2009年08月30日

日本人初の快挙「やり投げ」やりをどこまで飛ばすか・・・ 天風録 八葉蓮華

 やりを投げる競技者が古代ギリシャのつぼに描かれている。獲物を仕留め、戦の武器にもなる道具をどこまで飛ばすか。狩猟好きの民が編み出したスポーツが、やり投げである。北欧で盛んなのは、武勇に優れたバイキングの末裔(まつえい)が多いからだろうか

 ベルリンの世界陸上で金メダルをさらったのもノルウェーの選手。表彰式で隣に並んだのが村上幸史(ゆきふみ)選手(29)である。銅メダルを首にかけて「すごいことをやってしまったんだと、ようやく分かった」。日本人初の快挙に、驚きを包み隠すことがなかった

 この種目がわが国に紹介されてまだ100年足らず。競技人口はさほど増えず、世界大会では鳴かず飛ばずだった。外国勢の壁を破った村上選手は、愛媛県上島町の生名(いきな)島の出身。因島の目と鼻の先にある1900人の小さな島だ

 旧生名村は平成の大合併で消えた。村上選手が通った島の中学も2年前の春、廃校になった。「こんなにうれしいことは久しぶり」。顔なじみの「ゆっくん」のメダルに島は沸いている

 この辺りの海と島でかつて村上水軍が縦横無尽に活躍した。今も島の世帯の27%は村上姓。水軍はバイキングと比べられることもある。船の戦には飛び道具が付きもの。やりを構えた村上選手の姿が、水軍の武者とダブって見えてくる。

 天風録 中国新聞 2009年8月27日
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どこか抜けていて、緩んでいて、和ませる「ゆるキャラ」恩讐を超えた交流・・・ 天風録 八葉蓮華

「ゆるキャラ」の名付け親は漫画家のみうらじゅんさんだ。ご当地イベントなどにお目見えする着ぐるみ。ゆかりの動物や特産がデザインされているものの、どこか抜けていて、緩んでいて、和ませる

 一番人気は滋賀県の「ひこにゃん」だろう。彦根藩の伝説に出てくる猫に、かぶとを着せた。3年前のデビュー以来、ふっくらとしてかわいい、と口コミによってたちまち全国区に

 ひこにゃんが「特命」を帯びて萩市に乗り込んだ。彦根藩主で大老だった井伊直弼が、長州の吉田松陰を刑シさせて150年。恩讐(おんしゅう)を超えた交流を、と願う井伊家の子孫らと一緒だ。さすが人気者。行く先々で子どもたちに囲まれ、記念撮影をせがまれた

 いい、悪いと決めつけたり、がちがちに定義づけたりはしない。「ゆるさ」の意味を、みうらさんはそうとらえる。歴史の見方も同じかもしれない。開国を進めた直弼と、維新を担う多くの志士を育てた松蔭。それぞれの「義」を考え直すきっかけになるのなら、ひこにゃんも大したもの

 萩には重い宿題がある。官軍として攻め入った会津との和解だ。「白虎隊」の少年ら多くの犠牲を出した向こう側には、今もわだかまりが残るという。萩発の人気キャラが生まれ、辞を低うして赴けば…と想像してみる。

 天風録 中国新聞 2009年8月26日
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2009年08月26日

「リレー・フォー・ライフ」2人に1人はがんになる時代。手を携えて歩んでいければ・・・ 天風録 八葉蓮華

 「みんなで、夜歩く。ただそれだけのことが、どうしてこんなに特別なんだろう」。映画にもなった恩田陸さんの小説「夜のピクニック」に、主人公の女生徒たちが語り合う場面がある

 24時間かけて80キロを全校生徒が歩き通す高校の伝統行事をテーマにした物語。恋や勉強、進路…と悩み多い青春の日々。汗びっしょりになって一緒に歩けば、普段は話しにくい人にも声を掛けられる。そんな効用も大きいに違いない

 夜通し歩くイベントが来月22日から2日間、広島市の旧広島市民球場で開かれる。こちらは、がんの患者や経験者が主役。「リレー・フォー・ライフ」(命のリレー)と名付けて、患者、家族、市民がたすきをつないで1周400メートルのグラウンドを巡る

