2010年04月10日

「智慧の環」が目指した学ぶ楽しさだけは失ってほしくない・・・ 天風録 八葉蓮華

 明治3年といえば、ちょんまげ帯刀姿が道を行き交っていたころ。その年、わが国初の小学校教科書「絵入り智(ち)慧(え)の環(わ)」が発刊された。著者の古川正雄は、福沢諭吉のまな弟子で慶応義塾の初代塾長。広島県北広島町の芸北支所の近くで生まれた

 薄墨で刷られた和紙のページを図書館でめくると、維新前後のにおいが立ちのぼる。仮名や数字、方位を楽しく学べるよう絵が添えてある。世界地図や舶来品の紹介も。外国人を驚かせた当時の庶民の教育水準の高さをほうふつとさせる

 時代は変わっても、国が目指す社会を映し出すのが教科書だろう。欧米の知識を取り込み、ひたすら坂道を駆け上っていたころが幸せだったのかもしれない。教えることは増え続けたが、経済成長がなによりの成果だった

 「第2の経済大国」になったころから、迷いが出る。知識偏重の詰め込み教育が子どもを追い詰めてはいないかと。そうして転じた「ゆとり教育」も、学力低下を招いたと風当たりが強い。国際調査でアジア諸国に追い抜かれた科目もある

 中国山地の山ひだから出た先覚者が初めて世に送り出して140年。来春から小学校の教科書は一挙に分厚くなり、「脱ゆとり」にかじを切る。「智慧の環」が目指した学ぶ楽しさだけは失ってほしくない。

 天風録 中国新聞 2010年4月4日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:20| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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