2010年04月30日

働き続けることの意味を身をもって教えてくれる先達たち・・・ 天風録 八葉蓮華

 医師の日野原重明さんは98歳の今も診察をこなす。講演やミュージカルの脚色も手掛け、3年先まで書き込める手帳を持ち歩く。100歳の記念に広島で開く平和コンサートは小沢征爾さんと数年来の約束という。前向きに日々を生きる姿が頼もしい

 3日前に98歳を迎えた映画監督の新藤兼人さんも現役ばりばりだ。こちらは目の前の仕事に打ち込んできた。金欠病の独立プロを率いて60年。浮沈がかかるたび、「裸の島」「午後の遺言状」といった力作で苦境をはね返してきた

 そうした作品28本を集め、誕生祝いの上映会が東京・池袋で開かれている。上京の折にのぞくと、会場に作品ポスターが並んでいた。家庭内暴力やいじめ、生と性、老い…。生々しいテーマとがっぷり四つに組んできた仕事ぶりに圧倒される

 トークショーで新藤さんは「近々、メガホンを取る」と宣言した。新作は戦争のむごさを撮る。戦友の形見を届けた先で、目の当たりにした家族の悲劇がテーマだ。生き残りの2等兵として使命感に突き動かされるのだろう

 日野原さんの人生心得には、「誰かのために時間を使うようにすること」とある。「生きたいために仕事をする」のが新藤さん流だ。働き続けることの意味を身をもって教えてくれる先達たちである。

 天風録 中国新聞 2010年4月25日
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2010年04月29日

歌舞伎座、高層ビルとの複合施設となる5代目のこけら落としは3年先・・・ 天風録 八葉蓮華

 東京・銀座の歌舞伎座が、もうじき見納めとなる。大がかりな改築工事に入るためだ。戦災後に建て直され、数えて4代目。ビルの谷間にありながらも、瓦ぶきの白壁はどっしりと存在感を示してきた

 一度だけ楽屋に入らせてもらったことがある。12年前のことだ。広島市南区生まれの中村芝寿弥(しずや)こと垰本(たおもと)敏光さんを訪ねた。入り口には名前が入ったのれん。「大部屋時代との違いです」。落語でいえば真打ちに当たる「名題(なだい)」に昇進したばかり。女形らしい柔らかな笑顔だった

 テレビで目にした歌舞伎の中継に魅せられ、国立劇場での研修を経て20年。この間、通行人などを演じながら、台本にアクセントの印をつけて慣れない江戸言葉のせりふを覚えたと聞いた。苦労は人一倍だったろう。しかし4年後、44歳の若さで急逝した

 今の歌舞伎座の名残の公演には、名跡を継ぐ名優や若手スターが勢ぞろいし、連日の大入りだ。その陰で、舞台を引き立てる脇役や裏方たち。大きな志を胸に秘め、伝統の世界に飛び込んできた人も少なくないだろう

 高層ビルとの複合施設となる5代目のこけら落としは3年先だ。江戸の面影をとどめる正面の外観は残されるという。垰本さんの志もきっと、新しいひのき舞台に引き継がれるに違いない。

 天風録 中国新聞 2010年4月24日
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2010年04月25日

車の専用道、歩道では自転車と歩行者が窮屈そうにすれ違う・・・ 天風録 八葉蓮華

 もともとの主人公は自動車だが、この時ばかりは人が主役だった。利用が始まる前の車の専用道を歩く記念イベントに参加した。防音の壁に黒ずみはなく、ガードレールの輝きもまぶしい。道路の表示は汚れなく白い。ほやほやのにおいに酔った

 広島市の東部エリアを南北に走る広島高速2号線が全通し、広島湾に沿う3号線はさらに西に延びる。26日の開通が目前だ。これまで細切れだった専用道が初めてつながる。「回廊」となる効果は大きいに違いない

