2009年08月10日

梅雨明けもずれ込み、やっと「夏の海」心揺れる忘れがたい出会い・・・ 天風録 八葉蓮華

 波がざざあっと寄せては、さあっと引いていく。太古から繰り返されているゆったりしたリズム。夏の夕暮れ、海をじっと眺めていると、いつしか体までその揺れに共振しそうだ。川崎洋さんの詩「海で」を思い出す

 暮れなずむ浜辺で若者が二人、海水を一升瓶に詰めている。なぜと問うと…。「ぼくら生まれて始めて海を見た/海は昼も夜も揺れているのは驚くべきことだ」。そこで海の水を持ち帰り、たらいにあけて、終日揺れるさまを眺めるのだという

 現実世界と遠く離れたメルヘンのような話である。問うた人はうれしくなった。ところが詩にはオチがつく。「あなたもかつがれたのかね/あの二人は/近所の漁師の息子だよ」

 今年はエルニーニョ現象によって、地球の大気の揺れがいささか変調をきたしているらしい。梅雨明けも8月までずれ込み、水温もなかなか上がらなかった。それでもその後の暑さ。やっと「夏の海」になった

 まぶしいほどの日中の明るさと、夜の闇。そのはざまにある夏の夕暮れは、心が緩むような不思議な時間だ。川崎さんの詩も、ほとんど実体験をもとにしている。一場の夢のようなハプニングや、心揺れる忘れがたい出会い。あちこちの海辺の夕暮れに、詩の種が生まれ始めているに違いない。

 天風録 中国新聞 2009年8月9日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
ラベル:天風録
posted by 蓮華 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 天風録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。