2009年10月08日

「国民みんなの財産」景観を守ることと便利さの両立を目指し・・・ 天風録 八葉蓮華

 幕末、福山市鞆のはるか沖合で蒸気船同士の衝突事故があった。坂本竜馬が乗り込んだ「いろは丸」と紀州藩の軍艦。いろは丸は沈没し、その後、地元住民らが遺物を引き揚げた。石積みの常夜灯や雁木(がんぎ)の近くに、白壁の「いろは丸展示館」がある

 竜馬は海援隊を組織して海運業に乗り出していた。いろは丸事件では、国際法である「万国公法」をちらつかせて紀州藩と談判。巨額の賠償金を約束させたという。海難裁判の先駆けである

 その歴史的な港を埋め立て、橋を架ける計画が裁判になっている。きのう、広島地裁は架橋差し止めの判決を下した。町並みの散策を楽しんでいるファンは、ホッとしたことだろう。「道が狭くて不便」という住民の声も分かる。だが、常夜灯の先に橋ができれば、景観は台なしになる。鞆の浦は国民みんなの財産でもある

 港の見える町家に2カ月ほど暮らした宮崎駿監督は、アニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の構想を練った。「道端にいすを出して談笑し、すれ違う人とあいさつをする光景がある。そういう宝を大切にすべきだ」

 前例にこだわらず合理的だったと言われる竜馬なら、景観を守ることと便利さの両立を目指したのではないか。賛成派と反対派の深い溝にこそ橋を架けてほしい。

 天風録 中国新聞 2009年10月2日
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ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:51| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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