2010年02月28日

35年ぶりの快挙「キャタピラー」もんぺ姿で元兵士の妻を演じた寺島さん・・・ 天風録 八葉蓮華

 もんぺは、戦争中に国が女性に押しつけた質素なズボンだ。歌手の淡谷のり子さんが絶対にはかず、当局ににらまれたというエピソードも伝わる。「もんぺが似合うから」は、とても口説き文句にはなりそうにない

 あえてそう言ってプロポーズしたのが、独立プロの若松孝二監督だ。受けたのは寺島しのぶさん。出来上がった「キャタピラー」はベルリン国際映画祭に招待され、もんぺ姿で元兵士の妻を演じた寺島さんは、最優秀女優賞に輝いた。日本人で35年ぶりの快挙だ

 タイトルは「芋虫」という意味。戦場で両手足を失い、耳も聞こえなくなった元兵士が物言わぬ主役である。江戸川乱歩の原作を読むと「風呂敷に包まれたような物体」とやりとりする妻の葛藤(かっとう)が描かれる

 「台本を読んで電気が走った」という女優。「今撮りたい気持ちが冷めないうちに」と、金策を後回しにしてメガホンをとった監督。低予算によるわずか12日間の撮影は、双方をスパークさせるに十分だったに違いない

 およそもんぺとは縁のない華やかな歌舞伎界に生まれ育った寺島さん。俳優になってからは、己をむき出しにしてぶつかるような熱演で知られる。映画の公開は8月15日。今度は見る側が、体当たりで現される「戦争」を受け止める番だろう。

 天風録 中国新聞 2010年2月23日
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2010年02月27日

広島の街をくまなく回り、変わっていく様子、街の息づかい・・・ 天風録 八葉蓮華

 黒縁の眼鏡をかけた小柄なおじいちゃん。毎日のようにカメラを持って自転車で出かける姿は、町の名物だった。広島の街をくまなく回り、変わっていく様子を撮影し続けた。おととし96歳で亡くなった大段徳市さんだ

 遺族から市に託されたネガや紙焼きは、40万点にものぼるという。巡回展は、中区から始まった。川沿いのバラックや、にぎわいを取り戻した商店街。ほかを押しのけるようなふぞろいな看板に、時代のエネルギーを見る

 終戦で大陸から戻ってみたら、焼け野原だった。ぼつぼつと復興を始めた街は、高度成長に乗ってどんどん変わっていく。そのプロセスを撮らずにはいられなかったのだろう。おかげで1950年代半ばからの街の息づかいをしのぶことができる

 没後29年になる民俗学者宮本常一も、撮り残した10万点の写真によってあらためて評価されている。こちらは全国に足を延ばした。今では消えた海や山の暮らしが、永久に記録されることになった。古里の周防大島で保存され、各地で展示もされている

 二人とも写真には素人。構図には凝らず、メモを残すように目にした風景を写している。一枚一枚を見ると平凡だ。しかし積み重なって一定の量となった時、時代の質感を伝えるものになるのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年2月22日
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2010年02月26日

隠しておきたい本音、国や地域を背負うリーダー・・・ 天風録 八葉蓮華

 顔色をうかがうとか、顔合わせという言い方がある。人が差し向かいとなることは、ネットやメール全盛の時代となった今でも、大きな意味があるようだ

 国や地域を背負うリーダー同士ともなると、一段とその色合いが濃くなる。チベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世が米国を訪れ、オバマ大統領と歓談した。自由と民主主義の国の元首に会う。それだけで、少数民族の人権に配慮を欠く中国への強烈なメッセージになる

 面白くないのは顔をつぶされた格好の中国だ。「内政干渉だ」と色をなした。オバマ大統領が訪中する際には、いったん日程に上がったダライ・ラマとの会談を見送った経緯もある。それだけに厳しい形相を見せた

