2010年02月05日

生きたいという叫び、孤独な魂は手を差し伸べられるのを待っている・・・ 天風録 八葉蓮華

 「おかげさまで助かりました」。救急病院で一命をとりとめた人はそう言うはずだ。ところがその青年医師は面食らうことが多かった。何人もの患者から「なぜ助けたんですか」と言われたからだ。自サツを図った人たちである

 学生のころ「シにたいと思う人は自サツしてもいい」と思っていた。世間の見方もそうだった。本人のためには、助けない方がいいのだろうか…。仕事の意義を見失う時があった。亡くなった自サツ研究の第一人者・大原健士郎さんだ

 「シにたい、は実は生きたいという叫びだった」と後になって知る。元患者を追跡調査すると、8割もが「助かってよかった」と答えたからだ。その屈折した心理に迫り、社会にはこう訴え続けた。「孤独な魂は手を差し伸べられるのを待っている」

 訴えは実を結ばなかったのだろうか。日本の自サツ者は昨年も3万人台で12年連続の高止まりだった。同じ年のサツ人の犠牲者は約千人。交通事故シは4千人台。けた違いのシの累積に、言葉を失う

 「僕の仕事はとことん聞き役になること」とも言っている。親身になって耳を傾ける。悩みのはけ口になる。それで孤独が和らぎ、自然治癒力が働くようになるという。あなたも周りの誰かの力になれるかもしれない、との遺言にも聞こえる。

 天風録 中国新聞 2010年1月31日
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2010年02月04日

「ご近所」昭和のにおいが漂う小さな風景を探す町歩きが、人気を呼んでいる・・・ 天風録 八葉蓮華

 東京は「近所」の巨大な集合体。この街を描き続けてきた府中市上下町出身の画家長谷川清さん(71)は、そう表現する。軒先の鉢植えや、面白い書体の看板…。繁華街や路地裏のたたずまいを写し、版画にしてきた

 画材一式を、自転車に積み込む。天気のいい日は毎日のように、江東区木場の自宅からこぎ出す。浅草から神田あたりは、わが庭も同じ。この春取り壊される銀座の歌舞伎座は、向かいのビルの事務所に飛び込んで場所を借り、スケッチした

 原点は、高校まで過ごした近所の町並みにある。元天領で今も白壁の建物が残る。人々は顔見知りで、歴史と生活感とが溶け合う町。古里の面影を東京で追っているのかもしれない。歌舞伎座を見てしのぶのは、大正期にできた町内の芝居小屋「翁(おきな)座」だ

 都内の書店の雑誌コーナーでは、下町の散歩ガイドが並ぶ。昭和のにおいが漂う小さな風景を探す町歩きが、人気を呼んでいる。不況による「安近短」志向だけでもないようだ

 バブルがはじけてからも次々に再開発スポットが話題になる。しかし取りすましたようにそそり立つ新しい風景だけでは、心のバランスが取れないかもしれない。浅草での長谷川さんの個展も盛況だった。「ご近所」目線の絵は東京の人の安定剤になっただろうか。

 天風録 中国新聞 2010年1月30日
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2010年02月03日

「精進」や「品格」「礼儀」などによって磨かれるはずの相撲道・・・ 天風録 八葉蓮華

 主人公のバッタが言う。「動かない岩でも押し続ければ強くなれる」。横綱引退に合わせて、貴乃花親方が書いた絵本の最後の場面だ。頂点を極める中でつかんだ人生訓を重ねているように見える

 持ち前のしなやかな体。脇目も振らない猛げいこ。そこに精神力が加わっての強さだった。師匠でもある父との不和や兄との絶縁騒ぎもあった。あれも、情を断ち切ってまでわが相撲道を貫こうとする決心の表れだったか。今度は日本相撲協会を動かそうとしている

 10人を選ぶ理事選。一門ごとに割り振るのが習わしのポストで、長く無投票が続いていた。待っていれば手に入るはずなのに、あえて11人目に手を挙げた。たった一人の反乱に「なに、蟷螂(とうろう=カマキリ)の斧(おの)」と冷ややかな目もあるようだが、いちずさにほだされた親方衆も何人かいる

 大麻汚染が鎮まったかと思えば、横綱の暴力ざた。新弟子の志望者も減っている。「精進」や「品格」「礼儀」などによって磨かれるはずの相撲道をふさぐ大岩や小岩。自ら取り除こうということなのだろうか

 先輩が動くのを待っておれないという親方のはやる気持ちが、分からなくもない。バッタにそっくりのハンミョウは、歩く人の先へ先へと飛ぶ。別名「道おしえ」の役目を、親方は果たせるかどうか。

 天風録 中国新聞 2010年1月29日
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2010年02月01日

「植物工場」未来型のエコ農業で、狭い国土で自給率も上がる・・・ 天風録 八葉蓮華

 一年中食べていたホウレンソウ。ところがおじいちゃんが裏庭でつくったのを味わったら、冬にしか食べられなくなった。「あまりにも/おいしかったから/季節に きたえられた ふかみどり」。津崎優子さんの詩だ

  こちらの味はどうだろう。ガラス越しに見るのは、広島市の地下街に今月いっぱい展示されている「植物工場」だ。太陽の光も届かず、土もない。それでもトマトは青い実を付け始め、イチゴは甘そうに熟している

 温度や養分などが完全にコントロールされている。太陽に代わるのは発光ダイオード(LED)電球だ。曇った日の日差しより弱いのに、植物が光合成しやすい波長にぴたりと合っているそうだ。LEDと野菜の相性はなかなか、とみえる

 外でいくら長雨や日照りが続いても、青々とした野菜ができる。虫がつかないから農薬も要らない。未来型のエコ農業で、これなら狭い国土で自給率も上がる…と、国も一生懸命に後押ししようとしている

 気温が0度近くまで下がると、葉に含まれる水分が凍らないように、糖分を増やす。それが冬野菜の自衛術だ。おじいちゃんのホウレンソウがおいしいのはそのためらしい。科学の光と、戸外の低温と。それぞれがもたらす味を比べる時代がくるのだろうか。

 天風録 中国新聞 2010年1月27日
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