画材一式を、自転車に積み込む。天気のいい日は毎日のように、江東区木場の自宅からこぎ出す。浅草から神田あたりは、わが庭も同じ。この春取り壊される銀座の歌舞伎座は、向かいのビルの事務所に飛び込んで場所を借り、スケッチした
原点は、高校まで過ごした近所の町並みにある。元天領で今も白壁の建物が残る。人々は顔見知りで、歴史と生活感とが溶け合う町。古里の面影を東京で追っているのかもしれない。歌舞伎座を見てしのぶのは、大正期にできた町内の芝居小屋「翁(おきな)座」だ
都内の書店の雑誌コーナーでは、下町の散歩ガイドが並ぶ。昭和のにおいが漂う小さな風景を探す町歩きが、人気を呼んでいる。不況による「安近短」志向だけでもないようだ
バブルがはじけてからも次々に再開発スポットが話題になる。しかし取りすましたようにそそり立つ新しい風景だけでは、心のバランスが取れないかもしれない。浅草での長谷川さんの個展も盛況だった。「ご近所」目線の絵は東京の人の安定剤になっただろうか。
天風録 中国新聞 2010年1月30日
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