 もっとも腹の内は別で、「ポーズではないか」という見方もある。中国にとっては輸出の一番の得意先で、少し手放したが米国債を日本に次いで大量に抱える。米ネット検索大手との検閲問題などもくすぶり、これ以上こじれては―という本音も見え隠れする

 沖縄県を訪れ、知事と顔合わせした官房長官の場合はどうだろう。名護市長選後の発言でそっぽを向いたウチナンチューが、いまさらの釈明で納得顔に変わるだろうか。隠しておきたい政治家の本音が、顔面に透けて見えているのかもしれない。

 天風録 中国新聞 2010年2月21日
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2010年02月25日

「町並ひな祭」さまざまな雛が、笑みを含んでみやびな顔を見せる・・・ 天風録 八葉蓮華

 「ふるさとの蔵にわが雛(ひな)泣きをらむ」。明治生まれの鈴木真砂女の句だ。故郷を離れて迎える節句。幼いころ相手をしてくれた雛たちは、暗がりに寂しくしまい込まれている。胸に小さな痛みを感じたのだろうか

 福山市鞆の雛たちは、その点幸せだ。娘が巣立って行った後も、この季節になると、手入れをして並べてくれる人がいる。民家やお店などを舞台にした「町並ひな祭」。さまざまな雛が、笑みを含んでみやびな顔を見せる

 高齢化が進むこの町に華やぎを、という催しは7年前から。50カ所で始まり、今は100カ所に増えた。懐かしそうに見入る女性客はすっかり童心に帰ったようだ。鞆の春は、幼いころの自分に会う場所にもなっている

 実家に押し込んでいる雛飾りを思い出す。一向に手伝う気のない娘を横目に、夫婦で2時間がかりで飾り、片づけたものだ。その娘も「将来はこの人と」と彼氏を連れてくる年になった。「結婚は夢の続きやひな祭り」。帰って開いた歳時記で、夏目雅子さんの句に目が行ったのはそのせいだろう

 同じページにはこんな句もあった。「父やさしく母きびしくて雛祭」(右城暮石)。そういえば…と思い出すことは、一つ二つではない。鞆の町のさざ波のような余韻に、心が柔らかくなっていく。

 天風録 中国新聞 2010年2月20日
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2010年02月24日

「藤田まこと」記憶に刻み込まれている演じた主役の名前・・・ 天風録 八葉蓮華

 奉行所では仕事がはかどらず、上役にしかられてばかり。帰れば妻の尻に敷かれた婿養子で、姑(しゅうとめ)にもいびられ通しだ。亡くなった藤田まことさんが長年演じた「必サツ」シリーズの中村主水(もんど)。ついわが身に引き寄せたのは、何かとストレスがたまっていたころだ

 週末の居酒屋での憂さ晴らしでも、番組のクライマックスになると店内のテレビが気になった。転調したBGMに乗り、最後に主水が仕置きに向かう。庶民を苦しめた悪の権化をバッサリ。すごみのある裏の顔がたまらなかった

 中高校時代に夢中になったのが「てなもんや三度笠」。「当たり前田のクラッカー」は不滅のコピーだろう。白木みのるさんとの絶妙のコンビ。沓掛(くつかけ)ならぬあんかけの時次郎の高笑いは、当時の元気な日本の勢いを映していた

 「はぐれ刑事純情派」の安さんと「京都サツ人案内」の音やんはミステリー好きの中高年の心をつかむ。どちらも妻に先立たれ、男手で娘を養ってきた。優しさの陰に寂しさがふっと漂い、時におとぼけも。容疑者に厳しく迫りながら、ほろりとする一言も漏らす

 あの際立った顔は、どんな役であっても「藤田まこと」だった。だが記憶に刻み込まれているのは、その名よりも演じた主役の名前の方だ。なりきっていた役者だった。

 天風録 中国新聞 2010年2月19日
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2010年02月21日

