2010年01月09日

「変化への挑戦」新たな環境に対応したり、今あるものを生かしたり・・・ 天風録 八葉蓮華

 工場が稼働してほしいと念じたり、仕事の順調な受注を祈ったり。神社に下げられた絵馬には、景気回復に託す切ない文面がいつになく目に付く。その残像がまだ消えやらぬまま世の中が動き始めた

 下関の南風泊市場では伝統の初競り。威勢の良い掛け声とは裏腹に、トラフグの最高値は昨年を4割余りも下回った。まん延するデフレ気分がご祝儀相場に冷水を浴びせたのだろうか。寅(とら)年にあやかる淡い期待もしぼみがちだ

 東証は、スピーディーに注文をさばく新売買システムを導入した。大発会の株価は堅調なスタート。日本航空株も政府が融資枠拡大を発表して急反発した。けれど財政のてこ入れがあってようやくの低空飛行だ。二番底の不安の中であえぐ日本経済の負の縮図を見る思いもする

 地元トップの訓示には「変化への挑戦」といった言葉が目立った。厳しい逆風下だからこそ、世の中の変化を先取りしようということだろう。新たな環境に対応したり、今あるものを生かしたり。そんな力が問われる年になりそうだ

 絵馬の中でも胸が痛むのは「就職できますように」と願う若い人のものだ。寒風の中で世代を超えて暖を分かち合う仕組みをどうつくるか。あらためて突き付けられた重い宿題。こちらは本格始動待ったなしだ。

 天風録 中国新聞 2010年1月5日
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2010年01月08日

頭弁帖「書道の街」を目指す福山市にとってとびきりのお年玉・・・ 天風録 八葉蓮華

 大宰府の次官として赴任する途中の下関。藤原(ふじわらの)佐理(すけまさ)はふっと思い出したようだ。「あ、上司に転勤あいさつをしてこなかった」。急いで知人にとりなしを頼む手紙をことづける。1000年前の平安時代のことだ

 どうも大まかな人だったらしい。宮中の行事で使う矢を予定日までに届け損ねる。関白御殿で行われる書のパフォーマンスには遅刻する。歴史書「大鏡」には「懈怠(けたい)(なまける)し」と書かれる始末である

 そんな人が歴史に残ったのは、書の名手だったからだ。天皇即位後の儀式に使う屏風(びょうぶ)に和歌を書くという大役を3度も務める。小野道風らとともに「三蹟(さんせき)」と称され、下関からのわび状は、今や「離洛(りらく)帖(じょう)」と呼ばれて国宝に

 ところがそれ以外に残る真筆はわずか5点。そのうちの1点で、存在は知られていながらも一時所在不明になっていた「頭弁(とうのべん)帖」が所有者から福山市に寄贈されることになった。自在の筆運びの写真を見ながら、ここにたどり着くまでのドラマを感じる

 あるはずだったものが見つかったといえば、昨年の佐藤・ニクソン秘密文書。こちらは現代史の暗がりに光を当てた。佐理の書は、唐風から和風に移る平安文化の輝きを伝えてくれそうだ。「書道の街」を目指す福山市にとってとびきりのお年玉になった。

 天風録 中国新聞 2010年1月4日
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2010年01月07日

「多国籍」の七福神を和気あいあい一つの宝船に乗せ、夢を託してきた日本人・・・ 天風録 八葉蓮華

 底冷えした元旦、広島市の二葉山ふもとの社寺を巡った。恵比須さんや大黒さん、布袋(ほてい)さん。七福神のお守りを集めつつ歩けば、次第に体がぽかぽかして今年の福も増えていくよう。ウオークラリー感覚で楽しむ若者たちの姿も目にした

 初詣でをかねてゆかりの神社仏閣を歩く七福神巡りが、各地で人気を呼んでいる。景気低迷が続く中、健康と御利益の一石二鳥を、と見直されているようだ。江戸の庶民の間で信仰が広がったのは300年前。宝船に勢ぞろいした絵は、いい初夢を見る縁起物だった

 おなじみの福の神たちだが、もともとの日本生まれは1人しかいない。釣りざおを持ってタイを抱えた恵比須さんだけ。残る6人は中国の道教や仏教、インドのヒンズー教に由来する神々といわれる

 そんな「多国籍」の七福神を和気あいあい一つの宝船に乗せ、夢を託してきた日本人。鳩山政権の外交ブレーンとして知られる寺島実郎さんは「日本のおもしろさ、たくましさがある」という。国際社会とうまくつき合うヒントがあるようにも見える

 今年の世界の夢は何といっても、核廃絶への道筋をつけることだろう。米国やロシア、中国にイランや北朝鮮のリーダーたちも「宝船」に仲良く乗って、福を呼び込んでほしいものだが…。

 天風録 中国新聞 2010年1月3日
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2010年01月06日

「一年の計」何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し・・・ 天風録 八葉蓮華

 空き地にたこが揚がるお正月。小さいころの思い出に触れながら、作家の井上靖が年頭によぎる思いを書いている。「何かを揚げなければならぬ。凧(たこ)に似たものを」(「元日のこと」)。烈風を味方にして高みを目指す、ということだろうか

 いつかはと思いつつ先延ばしにしてきた志。自分に言い訳しながら後回しにしてきたこと。それを見える形にして、今年こそはやるぞ、と大空に掲げてみる。名をなしてなお、風を背に己を鼓舞しようとする68歳の心意気が伝わる

