懸命に羽を伸ばす1匹をミカン畑で見つけ、「頑張れ」と声をかけた幼い日を思い出す。何度も脱皮を繰り返しながら、魔法のように変化していくアゲハ。花を求めて、お気に入りの「空の道」を行き来するさまは、さながら通勤や通学のようだ
就職したり進学したりする若者にとっても、きょうは「羽化」の日だろう。児童文学者の高丸もと子さんの詩にこんな一節がある。「だれもしらない音だけど/わたしの殻をやぶる音/今日からはじまる/何かいいこと」。きのうまでとは違う自分との出会い
ただ、殻を破りたくても、やすやすとはできない時代でもある。広島県内では高卒者の1割、大卒の2割が、2月末までに就職先が決まらなかった。望む大学などに進めず、リベンジを誓っている受験生も多いに違いない
アゲハの美しさの理由は何だろう。幼虫の時代にもりもり葉を食べてエネルギーを蓄える。そして、さなぎとなって閉じこもり、羽や鱗粉(りんぷん)をこつこつ用意する…。未来を信じてあきらめない。そうすれば羽ばたく日がきっと来る。
天風録 中国新聞 2010年4月1日
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