 タイヤ痕のない車道を再び歩くことはないはずだ。そんな思いに駆られて、シャッターを切り続けた。人波は一時、通勤ラッシュのようだった。なのに車もいなければ、自転車も通らない。これほど気兼ねなく歩けるのか、と多くの人が体感したことだろう

 歩くうちに、車やバスで込み合う眼下の県道の光景が気になった。歩道では自転車と歩行者が窮屈そうにすれ違う。先日、バスと接触して自転車の中学生が亡くなった痛ましい事故を思い出し、足が止まった。うまくすみ分ける手だてはないものか

 専用道で先輩格の瀬戸内しまなみ海道は、約70キロの併設サイクリングロードが人気を呼んでいる。歩く人や電動カートがのびのびと行き来できるような道が、街の中にあってもいい。

 天風録 中国新聞 2010年4月20日
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2010年04月24日

アイスランドの火山の噴煙がいま、世界中の空の便を混乱させ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「一烟(えん)怒って人にまとひ、猛火天を焦がし(中略)熱湯大河となりて、石は燃ながら流」。1783年に起きた浅間山大噴火の様子を、信濃出身の俳人小林一茶が後に「寛政三年紀行」に記している。折から「天明の大飢饉(ききん)」の最中。噴火の追い打ちで餓シする人も相次いだ

 時を同じくして火を噴いたのが、約9千キロ離れた北極圏に近いアイスランドのラキ火山だ。両方の火山灰やガスは偏西風に乗って北半球全体を覆い、欧州でも異常気象による大飢饉を招いたという。フランス革命のきっかけになったとの説もある

 ラキ火山に近い別の火山の噴煙がいま、世界中の空の便を混乱させている。上空約11キロまで上った灰は欧州全体に広がった。ジェット機が灰を吸い込むとエンジンが止まる恐れがあるとして、欠航は日に1万7千便にも及ぶという

 このまま噴火が長引けば、気象にも大きな影響が出かねないと心配する専門家もいる。煙が傘のように地球をすっぽり覆い、日射を遮る恐れがあるからだ。地球規模で気温が上がらず、食糧不足の懸念が現実味を帯び始めている

 おととし、米国発の金融危機に直撃され「国家破綻(はたん)」寸前に追い込まれたアイスランド。不況はあっという間に世界中に広がった。今回の噴火もひとごとではあるまい。

 天風録 中国新聞 2010年4月19日
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2010年04月23日

通り過ぎる車「赤名峠」山ひだに分け入って暮らしてきた日本人・・・ 天風録 八葉蓮華

 峠という漢字は日本生まれだ。険しい坂をやっと上り詰める。ふと立ち止まり、来た道を振り返る。下る先を思い描く。山ひだに分け入って暮らしてきた日本人のにおいが染みこんだ文字といえようか

 しばしば人生や時代の節目に例えられる。「峠は決定をしいるところだ/峠には訣別(けつべつ)のためのあかるい憂愁がながれている」。真壁仁の詩の一節である。希望も不安もあるが踏み出してこそ明日が来る。昔の旅人には特別な思いにひたる場所だった

 越える山が高いと道も曲がりくねる。広島、島根県を隔てる赤名峠は旅人泣かせの難所。かつては人や荷が盛んに行き交い、江戸期には馬300頭で石見銀を運んだという。だが東京五輪の年にトンネルができて用済みに。峠道は草むらに埋もれた

 峠のにぎわいを思い起こしてみよう。県境を挟んだ住民たちが「国盗り」イベントをきょう催す。古道のてっぺんで綱引きし、勝てば境の立て札を向こうに寄せる。平成の大合併で県境は「辺境」の色を濃くする。手を取り合って盛り返したい、との思いがこもる

 峠の語源は道の神に祈る「手向け」という。大勢で歩いて峠に立ち、そこから何かをたぐり寄せたいと願う人々。通り過ぎる車に無視されてきた道の神もきっと歓迎してくれるだろう。