 とてもそこまでのエネルギーは…とつぶやく人もいよう。烈風にもまれて消耗した人には、むしろ石川啄木の知られた一首が胸に響くだろうか。「何となく、今年はよい事あるごとし。元日の朝、晴れて風無し」

 20代半ばの啄木は、苦しい生活だった。病魔が体をむしばみ始め、せっかく得た仕事も休みがちになっていた。不如意の日々。それでも正月の穏やかさに喜びを感じる。ちょっとしたことに希望を見いだそうとする詩人の心の在りかを見る

 年が改まる。それだけで心が新たになる。気分をリセットして「一年の計」を考える日だろう。猛(たけ)き虎のように目標の一点に向かって走ろうと念じる人もいよう。しかし時には、足元の小さな幸せを慈しむ歩き方も思い出してみたい。

 天風録 中国新聞 2010年1月1日
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2010年01月05日

初日の出「輝きのある日本」新しい人間として新しい生活を始める・・・ 天風録 八葉蓮華

 昭和初年の大みそか。種田山頭火は漂泊の旅の途中、九州の炭坑町で足を休めた。「おだやかに沈みゆく太陽を見送りながら、私は自然に合掌した」と日記にある。年を締めくくる落日が、執着や欲望をぬぐい去ってくれると感じたのだろうか

 明けて元日の朝に拝む日の出は、さしずめ幸せや希望のシンボル。日本では古来、闇に差し込む光とともに年神が降りてくると信じられてきた。神話の天照大神も太陽の神だ。初日の出ツアーに海外まで出掛けるなぞ、外国人は理解に苦しむに違いない

 きょうから民間気象会社の「初日の出情報」が始まる。地点ごとに雲の厚さも勘案し、太陽が現れる時刻を1分単位で予想。携帯サイトで提供するという。寒風に震え今か今かと待つからこそ、御利益がある気もするが

 ようやく新しい経済成長戦略を決めた政府。柱の一つとする環境・エネルギー分野に、太陽光発電などの拡大を据える。底冷えが続く中、目指す「輝きのある日本」の実現は太陽頼みの感が強い

 山頭火は「来年からは新しい人間として新しい生活を始める」と続けている。人々が新年に託す願いは、いつもに増して切実だろう。元日にかけて冬型が強まる見込みの中国地方。せめて雲のすき間からでも、御来光を拝めれば。

 天風録 中国新聞 2009年12月31日
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2010年01月04日

サバイバル「私の島」電気や水道、何もない・・・ 天風録 八葉蓮華

 今どきのぜいたくは見せびらかすものではないらしい。1泊約20万円という瀬戸の小島の隠れ宿とか、6人乗りの貸し切りジェット機で巡る210万円の旅とか。広島市の百貨店が売り出したひときわ豪勢な福袋には、何となくお忍び気分が漂う

 島をあなただけのものにしませんか―。呉市沖に浮かぶ無人島を、財務省が近く競りにかける。先ごろの事前説明会には首都圏からも買い手が集まった。「ロマンを感じる」「自分だけの釣り場に」と本気モードだ

 船着き場もなければ、もちろん電気や水道はない。何もないからこそ試せるということもあるだろう。この夏、関西の大手企業が若手幹部のサバイバル研修を始めたのは、松山市近くの無人島だった

 人気作家の村上春樹さんも十数年前、犬一匹いない柳井市沖の烏島(からすじま)で一昼夜を過ごしている。「真っ裸になってする日光浴の何と気持ちよいこと」。誰にも見られていない解放感がたまらなかった、とエッセーに書いている

 呉かいわいでは、落札額は数百万円と予想されているようだ。「私の島」を持つのはひっそりしたぜいたく、というところだろうか。手に入れた者しかその気分を味わえない。かの村上さんは、夜にはい出すフナムシの群れにほうほうの体で逃げ出したらしいが。

 天風録 中国新聞 2009年12月30日
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2010年01月01日

厳しい冬を耐えた若芽は、必ずや希望の花を咲かすでしょう・・・ 天風録 八葉蓮華

 いつかいつかと待ち遠しい。沖縄から北上する桜前線の便りには何か心を浮き立たせるものがある。半世紀以上も開花日のお告げ役を務めてきた気象庁が、春を待たずに引退するという

 規制緩和で6年前から官民の予報合戦となっていた。目撃情報のメール網で精度を増す民間に比べ、過去の数字に頼る手法は分が悪かった。おまけに内輪の公益法人まで参戦。事業仕分けでやり玉に挙がる前に、と蓮舫参院議員の顔が浮かんだのかもしれない

 「桜より明日の天気当ててくれ」という川柳をネット上で見かけた覚えがある。余芸の当たり外れでたたかれ、本芸の天気予報までまゆにつばされかねない。そんな雲行きも面白くなかったに違いない

 温暖化も計算を狂わせた。桜前線のカーブは毎年違う凹凸を描くように。広島より東京の開花が早かった春がこの10年で6回もある。花芽にとっては寒さが目覚まし代わり。冬にちゃんと冷え込まねば咲く準備が遅れてしまう

 やはり春を待つ就職の最前線。こちらは「氷河期」といわれる冷え込みようだ。働く場を求め、10代や20代の若者が師走の都心をデモ行進するニュースに心が痛む。厳しい冬を耐えた若芽は、必ずや希望の花を咲かすでしょう―。そんな長期予報が出せる世の中でありたい。

 天風録 中国新聞 2009年12月27日
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