奈良県で26歳の妻が、5歳の男の子をガシさせたとして、夫とともに逮捕された。嫌いな夫に似ているのでかわいくなかった、という。5歳の子なら20キロ前後はある体重が、6キロ余りしかなかった。長期にわたってろくに食べさせなかったらしい
「思わずカッとなって」という話ではない。緩慢なサツ人とさえ見える。「坊主憎けりゃ」とばかり子に当たり続けたとしたら、夫ともども人間の心を失っているとしか思えない。とはいえ…
本紙に載った小関祐子さんの歌がある。「愛せなくて辛(つら)かつたらうギャク待シのニュースの夕べわが母を思ふ」。歌人は、幼いころにかわいがってくれなかった母を断罪しなかった。なぜそうなったのか、「子を愛せない自分」に苦しんでいたのではないか、と思いをはせる。煩悶(はんもん)を経てたどり着いた境地に違いない
奈良県の母も、夫に似たわが子が最初から憎かったはずがなかろう。うかがい知れない事情も重なったのか。とはいえ…将来、あるいは愛せない辛さを察してくれたかもしれない子は、もう返らない。
天風録 中国新聞 2010年3月6日
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