もう一つの顔がある。ネズミやトカゲ、小鳥と手当たり次第に食らいつくどう猛さ。金網を登り、すき間をすり抜けて養鶏場を襲うこともある。「開拓牧場貂(てん)のうろつく夕間暮」(岡田日郎)の一句は「森のギャング」の風情をすくい取る
それは分かっていただろうに手抜かりがあったのか…と返す返すも残念だ。佐渡のトキ保護センターにテンが侵入し、ケージにいた11羽のうち9羽を食いコロした。自然界ではあり得ないほどの獲物の数に興奮して歯止めが利かなくなったのだろうか。逃げようのないケージは修羅場になった
その昔、島の野ウサギが植林した木の芽を食べ尽くした。半世紀前に本土から連れてこられた「天敵」が21匹のテンだった。ウサギはすっかり減ったが、今や2千匹にも増えたテンは怖いものなしだ
ニッポニア・ニッポンという学名があるトキ。かつては羽を休める姿が日本中どこでも見られた。絶滅にまで追い込んでしまったのは、美しい羽毛を求め続けた人の欲。今回の「惨劇」もまた、詰まるところ人間のせいだったのか。
天風録 中国新聞 2010年3月12日
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