 天風録 中国新聞 2010年4月18日
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2010年04月22日

「未来心の丘」丘の上はいつも子どもたちの歓声が絶えない・・・ 天風録 八葉蓮華

 掘り出す時、ねずみ色に見えた石は、太陽の光の中でまばゆいほどの白色に変わる―。イタリアなど国内外で数々の屋外彫刻を手掛ける杭谷(くえたに)一東(いっとう)さん(68)。大理石の美しさをこう言い表す

 尾道市瀬戸田町の耕三寺の一角にある「未来心の丘」は代表作の一つだ。瀬戸内海を見渡す標高60メートルの丘に立つ巨大な彫刻群。3千トンもの大理石に圧倒される。完成から10年近くたつというのに、むしろ輝きは増したように見える

 「あの丘には、娘へのせめてもの罪滅ぼしも込めています」。後日、福山市の個展会場で聞いた話が胸に染みた。妻と一人娘を日本に置いたまま、13年間のイタリア生活。仕事にかまけて子どもを構ってやれなかった父親の一人として、気持ちは痛いほど分かる

 日展連続8回入選の「勲章」を胸に、洋々たる修業のはずだった。しかし全くの鳴かず飛ばずで、お湯もない馬小屋に寝起きする暮らし。絶望の果てに出合ったミケランジェロの大理石の彫刻が、進むべき道を教えてくれた

 はるかイタリア北部のカラーラの洞窟(どうくつ)で掘り出された「未来心の丘」の大理石。そこは親の懐に抱かれているような安らぎを与えてくれる場所と聞く。丘の上はいつも子どもたちの歓声が絶えない。杭谷さんの思いが、人々を優しく包むのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年4月17日
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2010年04月21日

支え合う「道しるべ」があれば勇気づけられるに違いない・・・ 天風録 八葉蓮華

 ジャーナリストの児玉隆也さんは国立がんセンターを初めて受診した日、トイレの落書きが目に焼き付いた。「神様、私の癌(がん)を治してください」。田中角栄元首相の金脈追及で一躍、名をはせた1974年の暮れのことだ

 末期の肺がんと闘う自らの姿を見つめたルポ「ガン病棟の九十九日」にあるエピソード。執筆を終えておよそ1カ月後、38歳の若さで亡くなった。患者としての赤裸々な思い、家族への気配り。単行本が出版されて35年になるが、読み返すたび胸を打たれる

 この先、どんな治療や副作用が待っているのだろうか。同じような病気の人は不安にどう向き合っているのか…。わらにもすがりたい患者や家族は、先輩患者が書いた「道しるべ」があれば勇気づけられるに違いない

 「がん闘病記 読書案内」を編んだ星野史雄さんは、同じ立場に立たされた病友の告白だから心に響くという。妻の乳がんを機に始めた専門の古書店で集めた本は2360冊。最近は広島市立中央図書館のように、病気別のコーナーを設ける図書館も増えてきた

 本だけでなく、インターネット上で病気を語るブログもめじろ押しだ。手軽に闘病記が書けるサイトまである。書き手と読み手がつながり、支え合う。そんな時代になったのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年4月16日
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2010年04月20日

寒の戻りで、とどまっていた春。顔を上げれば樹上はもう若葉・・・ 天風録 八葉蓮華

 ひらりはらりと桜の花びらが落ちる速さは1秒間に1メートルほど。「落花(らっか)の雪」の例えもあるように、雪片の落下速度とほぼ同じという。風があれば宙に舞う。「中空に とまらんとする 落花かな」(中村汀女)。花のいのちが惜しまれる一瞬だろう

 咲くたびに「春が来た」と感じるのは梅から桜まで。やがてフジ、ツツジの開花で「行く春」を思う―。お天気博士の倉嶋厚さんは季節の移ろいを花木に託す。寒の戻りで、とどまっていた春。花が散り始め、ようやく次の場面に移ろうとしている