内助の功も見逃せない、ものづくりへのこだわりを強みに変える・・・ 天風録 八葉蓮華

 表彰台に上がった日本人選手の笑みを見ると、やはり心が浮き立つ。しかも2人一緒に。スピードスケートの男子500メートルで長島圭一郎選手が銀、加藤条治選手が銅メダルに輝いた。お家芸で力を出し、いよいよバンクーバー五輪もたけなわである

 スピードスケートはコーナーの回り方が勝敗の鍵を握るという。2人の場合、曲がりながらむしろ加速しているように見えた。本人の力に加え、内助の功も見逃せない。所属する日本電産サンキョーの技術陣である

 精密機械業が盛んな長野県下諏訪町。同社は、三協精機時代のオルゴールに始まり、今は電子部品関連まで手がける。その精密加工の技が、選手一人一人に合ったスケート靴の仕上げに役立っている

 ブレードと呼ばれる刃の加工には特に神経を使う。カーブから抜け出る時に氷を的確につかむようミクロン単位で刃先を削る。特殊な加工機械で半日がかり。感触を氷上で確かめてもらい、OKが出るまで削り直す。競技の直前に徹夜で仕上げることもあるというから驚く

 企業のグローバル化が進み、日本製品の品質神話が揺らいでいる。そんな中、世界トップレベルの技と、選手の求めに即応する力が支えた二つのメダル。ものづくりへのこだわりを強みに変える方程式が健在だ。

 天風録 中国新聞 2010年2月17日
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2010年02月20日

ふりかけ「お助け力」切り詰めざるを得ない、食卓、弁当・・・ 天風録 八葉蓮華

 考えてみれば不思議な食べ物である。魚や肉、野菜を使っているがおかずとはいえない。ご飯に味を付けるが、単なる調味料でもない。白米に欠けた栄養素を補う意味ではサプリメントのようでも

 ふりかけである。グルメで知られる漫画家の東海林さだおさんが書いている。「ふりかけたとたん、一切の調理を経ずして瞬間的に色とりどりの味付けゴハンに」。侮れない「変化(へんげ)力」だ。最近はご当地ものも増えている。北海道には「じゃがバター味」、宇都宮には「ギョーザ味」。ここまで世界を広げているとは

 そんなふりかけの源流の一つが広島にある、という。地元の食品会社が出した冊子「ふりかけの世界」によると、100年近くさかのぼる大正時代のこと。漬物やつくだ煮をつくっていた創業者のもとに、軍から相談が持ち込まれた

 持ち運びが簡単で、保存が利き、栄養価の高い兵隊食はないか―。考えられたのが、魚粉をしょうゆで味付けしたふりかけである。基本の材料はサバやイワシ。瀬戸内の歴史と風土に根差した味だったわけだ

 このところ、ふりかけの売れ行きが伸びているという。景気が悪くなり、切り詰めざるを得ない食費。食卓や、手作り弁当のおかずが寂しいこともあるだろう。ふりかけの「お助け力」が頼もしい。

 天風録 中国新聞 2010年2月16日
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2010年02月19日

「雪のこぶ」大舞台で着実に前へ進んできたこと自体、素晴らしい・・・ 天風録 八葉蓮華

 今回こそメダルを、との期待を一身に背負って五輪に臨んだモーグルの上村愛子選手。あと一歩というところで及ばなかった。インタビューでは、トレードマークの笑顔でなく、涙を見せた

 モーグルの語源は「雪のこぶ」を指すノルウェー語。なるほど、こぶの連なる急斜面を滑り降りる競技にふさわしい名前かもしれない。マイナーだったスポーツを日本でも身近にした選手の一人が上村さんだ

 負けず嫌いで知られる。生まれつき心臓に病気があり、2歳の時に転地療養もかねて雪深い長野に家族で移った。「おかげでスキー選手になったのかな」。そう著書で振り返っている。逆境をバネにして力強さを身に付けてきた

