金箔に刷られた銅版画が24点。「源氏物語」などに登場する平安時代の姫君をイメージしている。金色をバックに映えるのは、赤や青を散らした衣装。ただ顔だけは、濃いまゆや意志の強そうな唇、と時代離れしている
山本さんによると、姫君は自画像であり分身であるという。見る人も、作品をのぞき込むとそこに自分の顔が映り込む仕掛けだ。過去と現在。あなたと私。虚構と現実。重なり合うのが金箔の上である
ただ1万分の1ミリという薄さ。台紙に張り付けて圧力を加え過ぎると、はがれてしまう。そんな厄介な素材を「鏡」として使いこなすまでには、刷り職人と一緒になっての研究があったそうだ
鏡は、日本の神話では霊なる力を持っていた。西洋の物語では「最も美しいのは白雪姫」と教えてくれた。もっとも私たちの周りにあるのは、髪の薄さやしわまでリアルに映す鏡。華やかでありながら、見たくないものはぼかして映しだしてくれる金箔版画は、ほっとさせてくれる鏡かもしれない。
天風録 中国新聞 2010年1月23日
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