 7カ月余り前、政権交代の花を咲かせた鳩山内閣はどうだろう。政治とカネの問題が幹を揺すり、樹勢は見る影もない。小鳥の枝移りよろしく、あの案この案と迷走してきた普天間移設問題。オバマ大統領に会った首相は「5月末決着」を約束してきた

 どこまで命がけで動いてきたのか、移設先のめどは全く立たない。政権のつまずきの石になりそうで、政変説もささやかれる。このまま散り果てて川面を漂い、「花筏(いかだ) 流れを変へし 石一つ」(安原久雄)では悔やまれよう

 太田川沿いの路面に散った落花の雪。顔を上げれば樹上はもう若葉だ。花に続き、実もたわわに付け、惜しまれて去る。そんなトップが育ちにくい政治の土壌が気になる。

 天風録 中国新聞 2010年4月15日
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2010年04月19日

家族という「宝石」の輝きに、あらためて思いをはせてみる・・・ 天風録 八葉蓮華

 紫がかった紺の海や白い雲があやなす、この星。山崎直子さんは宝石にたとえ、一句ひねった。「瑠璃(るり)色の 地球も花も 宇宙の子」。差し込んでくる日の光にも見とれながら、お気に入りのメロディーを口ずさんでいるのではないか

 夜明けの来ない夜はないさ、と始まる「瑠璃色の地球」。松田聖子さんが産休から復帰した紅白歌合戦で聞かせたバラードだ。スター同士の恋愛、破局、結婚。起伏に富んだ人生も肥やしにして、ママドルと呼ばれるきっかけになった

 歌詞にこんな一節がある。「悩んだ日もある/かなしみにくじけそうな時も」。ママさん宇宙飛行士の山崎さんも決して順風満帆ではなかった。いつ飛べるか、ゴールが見えないまま11年間。ロシアや米国を何度も往復した。家事専業に転じた夫は生きる目標を見失い、離婚まで思い詰めたという

 「居てほしいときに居てくれない」。夫の言葉に、はっと気付いた。せめて、そのつらさを受け止めよう。家族の支えが必要なんだと伝えよう、と。空から夫と娘に「宇宙一の愛をこめて」とメールを送った

 この春、単身赴任や就職で家族と離れた人もいることだろう。そばに居てくれる―その何げない安らぎや温かさ。家族という「宝石」の輝きに、あらためて思いをはせてみる。

 天風録 中国新聞 2010年4月14日
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2010年04月18日

世の中の見えないもの「少年口伝隊」忘れてならぬものを未来に手渡す・・・ 天風録 八葉蓮華

 2年前、新聞社に1本の電話がかかってきた。戦時中、輪転機を疎開させたのはいつか。その後どうなったのか。調べる手だてはないか。根掘り葉掘り、熱っぽく問い合わせてきたのが井上ひさしさんだった

 原爆で発行できなくなった新聞の代わりに、少年たちが自らも被爆しながらニュースを口伝えして歩く―。朗読劇「少年口伝(くでん)隊一九四五」を書き出す直前だったようだ。社の資料を送ると、電話の向こうから「良いものができそうだ」と弾んだ声が返ってきたという

 戯曲「父と暮せば」と「紙屋町さくらホテル」も広島への原爆投下がテーマ。長崎や朝鮮人被爆者を取り上げた物語を練っていたと聞く。広島、長崎への思いは人一倍強かった

 山形の農村に生まれ、空襲の体験はない。「同じ年代の子どもが地獄を見たとき、自分は夏祭りの練習をしていた。ものすごい負い目があった」。昨年夏、広島市での講演会で思いを打ち明けている

 かねて「少年口伝隊」を広島の人に見てほしいと願っていたという。7月に地元の市民グループの手で実現する運びだ。「世の中の見えないものを見えるようにするのが、われわれの仕事。だから伝えていく責任がある」。忘れてならぬものを未来に手渡す、口伝隊としての一生を全うした。