 モーグルとの出合いも、自ら望んだわけではない。いじめに耐えかねてスキー部をやめた中学生のころ、母の勧めで単身カナダへ。心機一転、スキー場に通い詰めたものの、板を盗まれる。代わりに履いてみたのがモーグル用の板だったという

 五輪初挑戦だった長野の7位から、一つずつ順位を上げてきた。「なんで一段一段なんだろう」と悔しがる気持ちもよく分かる。だが大舞台で着実に前へ進んできたこと自体、素晴らしい。人生の「こぶ」にも攻めの姿勢で立ち向かう。だからこそ得られた誇れる「勲章」だろう。

 天風録 中国新聞 2010年2月15日
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2010年02月18日

「見巧者」磨きがいのある原石だらけの公募展・・・ 天風録 八葉蓮華

 歌舞伎の世界に、見巧者(みごうしゃ)という言葉がある。華のある役者かどうか、しぐさ一つで見極める、芝居の通のことだ。時には「よっ、日本一」の掛け声で盛り上げる。役者にとっては舞台づくりの引き立て役といえる

 広島市内では障ガイ者アートの世界にも、そんな見巧者が出てきた。知的障ガイのある人たちの絵やオブジェから、新たな魅力を演出する市立大芸術学部の教員たちである。作品をあしらった商品づくり。何とか売り物になる「役者」に磨き上げよう、という試みだ

 第1弾の柄タイツは、ピンクや緑の屋根瓦が連なるモザイク模様。「えーっ、ありえない色使い」「欲しい」。街頭に試作品を置いたら、斬新な絵柄に若い女性が飛びついたという。目利きは、思わぬ所にいるものだ

 磨きがいのある原石だらけの公募展は10年目。ことしの会場は市まちづくり市民交流プラザだけではない。初めて街角にも原画を持ち出した。会場近くの骨董(こっとう)店や雑貨店の店先で、通りがかりの買い物客がほおを緩める。頼もしい見巧者づくりになることだろう

 より抜きの新作91点は、次の商品としてやがてデビューできそうな力作ぞろいだ。丘の上に月が二つ並ぶ、幻想的な油絵もある。どの作品が身の回りの何に変わればいいか。見る側の眼力も試される。

 天風録 中国新聞 2010年2月14日
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2010年02月17日

地縁や血縁が薄れ「無縁社会」つながりの糸の切れた現代を象徴する・・・ 天風録 八葉蓮華

 竹やヒノキなどを組んだ高さ20メートルのご神体が燃え上がり、引き倒された。火の粉がはじけ、白い煙が辺りを包む。縁起物のお飾りを取るために、人々が群がる。柳井市に伝わる阿月神明祭。ことしも雨交じりの中で行われた

 国の重要無形民俗文化財に、昨年指定された。小早川隆景の戦勝祈願が起こり。毛利氏の移封などに伴ってこの地に伝わったのは、江戸初期の1644年とも言われる。とんどとも合わさった行事。長年引き継がれているせいか、初めて見ても懐かしい気がする

 「無縁社会」という言葉をNHKテレビで聞く。誰にも知られず、引き取り手のないまま亡くなるケースが増えている。地縁や血縁が薄れ、会社の縁も退職すれば失われる。「無縁シ」はつながりの糸の切れた現代を象徴する

 「おれと同じ境遇だ」「どうせシぬ時は一人」…。インターネット上の掲示板には、番組を見た人からの書き込みが相次いだ。自棄的な言い回しの裏にあるのは、せめてネットで思いを受け止めてほしい、との気持ちだろうか

 ご神体は倒された後もしばらく燃え続ける。周りには人の輪。久しぶりに会った人同士がにぎやかだ。自分を知ってくれている人のいる場の温かさ。「有縁社会」の残り火に当たりながら、しばし立ち去りがたかった。

 天風録 中国新聞 2010年2月13日
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2010年02月16日

