2010年01月06日

「一年の計」何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し・・・ 天風録 八葉蓮華

 空き地にたこが揚がるお正月。小さいころの思い出に触れながら、作家の井上靖が年頭によぎる思いを書いている。「何かを揚げなければならぬ。凧(たこ)に似たものを」(「元日のこと」)。烈風を味方にして高みを目指す、ということだろうか

 いつかはと思いつつ先延ばしにしてきた志。自分に言い訳しながら後回しにしてきたこと。それを見える形にして、今年こそはやるぞ、と大空に掲げてみる。名をなしてなお、風を背に己を鼓舞しようとする68歳の心意気が伝わる

 とてもそこまでのエネルギーは…とつぶやく人もいよう。烈風にもまれて消耗した人には、むしろ石川啄木の知られた一首が胸に響くだろうか。「何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し」

 20代半ばの啄木は、苦しい生活だった。病魔が体をむしばみ始め、せっかく得た仕事も休みがちになっていた。不如意の日々。それでも正月の穏やかさに喜びを感じる。ちょっとしたことに希望を見いだそうとする詩人の心の在りかを見る

 年が改まる。それだけで心が新たになる。気分をリセットして「一年の計」を考える日だろう。猛(たけ)き虎のように目標の一点に向かって走ろうと念じる人もいよう。しかし時には、足元の小さな幸せを慈しむ歩き方も思い出してみたい。

 天風録 中国新聞 2010年1月1日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:40| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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