 天風録 中国新聞 2010年4月13日
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2010年04月17日

「秀木の指」筋肉がほぐれたら、心の緊張や不安も解けてくる・・・ 天風録 八葉蓮華

 「指で圧(お)してみると、頸(くび)と肩の継目の少し背中へ寄つた局部が、石の様に凝つてゐた」。文学作品に「肩が凝る」という言葉が初めて登場したのは、夏目漱石の「門」だそうだ。医療史研究家の立川昭二さんの著書「からだの文化誌」に教えられた

 痛む肩を押してほしいと頼む妻。夫は額に汗をにじませつつ、指先に力を込める。だが満足に効いてくれない。近代の夫婦の機微を巧みに描いた小説の一節である。同じような体験をお持ちの方も多かろう

 指を酷使せず、手軽に肩凝りを解消できる。そんな道具が廿日市市から生まれた。長短の木をエの字形に組んだ「秀木(しゅうぼく)の指」。親指に見立てた短い部分を、首と肩の付け根に押し当ててもらう。肩をすくめて力む、緩める。繰り返すことで筋肉がリラックスするという

 アイデアの主は日本赤十字広島看護大の元教授松原秀樹さん。心身医学の取り組みが、地元の木工所とのコンビで形になった。「筋肉がほぐれたら、心の緊張や不安も解けてくる」。首や肩の凝りはストレスのバロメーターでもあるようだ

 「門」の発表からちょうど100年。肩凝りは腰痛と並び、日本人男女の自覚症状の1、2位を占める。木製の指で肩を押し合えば会話も弾む。どんな家族の小説が生まれるだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年4月11日
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2010年04月16日

由宇球場「カープタウン」ファンと選手の距離の近さも魅力・・・ 天風録 八葉蓮華

 マツダスタジアムの名物「寝ソベリア」の元祖は、きっとここではあるまいか。芝生の斜面にシートを敷いて、弁当をつまんだり寝ころんだり。思い思いのスタイルで、野球観戦を楽しんでいる

 広島カープ2軍の拠点、岩国市の由宇球場。由宇の街中から車で15分ほどの山あいにある。駐車場代がかかるが、観戦は無料。将来のエースや強打者たちと出会えることが何よりの楽しみだ。「カープタウン」の愛称が根付きつつある

 周りを見回すと、鳴り物入りの応援はなく、至って静か。これは、と見込んだ選手の一挙手一投足に目を凝らす人が少なくないと聞いた。週末ともなれば、ピクニック気分の子ども連れもやってくる。日によっては観客が千人を超える「人気スポット」になっている

 今や、押しも押されもしない大黒柱の前田健太投手。この球場から巣立った一人だ。プロ1年目の2007年、2軍ではチーム最多の103回を投げ込んだ。「早く1軍に上がるより、プロで通用する力を付けることの方が先決」。その言葉通りの活躍ぶりが光る

 「エースになってと声を掛けたら、うなずいた」「バイクのヘルメットにサインをもらった」…。そんなエピソードも数多く残っている。ファンと選手の距離の近さも魅力なのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年4月10日
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2010年04月15日

城下町の面影「原爆の子」炎から身を守った厚さ20センチの土蔵・・・ 天風録 八葉蓮華

 あの材は天守閣のなれの果てでは…。そんな想像をかきたてられるシーンが新藤兼人監督の映画「原爆の子」にある。城跡とおぼしき石垣の近く。滝沢修扮(ふん)する老人と孫が身を寄せ合うバラック建てだ

 1945年の秋口、広島城の天守台には柱や板などの残骸(ざんがい)がうずたかく積み重なっていた。やがて市民が持ち帰り、焦土で雨露をしのぐ足しにする。みんな生きるのが精いっぱい。そんな時代の残像を、被爆から7年後にロケ撮影した映画がとどめる