ネバーアゲイン・キャンペーン(NAC)第10期大使の募集・・・ 天風録 八葉蓮華

 ライブでヒロシマを歌い続ける女性。かつては引っ込み思案の泣き虫だった。自分を変える力を見いだしたのは、独りで米アラスカを平和行脚してから、という

 こんなチェンジの物語を紡いだネバーアゲイン・キャンペーン(NAC)。若者らが一年近く聞き取った被爆者の思いと、日本文化を米国に伝える民間の平和大使だ。スタート間もない25年前、周南市から高校生を送り出したのを思い出す。行く前「自分に何が伝えられるか」と悩んでいた。それが、少年犯罪が増える米国の荒廃を案じるほどになった

 その第10期大使の募集が、今月始まった。ブッシュ政権のテロ対策で、長期ビザが取りにくくなり2007年から中断。再開のきっかけは半年余り前、米側の大学教授からの投げかけだった

 オバマ政権になって米国は核軍縮にかじを切った。ここは何かすべきでは、というのだ。元大使たちも熱くなる。意見交換の場はメール。「大使の募集を」。気持ちはあっても生活がある。出産したばかりの女性もいる。中心になれる人がいない。激論が続いた

 決め手は元大使たちのチェンジ力だった。資料集め、ホームページ作り、面接会場手配など仕事を小分けにし、支え役に手を挙げた。ヒロシマからの新大使の名乗りも待ちたい。

 天風録 中国新聞 2010年2月12日
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2010年02月15日

地べたからの目線「晩年」人を繕っていた属性が剥がれる。一瞬・・・ 天風録 八葉蓮華

 作家の立松和平さんは、身の回りで亡くなった人びとのことを季刊誌に書き継いできた。その短編集「晩年」の後記にある。「人はシぬ時、その人を繕っていた属性が剥(は)がれる。一瞬、ありありとその人自身として存在することがある。短篇(たんぺん)小説の生起する瞬間である」

 学生運動の元リーダーや無頼派の先輩作家、沖縄のサトウキビ農家…。惜別の辞を送ってきた人たちの列に、自らが加わった。62歳は早すぎたが、日本の隅々まで歩き、貪(どん)欲(よく)なまでにテーマを広げて書き続けた。リュック姿が似合い、テレビでのとつとつとした語りも人びとの心をとらえた

 貫いたのは地べたからの目線だろう。映画化された初期の小説「遠雷」は、都市化する農村でトマトをつくる若者を主人公にした。土地を売り大金を手にした農家の悲喜劇。ムラの壊れる音が聞こえてくるようだった

 全共闘世代の作家として連合赤軍事件に迫ったのが「光の雨」。盗作騒動を起こして謝罪し、後に全面改稿して発表する。この苦い体験を経て、宗教的な救済へとテーマが広がったようだ

 自然を愛し、源流から下る川の旅を好んだ。自らも岩をかみ、幾筋もの流れをのみ込んで彼岸へ旅立ったように見える。その一生は、短編には到底収まりきれぬほどの厚みがある。

 天風録 中国新聞 2010年2月11日
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2010年02月14日

「カープの星」カープを通じて親や子、孫の会話が弾んだら・・・ 天風録 八葉蓮華

 60年というと人間でいえば還暦。さまざまなドラマが積み重なるに十分な歳月である。広島カープもことし、その節目を迎えた。振り返って、野球ドラマを盛り上げてくれた代々のスター選手を選ぶ「カープの星」記念投票が進んでいる

 草創期の1950年代から10年刻みで10人ずつ挙げた候補者の中から、それぞれ1人を選ぶ仕組み。「小さな大投手」や「炎のストッパー」、6度のリーグ優勝を支えた懐かしい戦士の面々が並んでいる

