2010年03月06日

情報ネットワークの発達「津波」過去の記録を忘れないよう努力・・・ 天風録 八葉蓮華

「海岸や河川から離れ、厳重な警戒をしてください」―。春本番を思わせる穏やかな日差しが降り注いだ広島市内。スピーカーから流れる呼び掛けに、思わず辺りを見回した人もいたに違いない

 南米チリの巨大地震で発生した津波がきのう午後、太平洋を越えて日本列島へ次々に押し寄せた。はるか1万7千キロ離れた地球の反対側から、ほぼ一昼夜。時速にすれば700キロ余りになる。ジェット旅客機に迫る驚くべきスピードだ

 ちょうど50年前、同じチリを震源に日本を襲った大津波を思い出す。高さは最大8メートルに達し、三陸沿岸を中心にシ者・行方不明者は142人に上った。大きな被害になったのは、第1波が到着した後に警報を出すという気象庁のミスもあったとされる

 その苦い教訓から、観測網が整えられた。今回は早いタイミングで警報・注意報が出された。インターネットや携帯など情報ネットワークの発達もある。半世紀前、テレビがある家庭は半数にも達していなかった

 昭和の初め、科学者の寺田寅彦が災害を防ぐ方法を書いている。「人間がもう少し過去の記録を忘れないよう努力するより外はない」。今回は心配された被害はなかったが、住民の避難はスムーズだったようだ。記憶と情報のたまものでもあろう。

 天風録 中国新聞 2010年3月1日
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2010年03月05日

「二月尽」流されているようなわが身を省みる・・・ 天風録 八葉蓮華

 エッセイストの杉浦日向子さんが、二月を「遠くで会釈する人」に例えている。はっきり見えないが、とりあえずちょっと頭を下げる。誰だったかなと思ううち、姿は既にない。いつの間にか過ぎ去ってしまう、はかない月

 明治時代に旧暦が新暦に切り替わった時、ほかより短い月になった。「いぬる一月」よりもなお足が速く「逃げる二月」と感じるのはそのせいだろう。月末のきょうを指して「二月尽(じん)」という季語も生まれた

 「尽」には、軽い後悔の響きがこもる。この前、年が明けたばかりなのに、大したこともしないうちにもう2カ月も費やしてしまったか、と。政治資金疑惑に驚き、トヨタを気にかけ、五輪に酔っている間にいつの間にか…。流されているようなわが身を省みる

 厳寒の月がこれで終わり、という安堵(あんど)感を与えるのも「尽」の字だ。「二月尽雨なまなまと幹くだる」(石原舟月)。雨さえも柔らかく、温度を感じる。体もまた冬モードのこわばりが解け、内側からほぐされていくようだ

 あすから三月。人も自然も春の準備に入る月だ。中には不況で就職が決まらず、その気になれない若い人もいよう。あと1カ月。どこか行き先が決まって、二月の寒い気分に「尽」のピリオドを打つ人が一人でも増えてほしいと願う。

 天風録 中国新聞 2010年2月28日
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2010年03月04日

「もう一人の私」ライバルの存在が、原動力・・・ 天風録 八葉蓮華

 宿命のライバルがパーフェクトな演技をした。その直後に銀盤へ上がる気持ちはどんなものだったか。沸き返る会場で、浅田真央選手は両手でヘッドホンを押さえていた。重圧に耐え、ひたすら自らに集中するように

 ラフマニノフの前奏曲「鐘」が流れる。重々しい調べに乗り、赤と黒のコスチュームが躍動する。2回の3回転半ジャンプを見事に決めたが、ぐらつく場面も。演技を終えて「納得していない」と涙ぐんだ。でも一時は出場すら危ぶまれた。価値ある銀ではないか

 失敗続きの3回転半を立て直してきた不屈の精神力。やはり隣国にキム・ヨナ選手がいたからだろう。誕生日が20日違いの19歳で背丈もほぼ同じ。表彰台に並んだ二人ほど、切磋琢磨(せっさたくま)という言葉がぴったりくる関係はあるまい

 13歳での初対決。大差で敗れた金選手は「どうしてあの子が私と同じ時代に生まれたの」と嘆いた。やがて対戦を重ね、自分ならではの流れるような演技に磨きを掛ける。浅田選手のことを「もう一人の私」と思ってきた。そんなライバルの存在が、フリーで最高得点を出す原動力になった

 フィギュア女子にとどまらず、韓国勢の活躍が目覚ましい。すでに金メダルは6個。「もう一人の私」は、国と国の間でも言えることかもしれない。

 天風録 中国新聞 2010年2月27日
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2010年03月03日

「聴こえてくる声」敬遠したくなるような人が、実は潜在的な味方・・・ 天風録 八葉蓮華

「立ちどまる。/足をとめると、/聴こえてくる声がある」。長田弘さんの詩「立ちどまる」だ。続けて、こう問い掛ける。木や水のことば、雲のことばが聞こえますかと

 「私たちの声は聞こえていますか」と米国の人たちはトヨタに問いたかったのだろう。アクセルが戻りにくい。ブレーキが一瞬利きにくい。なぜと問うてもきちんと答えてもらえず、それが大きな怒りとなり、ついには豊田章男社長が議会の公聴会に呼びつけられた

 「会社の成長が早すぎて、立ち止まって考える余裕をなくしていた」と、社長は認めざるを得なかった。目指していたのは自動車の世界トップの座。全開のエンジン音に、小さな声はかき消されてしまったのだろう

 「悪感情を一掃するには、会って直接話すのが一番いい」とはリンカーン大統領の言葉という。社長が米国に出向いて直に釈明することで、怒りは少しでも鎮まっただろうか。ただ国民感情の動向は、まだ見定めがたい

 米国の調査会社がデータから割り出した法則がある。苦情を言う客も、きちんと対応をすればその8割が次も買ってくれる、という。敬遠したくなるような人が、実は潜在的な味方。「聴こえてくる声」を今後に生かして米国民の信頼を得られれば、立ち止まったことも悪くない。

 天風録 中国新聞 2010年2月26日
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2010年03月02日

暮らしの中にある歌「音戸の舟唄」穏やかな海を思わせるスローなリズム・・・ 天風録 八葉蓮華

 つらい作業でも、歌を歌えば気が紛れ、元気も出る。今に伝わる民謡の多くは、もとは仕事歌だ。例えば北海道のソーラン節。骨太のリズムを聞くと、荒海のニシン漁で力強く網を引く情景が浮かぶ

 ♪船頭可哀(かわい)や音戸の瀬戸で…と歌いだす「音戸の舟唄」。こちらは穏やかな海を思わせるスローなリズムだ。ただ時間帯によって変わる潮を乗り切るのは、老練の技が要る。♪一丈五尺の櫓(ろ)がしわる…と続く歌詞に、日に焼けた船乗りの腕っぷしを想像する

 呉市をはじめとする瀬戸内一円では、エビたたきや臼ひきなどの仕事歌にもなっていた。今の音戸の人にとっては暮らしの中にある歌だろう。学校で教わった子どもが風呂の中で父と歌う。病床のお年寄りを見舞って元気づける。古里の記憶そのものだ

 おととし始まった全国大会で、地元勢が活躍したのも合点がいく。合併で消えた「音戸町」の元気づけにと、市などが企画したイベントである。県外から集まる玄人はだしの愛好家の挑戦をはねのけて、本場の心意気を示した

 今年の大会が28日に迫った。ただ張り切っているのは年配の人たち。若い人が入ればパワーアップするに違いない。ソーラン節からは「YOSAKOIソーラン」が生まれた。舟唄が進化する日も来るだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年2月25日
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