2010年03月31日

「究極のパッチワーク」使い込んできた襤褸(らんる)ボロ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「究極のパッチワーク」に目がくぎ付けになった。268枚の端切れを縫い合わせてあるという布団地。使い古した布を継ぎはぎしたり当てたりした襤褸(らんる)(ボロ)だ。その一針一針に、どんな思いを込めたのだろう

 広島市に住む水野恵子さんのコレクションが来月4日まで、福山市の広島県立歴史博物館で展示されている。水道工事業を営んでいた父の義之さんが生前、仕事の傍ら各地を歩いて収集した襤褸など古布500点余りの一部だ

 大河ドラマ「龍馬伝」で、マズしい暮らしを送る岩崎弥太郎や家族が身にまとっている着物といえば、昔を知らない世代にもイメージが浮かぶだろうか。最近は、BOROとして欧米の染織工芸や現代美術ファンの視線も熱いというから驚かされる

 会場には当て布で補強された半纏(はんてん)やもんぺ、幼子が履いた足袋も並ぶ。農村の女性たちが布をいとおしみながら、何代にもわたって使い込んできた襤褸。向き合ううちに、作った人、使った人のぬくもりまで伝わってくるようだった

 水野さんによれば「豆三つ包めたら布は捨てるな」という言い伝えもあるそうだ。祖先がはぐくんできたエコ心の極みであろう。「陽炎(かげろう)に母の襤褸を吊(つ)る日曜」(沼尻巳津子)。遠い日の記憶もまた呼び覚ましてくれる。

 天風録 中国新聞 2010年3月25日
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2010年03月30日

農山村は今や、ゲリラ戦法が得意なサルの勢力圏・・・ 天風録 八葉蓮華

 「専守防衛で徹底抗戦するしかない」。太田川の上流域に家を借りた友人の弁である。相手は、タマネギや大根を狙って出没するサルたち。畑にくいを立て、ネットで覆った。ところが、サルを防ぐ前に「伏兵」がいた。春先の重い雪に押しつぶされたのだ

 相手が女性や老人だと近づいても逃げない。家に上がり込み仏壇の鈴をチーンと鳴らしていた。鉄砲を構えると手を合わせて命ごいをする。電気柵のスイッチを切ったとの伝聞情報まで。サルの悪さについて語る人はなぜか多弁になる。そして大抵、「やれやれ」で話は終わる

 爆竹などを鳴らしても効果は一時的。人に似ており、攻撃するのもはばかられ、根負けしがちだ。そんなサルの被害が全国の山里で目立ち始めたのは1970年代ごろ。奥山に人工林が増え、餌が減ったせいもあろう

 集落から人影が減ったことも無関係とはいえないようだ。「誰かがごそごそしとればサルも出てきにくいのに」と友人は言う。自分の領分が増えたと、サルの側は勝手に思いこんでいるのかもしれない

 農山村は今や、ゲリラ戦法が得意なサルの勢力圏だ。防止ネットは敵陣の中の孤塁にすぎまい。もっと人影を増やせないものか。都市住民を巻き込んでの「集団的自衛権」が行使できれば心強い。

 天風録 中国新聞 2010年3月23日
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2010年03月28日

桜前線が北上中「サヨナラ」はまた、出会いの始まり・・・ 天風録 八葉蓮華

 桜前線が北上中、といえばなぜか心が浮き立つ。10日には四国の高知でソメイヨシノが開花。20日には広島でも咲き始めた。いずれも平年より10日前後も早い。地球温暖化の影響がどこまで進むのか、とつい考えてしまう

 日本気象協会の開花予想では、締めの北海道・釧路が5月18日だから、およそ2カ月で駆け上がる。速度にして1日約20キロ。この桜前線と一緒の旅ができれば、とあこがれる人は多いだろう。夢のようなぜいたくを、何年も実現している人がいる

 カメラマンの宮嶋康彦さん。写真集「日本列島桜旅」は四季折々の桜に焦がれた結晶だ。1月の沖縄から、5月の北海道、さらに冬桜まで45カ所を紹介。宮嶋さんは「桜恋の旅」と呼んでいる

 桜前線を押し上げるかのようにきのう、日本列島を強風が吹き荒れた。春の嵐である。花に嵐、とくれば井伏鱒二さんの有名な翻訳詩が浮かんでくる。「コノサカヅキヲ受ケテクレ/ドウゾナミナミツガシテオクレ/ハナニアラシノタトエモアルゾ/『サヨナラ』ダケガ人生ダ」