 若い人は、往時のヒーローについてはよく知らないだろう。実はそこに募集の一つの狙いがあったそうだ。60年といえば、親子3代にわたる長さ。「おじいちゃんが若いころにはなあ…」と、カープを通じて親や子、孫の会話が弾んだら、というのである

 投票で選ばれた「星」たちの肖像は銅板レリーフになる。引き受けるのは親子3代で経営する広島市の金型工場だ。原爆で全壊した。祖父が戦後立ち上げ、父が継いだ。その歩みはカープの苦楽とも重なっただろう。新しいレリーフの仕事は、20代の孫に任される

 肖像は、マツダスタジアムに入る歩道橋の欄干を飾る。年代順にお披露目していくという。キャンプで汗を流している若い選手たち。次の10年に向かう未来の「星」たちの励みにもなればいい。

 天風録 中国新聞 2010年2月10日
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2010年02月12日

紅白の梅がほころべば、やがて真っ白なモクレンやコブシ、桜も・・・ 天風録 八葉蓮華

 見上げた枝の先で、ピンクの小さな梅のつぼみが膨らみ始めていた。小雪が舞った広島市の平和大通り。立春を過ぎたとはいえ、きのうはコートのえりを立てる寒さだった。♪春は名のみの 風の寒さや…。「早春賦」の一節を思い出す

 この時季ならではの、ひそやかな楽しみもある。葉を落とした木々の素顔に出合えることだ。ほうきを逆さに立てたようなケヤキ、円すい形のシルエットが美しいメタセコイア、枯れ葉を付けたままのカシワ…。常緑樹と織りなすコントラストも面白い

 平和大通りに根付く樹木は、10メートルを超す高木だけで約90種の2千本。市民グループが先ごろ作ったガイドで知った。昭和30年代の「供木運動」で、国内外から提供された木も多い。平和と街の再生を願った人々の心が息づく「街中の植物園」である

 したたるような新緑、真夏には木陰をつくり、やがて深紅や黄に色づいて…。四季の移ろいを肌で感じさせてくれるだけではない。平和大通りの木々は夏場に都心の気温を下げ、風の通り道にもなる。デルタを貫く「緑の回廊」だろう

 ほおを刺す風は、まだ冬の冷たさだ。紅白の梅がほころべば、やがて真っ白なモクレンやコブシ、桜も。凛(りん)とした寒だからこそ、命を躍動させる春の訪れが余計に待ち遠しい。

 天風録 中国新聞 2010年2月7日
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2010年02月11日

3D元年「アバター」飛んでくるものがつかめそうなほどリアル・・・ 天風録 八葉蓮華

 ぼやけたスクリーン。しかし渡された眼鏡をかけて見ると、映像がくっきり浮かび上がった。世界でヒットしている映画「アバター」。中に吸い込まれそうに感じる。ハリウッド発の3D(3次元)映像だ

 自然豊かな星で暮らす巨人たち。大きな鳥に乗って空を自在に飛び、森の中で精霊と会う。飛んでくるものがつかめそうなほどリアルだ。「タイタニック」のキャメロン監督だけに、最新技術を生かしたシナリオの妙もあるのだろう

 左右の目でそれぞれ、少しずれた映像をキャッチする。それが脳で一つになることで奥行きを感じ、立体に見える。理屈は簡単だが、なかなか定着しなかった。そこに映画の大ヒット。今や「3D元年」とされ、対応型テレビも春に売り出される。専用の眼鏡が必需品となる日が来るかもしれない

 ぼやけたまま見えにくいのが、民主党幹事長の政治資金問題だ。右目に、ヤミ献金したとするゼネコン側。左目に、否定する本人や秘書。検察は二つの映像を立体に結ぼうとしたが、シナリオ通りにはいかなかった

 国民もまた一方の目で強引とも思える捜査を、もう一方の目でさっさと一件落着させたい民主党を眺めている。カネの問題でつまずかないような政治が、眼鏡なしでくっきりと見えてくるのはいつの日か。

