる実験や組み立て付録の人気も、知りたい「本性」がウズウズするせいだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年5月5日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:45| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月09日

「こんな広島が好きじゃのー」シニア世代の出番がますます増えそう・・・ 天風録 八葉蓮華

 ワイシャツに黒のちょうネクタイとスラックス。ダンディーに決めた男性5人が軽やかなメロディーに合わせ、思い思いのステップを踏む。車いすに乗った1人は手を動かして。初夏を思わす日差しを浴びながら歌い、踊った

 「古希」をひっくり返し、名付けてコーラスグループKIKO(キコ)。みんな70の坂をとうに越えている。きのう始まったフラワーフェスティバル(FF)に初めて出場した。出会いはシルバー人材センターが募った合唱団。住まいも職場も違うが、いずれ劣らぬ無類の歌好きだ

 おはこは「こんな広島が好きじゃのー」。昔に口ずさんだことがある歌をリメークしたという。「のんびりガタコト、チンチン電車」「川面に揺れる高層アパート」…。何げない景色をうたった歌詞に、古里への思いがにじむようだ

 被爆者という、もう一つの縁もある。公民館のイベントに出たり、病院の患者を訪問したりしている。「苦労したけど、元気でやっている姿を見てもらおうや」。同じ世代に送るエールでもあろう

 きのうのステージでは、おなじみの童謡「森のくまさん」など10曲あまりを熱演した。世代を超えて、親子連れやお年寄りが手拍子を取る姿はほほ笑ましい。シニア世代の出番がますます増えそうだ。

 天風録 中国新聞 2010年5月4日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:21| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月08日

65年の時間を超え、失われた街の記憶と今を生きる人たちをつなぎたい・・・ 天風録 八葉蓮華

 「原爆が落ちた近くが公園だったから良かったですね」。米国人記者の言葉に、映像プロデューサーの田辺雅章さん(72)はえっと耳を疑った。「広島一の繁華街だったんですよ」。3年前、ニューヨークであったやりとりという

 地元では信じがたいが、平和記念公園は昔から公園だったと思う人が結構いるようだ。産業奨励館(原爆ドーム)のそばで生まれ、疎開で難を逃れた田辺さん。消えた町並みの復元をライフワークにしてきた。誤りは正さなければ、と公園のもとの姿を3年かけて映像にした

 カフェーや写真館が連なる目抜き通り。子どもたちの遊び場。ざわめきやせみ時雨。かいわいに住んでいた57人から聞き取った街のたたずまいを、CG技術を使って細部に至るまでよみがえらせた。きょうNPT再検討会議が始まる国連本部で一部を上映する

 65年の時間を超え、かつて暮らしていた家の座敷に立って住民が語りかけるシーンも登場する。失われた街の記憶と今を生きる人たちをつなぎたい。田辺さんの思いはひとしお強いのだろう

 新緑がまぶしい公園を歩くと、心も和む。しかし、そこには4千人を超す人たちの暮らしがあった。決して忘れてはならないことに気付かせてくれる。この作品をくだんの記者にも見せてやりたい。

 天風録 中国新聞 2010年5月3日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:38| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月07日

メガ市場の内覧会「上海万博」消費文化を一気に塗り替える・・・ 天風録 八葉蓮華

 ヨーグルトが国民食に仲間入りするきっかけは40年前の大阪万博である。ブルガリア館で振る舞われ、ブームに火がついた。みんながカジュアルウエアを着こなすようになったのも、会場でのファッションショーなどの影響という

 大阪万博の生みの親となった作家の堺屋太一さんは「消費文化を一気に塗り替えるのが万博」という。わが家でも万博見物から帰ったころ、日曜の朝、食卓にトーストやハムサラダが並ぶようになったのを思い出す

 「より良い生活」をうたう上海万博が幕を開けた。来場者の見込みは大阪をしのぐ7千万人。そのほとんどは国内からとみられている。国家の威信をかけた世紀の祭典も、素顔は内需掘り起こしの内覧会なのかもしれない

 中間層や富裕層をくすぐるエコカー商戦や東西グルメの競演は熱っぽい。なにしろ「爆食」経済と呼ばれる13億人のメガ市場である。フランスはサルコジ大統領、韓国は李(イ)明(ミョン)博(バク)大統領と各国の首脳級が会場に乗り込んでいる

 わが首相は…といえば、中国から出席を再三求められた開会式に代役を送り、熊本県へ。水俣病の慰霊式に首相として初めて参列し、国の責任を認めて謝罪した。「環境重視なくして成長なし」とのメッセージをこめたとしたら、なかなかの選択だ。

 天風録 中国新聞 2010年5月2日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:55| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月06日