 卒業や異動たけなわの時期だ。高校、大学、実社会へと巣立ち、家族や古里との別れもあろう。入学や入社を彩った桜も今や、卒業シーズンと重なるようになった。「サヨナラ」はまた、出会いの始まりでもある。

 天風録 中国新聞 2010年3月22日
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2010年03月27日

「たがや〜」と拍手を送りたいような器が現れれば・・・ 天風録 八葉蓮華

 花火見物の両国橋の上。そこのけと馬を乗り入れる侍に、道具箱を持った男が「きょうは何の日だと思ってやがるんでえ」と、たんかを切る。樽(たる)や桶(おけ)を直す「たが屋」は、江戸落語の題になるほどポピュラー。たがを締める、緩むなどの言い回しが、今に伝わる

 緩み具合が目を覆うばかりなのは自民党だ。選挙を前に一致団結を、と引き締める声を尻目にこのたがには限界がある、と離れていった元閣僚。ほかの大物も、たがの取り換えを公然と口にする

 がっちり締めたたがは、そうそう緩まない。しかし酒や水を入れないままでおくと、次第に木が乾いて縮み、そこからガタが来るという。満々とたたえていた「政権」という酒を失って、自民党という樽も、がたつき始めたのだろう

 代わりの入れ物になった民主党。新樽のころはそうでもなかったが、今は一滴もこぼすまいとばかり、たがを締め上げている。その息苦しさに「物も言えない」と異議を唱えた役員は、クビを言い渡された。中で不満も発酵していると見える

 別の新しい樽を作ろうとか、ばらして組み立て直してみたら、とかのアイデアもあるようだ。修繕でも新品でもいい。たがが程よく締まり、安心して酒を入れられ、「たがや〜」と拍手を送りたいような器が現れれば…。

 天風録 中国新聞 2010年3月21日
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2010年03月26日

地域のきずな「杏まつり」世代を超えて守り続ける・・・ 天風録 八葉蓮華

 バスの前方に海が見えてきた。右手の山並みは、もやをかけたようにピンクにかすんでいる。「杏(あんず)の里」で知られる福山市田尻地区だ。花はいまが見ごろ。中腹まで人家の続く杏の里が最も華やぐ季節。鞆の浦や仙酔島も間近に見える

 中国原産の杏は唐桃とも呼ばれ、初夏に小ぶりの実を付ける。田尻には江戸時代、豊後(大分県)から僧侶が持ち込んだと伝わる。食用に限らず、せき止めの生薬としても重宝されたという

 終戦直後、石積みの段々畑から杏が姿を消し、代わりに芋が植えられた。食糧難の時代だった。杏の里復活への動きが本格化するのは40年ほど前。「公害が深刻になり、身近な環境にも関心が向き始めたころでした」と地域の世話役たち。接ぎ木や剪定(せんてい)、下草刈りの作業が続いた

 右肩上がりの経済成長に陰りが見え、みんなが戦後の大事な忘れ物に気づき始めたころでもある。段々畑に立って目を凝らせば、国内有数の製鉄所の煙突群も見える。再生への思いはひとしおだったに違いない

 里山の一角には、地元の小学生が卒業記念に植えた若木も並ぶ。そんな地域のきずなを確かめ合う「杏まつり」があす催される。18回目の今年は露店が並び、遊覧用の杏船も出る。世代を超えて守り続ける「誇り」を海から望める。

 天風録 中国新聞 2010年3月20日
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2010年03月25日

進化を続ける省エネ技術、環境に優しい暮らし・・・ 天風録 八葉蓮華

 市街地を走ってみると、意外に信号待ちで停車する時間が長かった。25分余りのうち7分半。この間エンジンも止まった。かかったままなら、10分間でガソリン260ccをロスするという。知らず知らずの浪費に驚かされる

 停車時にエンジンを自動的に切るアイドリングストップ。きのう、この機能を載せた車に試乗した。いつも通りの運転で無駄をなくせるのも快適だ。こちらの思いを心得たような反応。これが最先端の技術なのだろう

 省エネならエアコンも芸が細かい。床や壁、ドア付近の室温をセンサーで確認。変化があれば「カーテン・ドアが開いてませんか」とリモコンの文字が問いかけてくる。人がいなくなると自動的に消えるテレビ、周りの明るさに応じて節電する冷蔵庫までお目見えした