 天風録 中国新聞 2010年2月6日
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2010年02月10日

「憎まれ役」として相撲人気を盛り上げ「品格」で引退に寄り切られ・・・ 天風録 八葉蓮華

 白地に「雪冤(せつえん)成る」の4文字。横浜地裁の前で掲げられた。ぬれぎぬを晴らすという意味だ。「雪(すす)ぐ」の文字に、亡き父らが負わされた罪を真っ白にぬぐい去りたい、との原告らの強い思いを感じる

 宴会で撮った写真が「謀議の証拠」。特高警察のでっち上げで60人以上が逮捕され、4人が獄シした。言論弾圧で知られる「横浜事件」だ。遺族は戦後になって、2度も再審で訴えたが「無実」の判決は得られなかった

 当時の法律は廃止されているから、有罪か無罪か判断しない、との理屈だった。これでは誰が聞いても裁判所の逃げだろう。今回やっと司法が自らにけじめをつけた。遺族の心に根雪のようにわだかまっていた不信感を解かす一足早い春風になればいい

 相撲界もきのう、一つのけじめをつけた。横綱の朝青龍関の引退だ。巡業のずる休みをはじめとした品格に欠けるさまざまな行い。今度は、場所中に泥酔して一般人への暴力ざたが伝えられた。いくら何でも、という世間の声に寄り切られた

 実力は抜群だった。「憎まれ役」として相撲人気を盛り上げた。土俵を去るとなると、大きな体で時折見せたちゃめっ気が懐かしい。一つの世界で頂点にまで達した人である。まだ29歳。この先、汚名を雪ぐチャンスはあるに違いない。

 天風録 中国新聞 2010年2月5日
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2010年02月09日

レベルの低い「ヤジ」ユーモアや機知に富んだものは、難しい・・・ 天風録 八葉蓮華

 「政治とカネ」が焦点の一つになっている国会論戦。実母から月額1500万円もの資金提供を受けていた鳩山由紀夫首相に、ヤジが飛んだ。「どら息子」。なかなか皮肉が効いた言葉に、思わず笑ってしまった

 「ヤジは議会の華」と言われる。ユーモアや機知に富んだものは、難しい言葉のやりとりで緊張している議場を和ませる。だらけていた審議が一気に盛り上がることもある。議会政治の「潤滑油」や「香辛料」といってもいいだろう

 半面、品のないヤジは単なる騒音や審議妨害になってしまう。議会用語では「不規則発言」。最近は大臣に向かって「ばか」とか「うそつけ」など、レベルの低い不規則発言が目立つ。亀井静香金融担当相が、野党側のヤジに「うるさい」と言い返して、官房長官が陳謝する始末

 これまでも、ヤジに切れた議員が壇上からコップの水をぶっかけたことも。時には不規則発言が政局を大きく揺るがしたこともあった。1953(昭和28)年、当時の吉田茂首相は野党の挑発に乗って、つい応酬してしまった。いわゆる「バカヤロー解散」である

 ヤジは奨励されるものではない。しかし、寸鉄人を刺す。気の利いた一言は思わず笑いを誘う。効果的でタイミングのよい議会の華なら、大歓迎である。

 天風録 中国新聞 2010年2月4日
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2010年02月08日

奢ることなく自分で引き締めなければ、足をすくわれる・・・ 天風録 八葉蓮華

 しくじっても最初は、大目に見てもらえる。しかし「またか」となると…。トヨタが、米国で販売した車230万台のリコールを発表した。踏み込んだアクセルが戻りにくくなる恐れがある。無償で修理するという

 昨秋は、アクセルペダルがマットに引っかかる不具合が見つかった。立て続けのトラブルに米メディアは「対応が後手」と厳しい。議会も「安全対策はどうなっているのか」と公聴会で追及しようとしている