第二の「故郷」さりげなく金光の地名をしのばせた作品も少なくない・・・ 天風録 八葉蓮華

春の叙勲を受けた脚本家の倉本聡さん(75)には、忘れられないにおいがある。鉄鍋で煮えたぎったみそ汁と、父親が採ってきたツクシやゼンマイを放り込んだ時に漂った芳香だ。東京で暮らしていたころとは見違えるような、父親のたくましい姿も重なる

 10歳の時、縁を頼って疎開した岡山県の金光町(現在の浅口市)。朽ちかけた家に親子5人が身を寄せ合った。都会育ちの幼い兄妹が父親と田舎の廃屋に移り、成長していく…。代表作の「北の国から」は疎開先での体験が基になったという

 北海道の大自然の中で役者や脚本家を育ててきた「富良野塾」の出発点も金光にあったようだ。海から少し入った、なだらかな丘にはさまれた谷あい。気候こそ違うが、30年余り前に居を移した富良野の地に通じているのかもしれない

 さりげなく金光の地名をしのばせた作品も少なくない。地元の公民館で昨年末から、倉本さんが書いた原稿や本を展示している。「金光のことは忘れたことがありません」と伝えた手紙もある。第二の「故郷」になっている

 飢えと闘った疎開の日々にすすった汁の味、火のはぜる音、目に染みる山菜の緑。生きている幸せを感じたに違いない。五感を研ぎ澄ます倉本さんの信念は、そこから生まれたのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年5月1日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:13| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月05日

ほかの場所へ、努力を続ければ、いつかは成し遂げられる・・・ 天風録 八葉蓮華

 昔、中国にという老人がいた。家の前に山が二つあり、出入りにも不便をかこつ始末。そこで山を移そうと思い立つ。「長年こうして暮らしてきたのだから」と反対する妻を説き伏せ、家族総出で山を崩し始めた

 だが「箕(み)」と「もっこ」の作業は遅々として進まない。近所の人が笑うと、愚公は答えた。「わしがシんでも子孫が尽きることはない。必ず平らにできる」。愚かな者でも努力を続ければ、いつかは成し遂げられる。「列子」にあるたとえ話だ

 愚か、変わり者の意味もある「ルーピー」と米紙に皮肉られた鳩山由紀夫首相。国会で「私は愚かな首相かもしれない」と答弁したことも話題を呼んだ。普天間飛行場の移設をめぐり自ら5月末の期限を設けておきながら、場当たりの対応を繰り返すばかり。そんなゴタゴタをやゆしたのは間違いあるまい

 その首相がやっと動きだした。おととい徳之島出身の元衆院議員と会い、地元町長との会談の仲介を頼んだ。4日には沖縄を訪問する考えと伝えられる。身から出たさびと言えばそれまでだが、何とか事態を打開したいとの思いだろう

 物語では、愚公のたゆまぬ努力に感心した天帝が、ほかの場所へ山を移してやった。そのひそみに首相が倣うにしては、誠意も時間もなさすぎないか。

 天風録 中国新聞 2010年4月30日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:30| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月04日

ばらまきが目立つ「大きな政府」は、実は沈みゆく船だった・・・ 天風録 八葉蓮華

 ギリシャ神話にアイオロスという風の神が出てくる。革袋に詰め込んだ風を意のままに操って船を進める航海の神でもある。ただ今度ばかりは、ギリシャを財政危機の荒海に吹き流す汚れ役を押し付けられたようだ

 借金まみれでは、EU通貨のユーロを使う国の仲間に入れない。そこで政府は帳簿に赤字を増やさない形での危ない資金調達に手を染めた。見かけ上の借金を吹き飛ばし、ギリシャ丸はユーロ圏へまっしぐら。米大手金融機関が加担した取引は、アイオロスと呼ばれたそうだ

 昨秋の政権交代で、ごまかしがばれた。ばらまきが目立つ「大きな政府」は、実は沈みゆく船だったのだ。あわてて増税や公務員の給与カットにかじを切ったが、時すでに遅し。助け舟をと泣きつかれたユーロ圏も大揺れだ

 同じ昨秋に交代した鳩山政権。マニフェストはばらまきとの批判を、「無駄を省けば財源はいくらでもある」と受け流した。腕まくりで事業仕分けに臨んだが、金額的には期待はずれ。仕分け第2弾は心なしか淡々と進んだ印象だ

 ギリシャ以上の借金大国である。「出(い)ずるを制す」に限りがあれば、「入りを量る」新たなすべを考えて国民に問う。それが、ごまかしのない政治だろう。借金を丸ごと帳消しにするような神風は吹くはずもない。