 環境に優しい暮らしといえば「不便」や「我慢」のイメージがつきものだった。新顔の製品は、そんな常識をひっくり返す力も備えているようだ。これなら、ずぼらなままでもエコを積み上げられそうな気にさせる

 2020年までに温室効果ガスの25%カットを掲げる鳩山政権。なかなかハードルは高い。でも、進化を続ける省エネ技術の加勢があれば、オーバーヒート気味の温暖化エンジンをひょっとしてストップできるかも…。

 天風録 中国新聞 2010年3月19日
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2010年03月23日

レモン王国「広島レモン」酸っぱさと香りの魅力・・・ 天風録 八葉蓮華

 好物はイモや木の実。ミカンやイチジクもよく食べる。瀬戸内の島々で農作物を食い荒らすイノシシ。そんなやっかい者でも、そっぽを向いてしまう果物があるという

 思い浮かべれば、つばがわいてくるレモンだ。イノシシが嫌うのも分かる気がする。そのためだけではなかろうが、島ではレモンに転換するかんきつ農家が増えている。広島県の生産量はこの10年ほどで約3倍に。国産全体の3分の2を占める

 実は、戦前もレモン王国だった広島。明治時代から栽培が始まり、輸出していた時期もある。温暖で雨が少ない気候は栽培にもってこい。強い風もあまり吹かず、枝にあるトゲで実に傷がつく心配も少ない。穏やかな風土が、質の高いレモンをはぐくんできたのだろう

 最近は安心・安全をうたい文句に、生だけではなく、加工された商品も店頭で見かけるようになった。ポン酢、レモンティー、ケーキ…。大手メーカーも「広島レモン」と銘打った搾り汁を全国で売り出したばかりだ

 あの強烈な酸っぱさと香りこそ、レモンの魅力に違いない。こってりした揚げ物をさっぱりさせ、お菓子の甘さを引き立てる。手近に置いて料理に垂らせば、気になる塩分の取りすぎも防いでくれる優れもの。イノシシだけには教えたくない。

 天風録 中国新聞 2010年3月17日
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2010年03月21日

「ザ・インターネット」いたちごっこを演じるうちに・・・ 天風録 八葉蓮華

 名前や生年月日など、個人情報がすべて消されてしまったら、どうやって自分が自分であることを証明するか。15年前の米映画「ザ・インターネット」が描いた仮想現実の世界だった

 匿名性のそんな危うさの半面、ネット上のアドレスさえあれば、世界中の誰とでも語り合える。上から支配されず、「分権型」の結び付きともいえるインターネットが広がった理由だ。最近も、イラン国内の改革派の抗議行動に使われたり、大震災のハイチ支援に力を発揮したり…

 そこで浮上したのが「インターネットを今年のノーベル平和賞に」という動きだ。幅広く対話と論議を広げ、国際的な対立を乗り越えるきっかけをつくった、という推薦者の評価もうなずける。過熱してサイトの炎上事件なども相次ぐが、逆に圧力に屈しないパワーも秘めている

 ネットを技術面で鍛えてきたのはハッカーやウイルスの攻撃。いたちごっこを演じるうちに安全性を高めた。今、中国に進出した米検索サイトを悩ましているのは、自由を求めた発信元を狙い撃ちする「検閲」圧力。政府も絡んでいるらしい

 映画では、ヒロインが必シの抵抗で相手以上の力を培い、「自分」を奪い返す。ネットが受賞するようなら、受取人を中国要人にするのも一案かもしれない。

 天風録 中国新聞 2010年3月16日
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2010年03月20日

平成の大合併で、生まれ育った町の名、どんどん消えている・・・ 天風録 八葉蓮華

 山田詠美さんの近作「学問」は「美流間(みるま)」という架空の小さな市が舞台だ。引っ越し話に揺れる小学生の気持ちを、こう描く。「彼女の思う美流間は、もはや地名であって地名ではないもの。彼女を包むさまざまなものをひとまとめにした名称でした」

 思い出の場があり、人がいる。よそにいてもその名を聞いただけで押し寄せる波のような感情。生まれ育った町の名は、子ども心にも深く刻まれているに違いない。ところが平成の大合併で、小さな自治体がどんどん消えている