 同じ病気を経験していても、病状や悩みとなるとなかなか面と向かって切り出せない。初対面なら、なおさらだ。それが、並んで歩きながらであれば話しやすくなる。受け身でなく、自ら動くことで心も通じ合うのだろう

 米国で20年以上の歴史があるが、日本では3年前に始まったばかり。「独りで悩んでいる人の力になりたくて」。悪性リンパ腫(しゅ)と闘いながらイベントの準備に駆け付けた主婦もいる。2人に1人はがんになる時代。手を携えて歩んでいければと願う。

 天風録 中国新聞 2009年8月24日
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スピードにこだわるのは「伝説になるため」ダイナミックな走りで風を切る・・・ 天風録 八葉蓮華

 人はなぜスピードにこだわるのだろう。カナダ・カルガリーで21年前にあった冬のオリンピック。「氷上のF1」と呼ばれるボブスレー競技に、熱帯の国ジャマイカのチームが出場した。後に米国で「クール・ランニング」という映画になる

 五輪を目指す陸上選手が主人公。選考レースで転倒し、出場の夢はついえかけた。そこで別のスピード競技に挑戦するストーリー。「寒さが大の苦手」というウサイン・ボルト選手なら成り立たなかっただろう

 北京五輪での活躍から1年、世界最速の男はさらに進化していた。100メートルと200メートルで自らの記録を塗り替えた。2メートル近い長身を生かしたダイナミックな走りで風を切る。広島県とほぼ同じ人口の小国が生んだ天才に、再び見とれた

 国技ともいわれる陸上。1世紀近く続くジュニアの大会は特に関心が高く「原石」を探すプロも見つめる。ボルト選手が発掘されたのも、その大会だった。なるほど、英才教育の道を開く独特の仕組みだ

 映画の主人公は、思わぬアクシデントを乗り越えた。ボルト選手も、春に交通事故を起こして足の手術をしたが、あきらめなかった。スピードにこだわるのは「伝説になるため」。観客のホットな声援を浴びながらもクール・ランニングだったように見える。

 天風録 中国新聞 2009年8月23日
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2009年08月24日

「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」子どもの目線で取材し、記事にし・・・ 天風録 八葉蓮華

 畳2枚分の掲示板は「世界樹」と名付けられていた。訪れた子どもたちが、平和メッセージを葉っぱの形をした紙につづり、幹に張り付けている。横浜市の日本新聞博物館で開かれている「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」展の会場だ

 「にどとせんそうなんかしてほしくない」「心をひとつに」。たどたどしい字に気持ちがにじむ。「びょうきをなおす」という決意も。病の克服もまた一つの平和のかたちと見て頑張っているのだろう。3週間で300枚の「言の葉」が世界樹に茂った

 子どもたちをペンをとる気にさせたのは、ジュニアライターによる本紙連載「ひろしま国」の展示である。核や地球温暖化、貧困…。未来に影を落とすテーマを子どもの目線で取材し、記事にした仕事に、同世代の心が共鳴しているように見える

 夏休みとあって今月は家族連れなど2千人が博物館に訪れている。9月23日までの期間中、神奈川県内外の小中学校など50近い団体の予約が入っている。ヒロシマの思いが広がっていくようでうれしい

 佐々木禎子さんのシをきっかけに「原爆の子の像」づくりを呼びかけ、実現させた「子どもの力」。51年を経た今回の展示でも、それが確かめられる。オバマ米大統領の広島訪問を引き寄せる力に、とも願う。

 天風録 中国新聞 2009年8月22日
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2009年08月23日

未来志向「不倒翁」韓国が今のように開かれた国となる礎を築いた・・・ 天風録 八葉蓮華

「街にカメラを向けるな。スパイと間違われるぞ」。子ども合唱団員として渡ったソウルはぴりぴりしていた。35年前のことだ。今でこそ気軽な買い物ツアー先だが、当時は軍部独裁の重苦しい国だった

 独裁政権に付け狙われたのが、野党政治家のホープ金大中氏だ。東京のホテルから白昼、情報機関に拉致されたのはその前年。船上で足に重りを巻かれ「海に放り込まれる寸前だった」という。自衛隊機の追尾のおかげで命拾いする

 8年後には「シ刑判決」である。民主化を求めるデモ隊の200人近くが犠牲になった光州事件。首謀者として極刑を言い渡された。この時は国際社会からの圧力で刑場送りを免れる。何度もシ地を脱する姿から「不倒翁」と呼ばれた

