2010年02月25日

「町並ひな祭」さまざまな雛が、笑みを含んでみやびな顔を見せる・・・ 天風録 八葉蓮華

 「ふるさとの蔵にわが雛(ひな)泣きをらむ」。明治生まれの鈴木真砂女の句だ。故郷を離れて迎える節句。幼いころ相手をしてくれた雛たちは、暗がりに寂しくしまい込まれている。胸に小さな痛みを感じたのだろうか

 福山市鞆の雛たちは、その点幸せだ。娘が巣立って行った後も、この季節になると、手入れをして並べてくれる人がいる。民家やお店などを舞台にした「町並ひな祭」。さまざまな雛が、笑みを含んでみやびな顔を見せる

 高齢化が進むこの町に華やぎを、という催しは7年前から。50カ所で始まり、今は100カ所に増えた。懐かしそうに見入る女性客はすっかり童心に帰ったようだ。鞆の春は、幼いころの自分に会う場所にもなっている

 実家に押し込んでいる雛飾りを思い出す。一向に手伝う気のない娘を横目に、夫婦で2時間がかりで飾り、片づけたものだ。その娘も「将来はこの人と」と彼氏を連れてくる年になった。「結婚は夢の続きやひな祭り」。帰って開いた歳時記で、夏目雅子さんの句に目が行ったのはそのせいだろう

 同じページにはこんな句もあった。「父やさしく母きびしくて雛祭」(右城暮石)。そういえば…と思い出すことは、一つ二つではない。鞆の町のさざ波のような余韻に、心が柔らかくなっていく。

 天風録 中国新聞 2010年2月20日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:36| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。