 原爆は、天守閣の南方980メートル付近の上空でさく裂した。風雪に耐えた鯉城(りじょう)が爆風で一瞬のうちに崩れ落ちる。思いも寄らない光景だったろう。人々を地獄図に投げ込んだ一発の爆弾は、城下町の面影もかき消した

 見違えるようになった街で、すっぽり欠けているのが歴史の厚みではないか。城内から明治初めに移築されたとみられる土蔵が、今も東区役所の近くにある。太い梁(はり)に城遺構のたたずまいをとどめる。老朽化が進み解体の危機と、地方版の記事が伝えている

 捨て置けば、将来に悔いを残すだろう。広島市は「文化財指定に至っていない」とそっけない。原爆の日の夕、迫り来る炎から身を守った厚さ20センチの土壁。保護用のトタン板で覆われた姿が、何ともけなげに見える。

 天風録 中国新聞 2010年4月9日
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2010年04月14日

「風を切り走れ」投手を除く全ポジションをこなし・・・ 天風録 八葉蓮華

 「足の速さは/誰にも負けない/風を切り走れ」。キムタクコールがわき上がる広島市民球場。さっそうと駆ける背番号0が目に浮かぶ。マツダスタジアムで練習中に倒れたまま、きのう37歳で逝った木村拓也さん。無念というしかない

 華やかな脚光を浴びるような選手ではなかった。宮崎県の高校からドラフト外で日本ハムに入団。11年過ごしたカープ時代もレギュラーに座ったのは4年間だ。守備の控えと代走からはい上がった。投手を除く全ポジションをこなしたのは、この人ぐらいだろう

 「どうすれば、この世界で生き延びられるか」。その一心で貫かれた野球人生。体格も恵まれた方ではない。左打ちをマスターしようと普段もはしを左手に持ち替えた―。そんなエピソードからも、人一倍の頑張りがうかがえる

 2003年にフリーエージェント権を得ながら「カープに育ててもらった」と残留を望んだ。3年後、巨人へトレード。悔しかったに違いない。それでも対戦すると、古巣のベンチにやってきては人なつっこい笑顔を見せてくれたという

 この春からコーチになった後も広島市の自宅を移さなかった。団地のお祭りに出たり、学校行事に気さくに参加したり…。「広島のキムタク」はこれからも、ファンの心に生き続ける。

 天風録 中国新聞 2010年4月8日
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2010年04月13日

独特の辛さ「わさび」ツーンとした刺激がたまらない・・・ 天風録 八葉蓮華

 茎や葉から、いつもの香りが漂う。ツーンとした刺激がたまらない。湯をかけてもみ込むうちに組織が壊れ、シニグリンという成分が空気に触れると、辛味が出てくるらしい。益田市匹見町の産地で、わさび漬けの作り方を初めて教わった

 摘み取ったばかりの花芽も使う。はぐくまれた命を余すことなくいただくのが作法だ。白だしと砂糖、みりんを混ぜたタレに漬ける。3、4日もすれば、味がなじんでくる

 さっと湯にくぐらせて振り続け、辛味を引き出すやり方もある。わさびを「たまがす」のだという。熱湯をかけられ振り回されるわさびは、さぞびっくり仰天するに違いない。もっとも、たまがせ過ぎると、しなびてしまう。そのころ合いがミソだ

 日本にしかない独特の辛さ。最近は豆やチップス、チーズ、ソーセージといった加工品が花盛りだ。抗菌シートは弁当でおなじみ。消臭スプレーもある。耳の不自由な人のために、わさびのにおいで火事を知らせる機器までお目見えしたそうだ

 通勤の道すがら、スーツ姿も初々しい若者たちと出会うようになった。さっそく一線の職場に出て上司や先輩たちにもまれ、目を丸くしたり落ち込んだりすることも多いかもしれない。人を育てるのも、上手にたまがすことがコツなのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年4月7日
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2010年04月12日

