ところが近寄って、一枚一枚の葉の色模様を見るとびっくりする。緑から紅へ、紅から赤へ、黄へ、そして茶の枯れ葉色に、という移り変わり。カラーの世界がいつの間にかセピア色になっていく大林宣彦監督の映画を、ふと連想した
過去と現在とを行ったり来たりする物語。ロケ地にぴったりなのが、セピア色を思わせる古い港町・尾道だった。監督は後に、なぜここを選んだかのもう一つの理由を書いている。「撮影して全国の人に知ってもらい、愛してもらえるように努力する」。だから開発で壊すのはやめてほしかった、と
古い町には「便利で快適」を追い求めない住まい方があったという。例えば暑いからこそ味わえる廊下を渡る一陣の涼風。壊してしまったら、こうした感覚も忘れられてしまう。映画ではそんな思いも伝えたかったのだろうか
大林さんが、秋の叙勲を受けた。山一面の紅葉のような派手さはないが、桜紅葉の一枚一枚のように、子どもから大人へと移ろう心のひだを映した作品の数々。これからも色あせることはあるまい。
天風録 中国新聞 2009年11月4日
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