 とりわけ2千近くあった「町」。1200も減って783となり、ついに市の数を下回った。象潟(きさかた)、余呉、信楽、長船(おさふね)、坊津(ぼうのつ)…。多くの人が耳にしたことのある由緒ある町名も例外ではない。住んでいる人の喪失感はどれほどだろうか

 半世紀前の昭和の大合併でなくなったのは6千以上の「村」。それでも最近まで、消印の郵便局名や小学校名にしぶとく存在感を示していた。しかし合理化や統廃合。こちらも急速に失われつつある

 民族移動や植民が盛んだった欧米と違って列島には古名が多く残る、と専門家は言う。合併による町村の墓碑銘に心が痛むのは、地名であって地名を超えたものを、そこに見るからだろう。世界に誇れる「地名遺産」。粗略にしてはなるまい。

 天風録 中国新聞 2010年3月14日
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2010年03月18日

フンボルト「ペンギン」温帯地域で暮らす種の方がはるかに多い・・・ 天風録 八葉蓮華

 ペンギンのコーナーには、南極の氷山を模した白いコンクリートの小山。一昔前の水族館では、お決まりの取り合わせだった。実は、南極だけにいるペンギンは18種中2種。日本と同じ温帯地域で暮らす種の方がはるかに多い

 ペンギンといえば南極。そのイメージがつくられたのは戦後間もないころだ。はるばる南極海へ出かけた捕鯨船が連れて帰り、たちまち子どもたちの人気者に。捕鯨基地だった下関市の水族館で多くのペンギンが見られたのも、そんな事情からだ

 ところが国際的な取り決めで、むやみに捕まえられなくなった。捕鯨も下火となり、極地のペンギンが日本に来ることは、ほとんどなくなった。後を継いだのが温帯にすむペンギンたちだ

 代表格がチリなどにすむ小柄なフンボルト。絶滅も心配されている現地と違い、日本国内では1500羽余りに増えた。寒い日はストーブで暖をとることもあるというが、固定観念は恐ろしいもの。「氷山」離れができない水族館もあった

 フンボルトの生息地を再現したゾーンが下関の海響館にできた。チリの国立公園から「重要な繁殖地」に指定されるほど本格的な屋外施設だ。土穴の中に入ったり、水中を泳いだり。のびのびとした動きを眺めていると、南極の氷のイメージも解けてくる。

 天風録 中国新聞 2010年3月13日
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2010年03月17日

半世紀前に本土から連れてこられた「天敵」テン・・・ 天風録 八葉蓮華

 すらりとした体は光沢のある黄金色。たっぷりして長いしっぽに愛くるしい瞳。縫いぐるみにしたら子どもたちは大喜びだろう。中国地方にも広く生息する夜行性の小動物、テンだ

 もう一つの顔がある。ネズミやトカゲ、小鳥と手当たり次第に食らいつくどう猛さ。金網を登り、すき間をすり抜けて養鶏場を襲うこともある。「開拓牧場貂(てん)のうろつく夕間暮」(岡田日郎)の一句は「森のギャング」の風情をすくい取る

 それは分かっていただろうに手抜かりがあったのか…と返す返すも残念だ。佐渡のトキ保護センターにテンが侵入し、ケージにいた11羽のうち9羽を食いコロした。自然界ではあり得ないほどの獲物の数に興奮して歯止めが利かなくなったのだろうか。逃げようのないケージは修羅場になった

 その昔、島の野ウサギが植林した木の芽を食べ尽くした。半世紀前に本土から連れてこられた「天敵」が21匹のテンだった。ウサギはすっかり減ったが、今や2千匹にも増えたテンは怖いものなしだ

 ニッポニア・ニッポンという学名があるトキ。かつては羽を休める姿が日本中どこでも見られた。絶滅にまで追い込んでしまったのは、美しい羽毛を求め続けた人の欲。今回の「惨劇」もまた、詰まるところ人間のせいだったのか。

 天風録 中国新聞 2010年3月12日
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2010年03月16日

腹回りの基準「予備軍」確保の狙いも透けて見えるメタボ健診・・・ 天風録 八葉蓮華

 「百切れぬ ゴルフも腹も 超メタボ」。今年のサラリーマン川柳の優秀作が目に留まった。心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の引き金とされるメタボリック症候群。男性85センチ、女性90センチが腹回りの基準だ。1センチでも超えれば「予備軍」の恐れがある