 トヨタが生産台数で米GMを抜いたのは一昨年だ。世界の横綱になってからの思わぬ「取りこぼし」。油断がなかったかどうか。GMなどは早速、乗り換えたら千ドル(9万円)値引きしますとのキャンペーンで、攻勢をかけている

 「またか」どころではないのが、本家本元の横綱の不始末だ。今度は初場所の最中に遅くまで飲んでの暴力ざたが伝えられている。相手は鼻を骨折。ブレーキがかからず、暴走が止まらなかったらしい

 ここまでくると「横綱のリコール(解職請求)を」と日本相撲協会に叫びたい人もいよう。優勝歴32回の大鵬幸喜さんが「一流とは何か」に書いている。「奢(おご)ることなく自分で引き締めなければだめだ」。その気持ちを忘れたら、いつか足をすくわれる。自動車業界も、角界も同じに違いない。

 天風録 中国新聞 2010年2月3日
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2010年02月07日

もつれた感情を解きほぐすまでに時間がかかるに違いない・・・ 天風録 八葉蓮華

 すらりとした中国人の名刺には「歩平」とあった。大久野島で作られていたドクガス弾の研究者がいる。そう聞いて、旧日本軍のつめ跡をアジア各地にたどる連載取材で訪ねた

 にこやかな顔が、ある質問で曇った。日中は歴史教科書を共有できるだろうかと聞いた時だ。「残念だが、機は熟していない。罪を認めない民族が相手なら…」。あれからほぼ20年。重鎮となった歩さんが座長を務める両国共同の歴史報告書がまとまった

 現地紙によれば「南京虐サツを日本側が認めた。犠牲者数の食い違いより、そのことが重い」と歩さんは説いているという。連載などが縁で日本を訪れ、ドクガス障ガイ者たちに会った。加ガイ者でもあった障ガイ者の「認罪」の姿を思い出しているのかもしれない

 こんなことわざが中国にある。「貸し借りの勘定をはっきりできる友達は長続きする」。お金のやりとりならまだしも、膨大なシ者を出した戦争の清算だ。まずもつれた感情を解きほぐすまでに時間がかかるに違いない

 ドイツとフランスは何世紀もの敵対心を解き、それが欧州統合の礎となった。糸口になったのは、ナチスの断罪など歴史観のすり合わせ。日中も、清算の機運が熟して初めて「東アジア共同体」という長続きする関係が見えてくるのだろう。

 天風録 中国新聞 2010年2月2日
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2010年02月06日

気力次第で道は開ける、一つの目標に向かって、まっしぐらに・・・ 天風録 八葉蓮華

 70歳までに描いた絵は「取るに足るものなし」。今年で生誕250年になる浮世絵師、葛飾北斎は言い切っている。73歳になってようやく、生き物や草木のつくりを多少は知ることができた、とも

 なるほど、富士山をテーマにした代表作「冨嶽三十六景」の出版は70歳すぎ。90年の生涯に3万点余りの作品を手掛けた。大半が、老いの坂に差しかかってからのものだ。あっさり引退していれば、あの迫力ある赤富士も世に出ることはなかった

 北斎が生きた江戸のころ、平均寿命は50歳に届かなかったとされる。今や、70歳以上の人は国民の6人に1人に当たる2千万人を超す。この20年間で2倍に増えた。もはや「古来まれ」とは誰も思うまい

 その70歳で門前払いをしたのが自民党である。夏に迫った参院選の比例代表の候補選び。70、73、74歳の3人を公認しないと決めた。いずれも衆院選などの落選組だ。「昔の名前」が出るのでは、いかにも党再生のイメージにそぐわないと見たようだ

 86歳になればますます腕が上がり90歳で奥義を窮める。北斎の文章はそう続く。一つの目標に向かって、まっしぐらにぶつかっていく。詰まるところ、その気力次第で道は開けるというのだろう。政治の世界は、いささか様子が違うのかもしれないが。

 天風録 中国新聞 2010年2月1日
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