米国出張から帰った途端、フォークで日本そばをすくいだす。仕事そっちのけで女性に色目を使う。軽薄な社長に振り回される部下。高度成長が始まったころのドタバタ喜劇は今見ても腹がよじれそうだ
からっとして、どこかさめたユーモアも感じられる。森繁さんは中国東北部からの引き揚げ組。七つ年下で元海軍士官の松林さんを「無二の親友」と呼んだ。社長は元戦艦乗りで早メシの癖がなかなか抜けない―といったギャグも共作だったに違いない
2人は酒を酌み交わすと、「戦友」をよく口ずさんだという。♪ここはお国を何百里 離れて遠き満州の…。軍歌というより、凍土に眠る友への鎮魂歌である。独特の森繁節はどんな哀調を帯びたことだろう
ことしの終戦の日に松林さんは息を引き取った。計ったような「戦友」の旅立ち。同じころ森繁さんも体調を崩して入院したまま、おととい帰らぬ人となった。昭和という時代に思いをはせるよすがをまた失ってしまったような気がする。
天風録 中国新聞 2009年11月12日
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