 ここにきて基準自体が揺らいでいる。厚生労働省の研究班が中高年3万人を調べた。確かに男女とも腹回りが大きい人ほど、生活習慣病になる割合も上がる。ただ、はっきりした危険ゾーンの線引きはできなかったという

 2年前に始まったメタボ健診は、病気になる手前で見つけ食い止める。ただ当初から「健康な人を病人扱いする」「太ってないのにリスクが高い人が見逃される」と異論も。数字に一喜一憂させられたのは何だったのか。恨み節が聞こえてきても不思議でない

 線引きといえば、体格や病気の有無を調べる戦前の徴兵検査が思い浮かぶ。明治初めの身長の合格基準は5尺1寸(約154・5センチ)。その後、徐々に緩められていった。国民の体格が変わったわけではなく、兵士の員数確保のためだった

 健康の物差しは時として、その国の意図や関心を映し出す。医療費を減らす狙いも透けて見えるメタボ健診。「体脂肪 燃やして発電 出来ないか」。そんな太っ腹な気持ちで受けてみようか。

 天風録 中国新聞 2010年3月11日
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2010年03月15日

イルカ「ザ・コーヴ」バッシングが広がる、伝統の追い込み漁・・・ 天風録 八葉蓮華

 尾道水道を泳ぐイルカの写真が、先日の本紙に載った。外洋から餌を追って迷い込んだようだ。ちょっとした春先の珍事。2頭が並んで仲良く泳いでいたというが、無事に抜け出せただろうか

 同じイルカの話でも、米国からのニュースは気が重くなる。和歌山県太地町のイルカ漁をテーマにした米映画「ザ・コーヴ(入り江)」がドキュメンタリー部門でアカデミー賞を取った。群れを小さな入り江に追い込んで「虐サツ」する様子が隠し撮りで暴かれているという。海面が血で染まるシーンもある

 イルカと言えば愛嬌(あいきょう)のあるしぐさが浮かぶ。水族館では芸を見せたり、船と一緒に泳いだり。動物療法では「セラピスト」として寄り添ってもくれる。それがコロされて肉片となり、スーパーに並んでいると聞けば、確かに心穏やかではない

 一方で反発も感じてしまう。「知能が高いイルカを食べるなんて野蛮」と欧米の価値観をストレートに伝える映画。鯨に続いて、またバッシングが広がるのではないか、と

 遺跡から出る大量の骨は、縄文の人たちの暮らしを物語る。江戸時代は各地で追い込み漁が盛んだったという。太地の漁法は、伝統を今に伝える「無形文化財」とみることもできる。考えるほどに、迷いイルカのような気分になる。

 天風録 中国新聞 2010年3月10日
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2010年03月14日

日米関係「記念切手」人物や建物を通して過去をよみがえらせる・・・ 天風録 八葉蓮華

 大河ドラマ「龍馬伝」が幕末の激動期に入った。大老の井伊直弼が朝廷などの反対を押し切って日米修好通商条約に調印、国論を二分する。この時期の日米関係を象徴する切手の図柄がある

 太平洋の荒波にもまれる咸臨丸と、米大統領に面会する幕府使節団。1960年に発行された「日米修好百年」記念の2枚一組だ。小中学生の間では切手収集がブーム。早速入手した同級生が切手帳を、大切そうに開いて見せてくれたのを思い出す

 人物や建物を通して過去をよみがえらせるのが、歴史をテーマにした記念切手の魅力だろう。あの条約の調印から100年後は厳密には58年。その年は井伊の銅像をあしらった「日本開港百年」記念切手を出している

 2年後をあえて「修好百年」としたのは、なぜだろう。ちょうど、幕末に匹敵するほど国論を二分した日米安保条約改定の年である。郵便学者の内藤陽介さんが「政府の本音は安保改定を祝うことにあった」(「反米の世界史」)と説くのもうなずける

 半世紀後の今は「同盟」と言い換えられる日米関係。過去と違い国論はほぼ統一されたように見えるが、普天間移設で荒波の気配も。新条約発効の節目、6月23日には安保改定50周年の記念切手が発行される。どんな図柄になるのだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年3月9日
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2010年03月12日

体からのSOS「自分の居場所」幸せに暮らす一家と仲間たち・・・ 天風録 八葉蓮華

 森に囲まれた谷を舞台に、幸せに暮らす一家と仲間たち…。おなじみの童話ムーミンの世界だ。その原画・模型展がいま広島県立美術館で開かれている。自由で個性にあふれた面々の生き方も、人気の理由に違いない

