2010年01月28日

華やかでありながら、見たくないものはぼかして映しだしてくれる鏡・・・ 天風録 八葉蓮華

 金箔(きんぱく)は、そのままでみやびな輝きを放つ。絵の具を乗せると、さらにその色までも引き立てる。また見る角度によっては、ぼんやりした鏡にもなるようだ。ふくやま美術館で開かれている山本容子さんの作品展で、そんなことを考えた

 金箔に刷られた銅版画が24点。「源氏物語」などに登場する平安時代の姫君をイメージしている。金色をバックに映えるのは、赤や青を散らした衣装。ただ顔だけは、濃いまゆや意志の強そうな唇、と時代離れしている

 山本さんによると、姫君は自画像であり分身であるという。見る人も、作品をのぞき込むとそこに自分の顔が映り込む仕掛けだ。過去と現在。あなたと私。虚構と現実。重なり合うのが金箔の上である

 ただ1万分の1ミリという薄さ。台紙に張り付けて圧力を加え過ぎると、はがれてしまう。そんな厄介な素材を「鏡」として使いこなすまでには、刷り職人と一緒になっての研究があったそうだ

 鏡は、日本の神話では霊なる力を持っていた。西洋の物語では「最も美しいのは白雪姫」と教えてくれた。もっとも私たちの周りにあるのは、髪の薄さやしわまでリアルに映す鏡。華やかでありながら、見たくないものはぼかして映しだしてくれる金箔版画は、ほっとさせてくれる鏡かもしれない。

 天風録 中国新聞 2010年1月23日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:47| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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