 天風録 中国新聞 2010年4月29日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:37| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月03日

検察審査会「市民目線」裁判員制度とともに権限が強化され・・・ 天風録 八葉蓮華

 「市民」という言葉は、既に三国志の時代にあったらしい。1800年ほど前、魏の曹操が招いた学者の書いた本に出てくる。山中に住む「山民」に対し、市中で暮らす人、ぐらいの意味合いだった

 幕末から明治にかけて、日本で新たなイメージが加わる。西洋の思想を受け入れる際、英語の「シチズン」の訳として使われた。国家の政治に物申す人々という意味。戦後は「市民団体」「市民運動」と、この言葉抜きでは民主主義を語れないほどになった

 いま多くの市民が物申したいのは政治とカネの問題だろう。せっかく政権交代しても疑惑が後を絶たない。もやもやは募るばかり。折しも法曹界の扉が市民に向けて開かれた。裁判員制度とともに権限が強化された検察審査会だ

 「市民目線」から許し難い―。きのう「小沢一郎民主党幹事長は起訴相当」とする判断を突きつけた。審査員11人が一致したという。もう1回議決すれば強制起訴となる。なのに小沢氏は「与えられた職務を淡々とこなす」とあっさり続投を表明した。あまりにずれた感覚のようにも見える

 今回の市民の揺さぶりを「マグニチュード8」の衝撃に例える野党の政治家もいた。民意との間に生じた「ずれ」。元に戻すような一大地殻変動が始まるのか、どうか。

 天風録 中国新聞 2010年4月28日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:38| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月02日

ふぞろいの野菜「規格外」個性あふれる形は、ユーモアさえ感じる・・・ 天風録 八葉蓮華

 道のほとりにひっそりとたたずむお地蔵さん。ほほ笑みながら手を合わす姿に、思わずこちらの口元も緩んでくる。そんな野仏の写真展が、三次市の吉舎ふるさとプラザで開かれている

 15年前から撮り続ける上中道夫さん(63)=広島市西区。「眺めると優しくなれる」と田舎道を歩く。地蔵が額を寄せ合う作品は目線の先にツバキを置き、今にもしゃべりだしそう。これほど豊かな面ざしなのか。その魅力にハッとさせられた

 曲がったキュウリやナス、ゆがんだタマネギ、大きくなりすぎたホウレンソウ…。今まで見向きもされなかったのは、こんな野菜も同じだ。「規格外」として市場には出回らなかった。それが最近は店先でよく見かける

 このところの不順な天候のあおりで野菜の高値が続いている。いつもの年の倍近くも跳ね上がった品もある。そこで、スーパーなどがふぞろいの野菜に目を向けるようになった。消費者にとっても家計を助けてくれる心強い味方だろう

 ただ安いだけではない。さして味に変わりはないし、よくよく見れば個性あふれる形は、ユーモアさえ感じる。あらためて自然のおおらかさに気付かされるようだ。野仏を見つめると優しくなれるように、何げなく口にしている食べ物がいとおしく思えてくる。

 天風録 中国新聞 2010年4月27日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:47| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月01日

読んで使えればOK「2136字」細部まで覚えきれない漢字を打ち出せる時代・・・ 天風録 八葉蓮華

 「きみたち日本人のためを思つていつてゐるんだ。漢字の重荷をおろしなさい」。先ごろ亡くなった井上ひさしさんの小説「東京セブンローズ」。敗戦直後、連合国軍総司令部(GHQ)で日本語政策を担当する将校が自信たっぷりに説く場面が出てくる

 もくろみは日本語から漢字を追放してローマ字にすること。難しい字の習得に費やす時間が浮けば、民主主義を勉強できるという理屈らしい。そんな国語を襲った危機を、膨大な資料で裏付けた物語だ

 幸い、ローマ字化は免れたものの、使える漢字にたがをはめられた。1946年に内閣が示した「当用」の1850字である。81年「常用」に衣替えして制限色が薄まり、1945字まで増やされた

 それが今年中にも一挙に2136字になるというから驚く。憂鬱(ゆううつ)の「鬱」、語彙(ごい)の「彙」のように細部まで覚えきれない字もある。「書ける必要はなく、読んで使えればOK」という。たちどころに変換できるパソコンや携帯の普及が追い風になったのだろう

 漢字学者の白川静さんは「その形は漢字が成立した時代の人々の生き方や考え方を具体的に示している」と書く。GHQ将校の企ては頓挫し、生き残った漢字を今やうろ覚えでも軽々と打ち出せる時代。はて、喜ぶべきことなのかどうか…。

 天風録 中国新聞 2010年4月26日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:51| 大阪 | Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。