 不思議なことに、ムーミンの物語には学校が出てこない。原作者の女性トーベ・ヤンソンは小学生のころから、学校が嫌いだったせいらしい。算数が苦手で、しょっちゅう遅刻していた。「いつも独りぼっちだった」と生前のインタビューで打ち明けている

 皇太子家の愛子さまが今月初めから、ほとんど登校できない状態になられている、と宮内庁の発表があった。通われている学校で男児らから乱暴な振る舞いを受け、強い不安感や腹痛の症状もあるという。体からのSOSのように見えて、胸が痛む

 ふと、小学生だった娘が不登校になった十数年前の光景がよみがえる。泣きわめく娘を毎朝、引きずるように連れていった。ますますひどくなる行き渋り。今にして思えば学校に「自分の居場所」がなかったのだろう。そんな心の内を分かってやれなかった苦い記憶だ

 ムーミンの谷では誰もが安心していられる。目が覚める時はうれしいし、床につくのも楽しい。子どもたちにとって、そんな世の中になればと願う。

 天風録 中国新聞 2010年3月7日
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2010年03月11日

「子を愛せない」夫ともども人間の心を失っている・・・ 天風録 八葉蓮華

 親と子はどこかしら似ているものだ。「りりしい目元はオレ似だ」「違う。アタシに似てるのよ」。円満な夫婦の間では、かわいいけんかの種にもなる。ところがそれが悲劇を招くこともあるのだろうか

 奈良県で26歳の妻が、5歳の男の子をガシさせたとして、夫とともに逮捕された。嫌いな夫に似ているのでかわいくなかった、という。5歳の子なら20キロ前後はある体重が、6キロ余りしかなかった。長期にわたってろくに食べさせなかったらしい

 「思わずカッとなって」という話ではない。緩慢なサツ人とさえ見える。「坊主憎けりゃ」とばかり子に当たり続けたとしたら、夫ともども人間の心を失っているとしか思えない。とはいえ…

 本紙に載った小関祐子さんの歌がある。「愛せなくて辛(つら)かつたらうギャク待シのニュースの夕べわが母を思ふ」。歌人は、幼いころにかわいがってくれなかった母を断罪しなかった。なぜそうなったのか、「子を愛せない自分」に苦しんでいたのではないか、と思いをはせる。煩悶(はんもん)を経てたどり着いた境地に違いない

 奈良県の母も、夫に似たわが子が最初から憎かったはずがなかろう。うかがい知れない事情も重なったのか。とはいえ…将来、あるいは愛せない辛さを察してくれたかもしれない子は、もう返らない。

 天風録 中国新聞 2010年3月6日
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2010年03月10日

「記憶遺産」一人ひとりの心のひだに刻みつけられた記録・・・ 天風録 八葉蓮華

「記憶遺産」という耳慣れない言葉を最近知った。人類として残すべき歴史文書や芸術作品を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が選ぶ。いわば、みんなの心の中にある世界遺産だろうか。日本政府も自前の候補選びに乗りだした

 昨年夏に登録されたのが「アンネの日記」である。ナチスの弾圧により、わずか15歳で命を落としたユダヤ人の少女が書き残した。隠れ家で暮らす厳しい生活の中でも希望は捨てず、思いをつづった。「私は生きたい。生きて世界中の人のために働きたい」

 戦後になって父の手で出版され、ホロコーストの悲劇を広く知らせた日記。中学生のころに初めて読んで、胸が詰まったのを思い出す。少女の願いは違う形で実った。「遺産」になったのも、たった1人の記憶を世界中の人々が共有したからだろう

 ヒロシマにも、重い記憶が被爆者の数だけある。だが65年の歳月とともに語る人は少なくなり、街を歩いてもツメ跡に気づかない。生きているうちにあの日のことを絵や手記にして残しておきたい…。そんな営みが脈々と続いている

 記憶とは、一人ひとりの心のひだに刻みつけられた記録なのだろう。やがては忘却の波間に沈む日が来るかもしれない。それでも、人類が忘れてはならぬ記憶もある。

 天風録 中国新聞 2010年3月5日
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2010年03月09日

昆布、カツオのだし汁と絶妙に響き合うハマグリのうまみ・・・ 天風録 八葉蓮華

 昆布、カツオのだし汁と絶妙に響き合うハマグリのうまみ。不思議なことに、椀(わん)の中の貝の身は火がほとんど通っていないかのようにプリプリだ。料理研究家の辻静雄さんは、関西の有名料亭に何度通ってもその理由が分からなかった

