明治時代に旧暦が新暦に切り替わった時、ほかより短い月になった。「いぬる一月」よりもなお足が速く「逃げる二月」と感じるのはそのせいだろう。月末のきょうを指して「二月尽(じん)」という季語も生まれた
「尽」には、軽い後悔の響きがこもる。この前、年が明けたばかりなのに、大したこともしないうちにもう2カ月も費やしてしまったか、と。政治資金疑惑に驚き、トヨタを気にかけ、五輪に酔っている間にいつの間にか…。流されているようなわが身を省みる
厳寒の月がこれで終わり、という安堵(あんど)感を与えるのも「尽」の字だ。「二月尽雨なまなまと幹くだる」(石原舟月)。雨さえも柔らかく、温度を感じる。体もまた冬モードのこわばりが解け、内側からほぐされていくようだ
あすから三月。人も自然も春の準備に入る月だ。中には不況で就職が決まらず、その気になれない若い人もいよう。あと1カ月。どこか行き先が決まって、二月の寒い気分に「尽」のピリオドを打つ人が一人でも増えてほしいと願う。
天風録 中国新聞 2010年2月28日
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