迷子捜し「忘れられた日本人」顔の見えない相手に呼び掛ける・・・ 天風録 八葉蓮華

 夕飯時になっても子どもが帰ってこない。おろおろし、名前を叫ぶ家族に近所が気付き、地域総出の騒ぎに。すると、誰も指図をしていないのに遊び場の池や川、山寺、友達の家へ。てきぱきと捜索隊が散らばっていく

 心当たりの場所が次々に浮かぶのは、その子や家族の事情を知り尽くしているからこそ―。民俗学者の宮本常一はそう見立てた。古里の周防大島で聞き取った迷子捜しの逸話を、著書「忘れられた日本人」に書き留めている

 生老病シの情報が口コミで地域に行き渡ったのはいつの時代までだったのだろう。広島市と隣り合う海田町は29年前、町民のお悔やみ情報を街頭スピーカーで流し始めた。同じ年の町基本計画に「都市化の進展で近隣生活の連帯感は失われてきた」との表現がある

 時がたち、葬式の日取りを知らせるサービスに違和感を抱く住民が多くなってきた。「うるさい」「無意味」と煙たがられ、この春ついにお役御免に。住民の出入りが増え、地縁がさらに薄れたせいだろうか

 顔の見えない相手に呼び掛ける街頭スピーカー。廿日市市は2年前から、徘徊(はいかい)で行方が分からないお年寄り捜しに使っている。まちぐるみで取り組む現代の迷子捜し。地域のつながりを編み直す「捜索隊」も生まれるかもしれない。

 天風録 中国新聞 2010年4月6日
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2010年04月11日

灰干し「厄介者」が取り持った離島の縁・・・ 天風録 八葉蓮華

 干物なのに、鮮魚のようなみずみずしさ。焼いて口に入れるとしっかりしたうま味が広がり、すこぶるご飯も進む。瀬戸内海の真ん中、笠岡市の北木島で住民たちが手作りし、通信販売を始めた「灰干し」である

 島の漁師が捕った旬のタイやシタビラメ、タコなどを開き、砂粒のような火山灰の中にすっぽり埋める。冷蔵庫で寝かせて2日間。水分を吸わせながら熟成を待つ。中国地方ではあまり見かけることのない製法だ。日や風に当てないので脂の変化が少なく、魚本来の滋味が凝縮するという

 その灰は、はるばる600キロ離れた東京都の三宅島から運ばれてきたと知って驚いた。度重なる噴火によって大量に降り注いだ灰や石。「干物づくりに役立てられないか」。それを聞きつけ助け舟を出したのが、北木島の人たちだった

 こちらは古くから「北木石」で知られる土地柄。石を加工したり火山灰の塊を細かく砕いたりするのはお手のものだ。とはいえ北木島にも灰干しのノウハウはない。地元の魚を使って試行錯誤を重ねながら、1年半かけて商品化にこぎ着けた

 三宅島やほかの島でも、これを手本として事業に取り組む動きが広がっている。「厄介者」が取り持った離島の縁。誕生した特産品の味わいは、ことのほか深い。

 天風録 中国新聞 2010年4月5日
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2010年04月10日

「智慧の環」が目指した学ぶ楽しさだけは失ってほしくない・・・ 天風録 八葉蓮華

 明治3年といえば、ちょんまげ帯刀姿が道を行き交っていたころ。その年、わが国初の小学校教科書「絵入り智(ち)慧(え)の環(わ)」が発刊された。著者の古川正雄は、福沢諭吉のまな弟子で慶応義塾の初代塾長。広島県北広島町の芸北支所の近くで生まれた

 薄墨で刷られた和紙のページを図書館でめくると、維新前後のにおいが立ちのぼる。仮名や数字、方位を楽しく学べるよう絵が添えてある。世界地図や舶来品の紹介も。外国人を驚かせた当時の庶民の教育水準の高さをほうふつとさせる