 秘密は単純なことだった。だしを取った貝は捨て、椀には新しい貝を入れて出していたのだ。海老沢泰久著「美味礼讃」にある三十数年前のエピソードだ。すでにそのころ国産のハマグリは貴重な食材だった

 きのうは桃の節句。ハマグリの吸い物とちらしずしで祝った家庭もあるだろう。今が旬だが、多くが中国などからの輸入物。国内では激減している。ところが、益田市の高津川の河口付近で再び採れ始めた。10年前から次第に増え、一昨年は12トンも。よみがえった清流の恵みといえよう

 箱眼鏡で海中をのぞき、棒の先に付いた金具で一個ずつ挟み採る。目当ては、わずかに見える吸管や潜った跡の砂のくぼみ。7センチ以下のサイズは海に戻す。ここだけの漁の流儀も資源回復に一役買っている

 みんなの宝にと、稚貝の調査に乗りだした市民たちの動きも頼もしい。辻さんが案内した米国の美食家に「コンソメより洗練度は上かも」と言わせた吸い物の主役。純和風を支える「食財」と呼びたくなる。

 天風録 中国新聞 2010年3月4日
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2010年03月08日

観光地がにぎわい「バカンス」回り回って国民全体を潤す・・・ 天風録 八葉蓮華

 日本列島を通る前線は、いろいろあるようだ。2月から北上を始めているのは「スギ花粉前線」。先だってはウグイスの声を聞いた。「初鳴き前線」は中国地方を通り過ぎるところだろうか

 とりわけ待たれるのは桜前線だが、その後もツツジ、田植え、紅葉などの前線が控える。ここに近く「連休前線」が加わるかもしれない。全国を五つぐらいのブロックに分けて、春は南の地域から、秋は北から順々に5連休に入っていくことを、国が考えている

 日本の旅行客は黄金週間と夏休みにどっと集中する。道路は込み、宿は満杯だ。ところが、後はがらがら。「100日の黒字、265日の赤字」といわれる。そこで休みを地域ごとにずらし、でこぼこをならしていけば…

 渋滞はなく、料金は安く、予約もしやすい。お客が増えれば、宿も臨時雇いの人を正社員にできるようになる。落ちたお金は業界だけでなく、回り回って国民全体を潤すようになる―というのが国の皮算用だ

 そうは言っても財布が、とつぶやく声もあろう。しかしフランスは80年前の世界恐慌から「バカンス法」によって立ち直ったという。人々が使った金で育ったのはサービス産業だった。出かけやすくなって観光地がにぎわい「景気前線」を刺激するとしたら言うことはない。

 天風録 中国新聞 2010年3月3日
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2010年03月07日

ソウルフード「てっぱん」広島風と関西風と二枚看板のお好み焼き・・・ 天風録 八葉蓮華

 差別の時代が長かったからか、アフリカ系米国人の音楽には魂の叫びがあるといわれる。そこから「ソウル(魂)ミュージック」が生まれた。最近は「ソウルフード」という言葉が日本でもはやっている

 元は、肉や野菜などの食材が乏しい中で工夫した昔からの料理を指す。転じて、各地に根付いた庶民の食べ物をそう呼ぶようになったようだ。原爆の焼け跡で、キャベツのほか魚粉や青のりなどのあり合わせ焼きとして生まれたお好み焼きは、広島のソウルフードといっていい

 うまくて安く、腹持ちもいい。今や首都圏でも、ほとんどの繁華街で「広島風」の看板を見る。ただ広島のお好み焼きが全国区となって、関西育ちの友人は機嫌が悪い。「お好み焼きとちゃう。広島焼きやろ」

 関西こそ本家、勝手にブランドを使うな、と言わんばかりだ。具を積み重ねる広島風。混ぜ合わせるのが関西風。「関西焼きと言えばいいじゃないか」というと、友人は「そんな食べ物はない」と色をなした

 秋に始まるNHKの連続テレビ小説は「てっぱん」に決まった。尾道出身のヒロインが、広島風と関西風と二枚看板のお好み焼き店を大阪で開業する物語という。「敵地」で広島風はどのように迎えられるのだろう。「魂」は衝突するのか、それとも…。

 天風録 中国新聞 2010年3月2日
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