2009年11月17日

高度成長が始まったころのドタバタ喜劇「社長」昭和という時代に思いをはせる・・・ 天風録 八葉蓮華

 江の川のほとりに小さな映画記念館がある。戦後の黄金期にメガホンを握った松林宗恵(しゅうえ)監督ゆかりの品々が並ぶ。古里、江津市桜江町の文化施設「水の国」の一室。呼び物の一つは森繁久弥さんとのコンビで23本撮った「社長」シリーズだ

 米国出張から帰った途端、フォークで日本そばをすくいだす。仕事そっちのけで女性に色目を使う。軽薄な社長に振り回される部下。高度成長が始まったころのドタバタ喜劇は今見ても腹がよじれそうだ

 からっとして、どこかさめたユーモアも感じられる。森繁さんは中国東北部からの引き揚げ組。七つ年下で元海軍士官の松林さんを「無二の親友」と呼んだ。社長は元戦艦乗りで早メシの癖がなかなか抜けない―といったギャグも共作だったに違いない

 2人は酒を酌み交わすと、「戦友」をよく口ずさんだという。♪ここはお国を何百里 離れて遠き満州の…。軍歌というより、凍土に眠る友への鎮魂歌である。独特の森繁節はどんな哀調を帯びたことだろう

 ことしの終戦の日に松林さんは息を引き取った。計ったような「戦友」の旅立ち。同じころ森繁さんも体調を崩して入院したまま、おととい帰らぬ人となった。昭和という時代に思いをはせるよすがをまた失ってしまったような気がする。

 天風録 中国新聞 2009年11月12日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:14| 大阪 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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