 時代は変わっても、国が目指す社会を映し出すのが教科書だろう。欧米の知識を取り込み、ひたすら坂道を駆け上っていたころが幸せだったのかもしれない。教えることは増え続けたが、経済成長がなによりの成果だった

 「第2の経済大国」になったころから、迷いが出る。知識偏重の詰め込み教育が子どもを追い詰めてはいないかと。そうして転じた「ゆとり教育」も、学力低下を招いたと風当たりが強い。国際調査でアジア諸国に追い抜かれた科目もある

 中国山地の山ひだから出た先覚者が初めて世に送り出して140年。来春から小学校の教科書は一挙に分厚くなり、「脱ゆとり」にかじを切る。「智慧の環」が目指した学ぶ楽しさだけは失ってほしくない。

 天風録 中国新聞 2010年4月4日
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2010年04月09日

「代返」ならぬ身代わり投票とは言葉もない・・・ 天風録 八葉蓮華

 4月の天気は変わりやすい。前線の通過に伴う強風が列島を吹き抜けたきのう、永田町も一陣の突風に見舞われた。急発達した低気圧の目は意外な人物。不祥事を起こした農相の後継を3度も引き受け、ミスターリリーフと呼ばれた自民党の若林正俊氏である

 「魔が差した」のだという。それにしても参議院を舞台に、「代返」ならぬ身代わり投票とは言葉もない。いかにも分別くさそうな若林氏の心の中に、どんな魔物が入り込んだというのだろうか

 不在の隣席はかつての参院のドン。その採決ボタンを押す証拠写真が出回って騒動になった。12年前に導入した方式だが、選良に魔が差すことは想定外だった。各地の大学では代返防止システムの導入が進む。同列に論じたくなること自体情けない

 責任をとらない民主党とは違うぞ、と言いたかったのか。本人はあっさり議員辞職願を出し、幕引きとなった。もともと夏の参院選で引退し、代わりに長男が出る予定だった。リリーフ準備が万端整っているなら、潔さも半ばというところか

 身代わり投票はなんと立て続けに10回も。この日だけと言われても釈然としない。前線は太平洋上に抜けた。穏やかな花見日和が広がりそうだが、突風にあおられた良識の府には大穴が開いたままだ。

 天風録 中国新聞 2010年4月3日
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2010年04月08日

「末代までの恥」21世紀枠校をくみしやすいとみるのは本音かもしれない・・・ 天風録 八葉蓮華

 満開を前にして、雨に打たれ散ってしまった。桜ならぬ広陵ナイン。泥んこのグラウンドが選手たちに気の毒だ。3年前の夏の惜しい準優勝が忘れられず、早く雪辱してほしいと願ったのだが

 「弱いから負けた。雨はお互いさま」と指揮官。両チームが近くに陣取る試合後のインタビューは非情だ。負けたら「敗軍の将は兵を語らず」と断りたいのが本心だろう。無念さを押しコロしていたのではないか

 逆に不用意な発言が思わぬ波紋を広げ、自身の進退に及んだケースもある。初戦で21世紀枠の出場校に敗れ「末代までの恥」と漏らした開星の前監督だ。昨秋の中国大会優勝を誇る。戦績よりも地域とのつながりなどを評価されて選ばれたチームに、よもやの結果。自らを責めたのだろう

 強豪校が21世紀枠校をくみしやすいとみるのは本音かもしれない。懐具合の豊かな学校が有力選手を全国から集める特待生の問題が背景にありそうだ。だから実力本位とは別枠の選出も、春の甲子園の「特色」かなという気がする

 野球に限らず、決まり事で若者を縛りすぎるのは禁物だろう。きょうが命日の高村光太郎は「春駒」の詩で「のびやかな、素直な、うひうひしい」と3歳の栗毛(くりげ)をたたえる。広陵ナインも夏にそんなプレーを見せてほしい。

 天風録 中国新聞 2010年4月2日
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