尾道市瀬戸田町の耕三寺の一角にある「未来心の丘」は代表作の一つだ。瀬戸内海を見渡す標高60メートルの丘に立つ巨大な彫刻群。3千トンもの大理石に圧倒される。完成から10年近くたつというのに、むしろ輝きは増したように見える
「あの丘には、娘へのせめてもの罪滅ぼしも込めています」。後日、福山市の個展会場で聞いた話が胸に染みた。妻と一人娘を日本に置いたまま、13年間のイタリア生活。仕事にかまけて子どもを構ってやれなかった父親の一人として、気持ちは痛いほど分かる
日展連続8回入選の「勲章」を胸に、洋々たる修業のはずだった。しかし全くの鳴かず飛ばずで、お湯もない馬小屋に寝起きする暮らし。絶望の果てに出合ったミケランジェロの大理石の彫刻が、進むべき道を教えてくれた
はるかイタリア北部のカラーラの洞窟(どうくつ)で掘り出された「未来心の丘」の大理石。そこは親の懐に抱かれているような安らぎを与えてくれる場所と聞く。丘の上はいつも子どもたちの歓声が絶えない。杭谷さんの思いが、人々を優しく包むのだろう。
天風録 中国新聞 2010年4月17日
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