 「自由」や「融和」の大切さが身にしみたのだろう。大統領になってからは、情報が自在に手に入るネット大国を目指し、北朝鮮との対話にも踏み切った。韓国が今のように開かれた国となる礎を築いたといっていい

 訪日した時には、国会で「未来志向の韓日関係を目指す」と演説した。日本の大衆文化を解禁し、サッカーW杯を共催した。拉致という主権侵害事件によって日本人が抱いていたわだかまり。それも時を経てほぼ消えたのを見届け、金氏は逝ったようにも見える。

 天風録 中国新聞 2009年8月19日
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2009年08月20日

天下分け目の決戦がスタート 継続か、チェンジか・・・ 天風録 八葉蓮華

 日本の政治変動は、ほぼ15年おきにやってくる―。永田町ではそんな「法則」が取りざたされているという。16年前の1993年に非自民の細川護煕首相が誕生。8カ月の短命に終わったが、自民党の長期政権に風穴を開けた熱気を思い出す

 さかのぼれば、金権政治で退陣に追い込まれた田中角栄元首相の逮捕が76年。国論を二分した日米安保条約が改定され、池田勇人首相が所得倍増計画を打ち上げた60年は、敗戦から15年後だった。なるほど不思議な周期ではある

 15年を区切りにして戦後を振り返ってみると、最初は復興期。高度成長時代に続いて2度のオイルショック後の低成長期、そしてバブル崩壊後の停滞期、といえようか。経済の変化が、政治の地殻変動をもたらすようにも見える

 長らくなかった政権選択を問う衆院選がきょう公示される。10年続く自民、公明両党の連立政権の継続か、民主党を中心とするチェンジか。世界同時不況の打撃がなお続く中で、天下分け目の決戦がスタートする

 日本記者クラブ主催のきのうの6党首討論会。質問は専ら民主の鳩山由紀夫代表に集まり、麻生太郎首相はすっかりお株を奪われた形だ。交代がそれだけ現実味を帯びてきているともいえる。果たして法則は生きているのだろうか。

 天風録 中国新聞 2009年8月18日
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2009年08月18日

飢えの記憶「担ぎ屋」食べ物が無くなると人間が人間でなくなる・・・ 天風録 八葉蓮華

 敗戦の翌年、15歳の野坂昭如さんは「担ぎ屋」にあこがれた。食べ物の配給が途絶えた焼け跡の大都会。コメや芋などを農家から仕入れ、闇市に流すバイヤーのことだ。取り締まりをかいくぐり、争い事もしばしば。でも羽振りは良かった

 あこがれの裏側には、痛切な飢餓体験がある。野坂さんは妹を飢えで失った。「生キ残レ少年少女。」(岩波現代文庫)にこう記す。「食べ物が無くなると人間が人間でなくなる。そういう地獄図を何度も見た」。だから「この島国の食料、特にコメについて死ぬまでこだわり続ける」と

 ご飯を平気で残す。「いただきます」を言わずに食べ始める。そんな若い世代に、飢えるとどうなるか伝えたいけど体験した者でないと分からない―。昭和一けた生まれの世代に共通するもどかしさだろう

 農山村を支えてきたのもこの世代だ。「いつかまた食料危機が」。土にしがみついてきた人々も老いを深める。荒れゆく田畑で、代わりに誰が食べ物を作り続けるのか

 もしも、海外からの食料輸入が止まったら。農林水産省は、芋中心の食生活にして配給制を敷く方針という。今の少年少女が「担ぎ屋」に頼るような時代にしてはなるまい。危うい飽食の中で、飢えの記憶をどう引き継いでいけばいいのだろうか。

 天風録 中国新聞 2009年8月16日
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2009年08月16日

8月の日本列島では、サイレンや鐘を合図に黙とうのリレーが続く・・・ 天風録 八葉蓮華

「僕は被爆2世」とラジオの番組で明かしたミュージシャンの福山雅治さん。不惑の年を迎え、古里長崎の原風景がよみがえるという。真っ先に浮かぶ音は「8月のサイレン」だ。そんな詩を最新アルバムに添えている

 デビュー20年の記念盤は「残響」と名付けられている。振り返った半生。切ないラブソングや青春の追憶の中に海の向こうのSOSを伝える歌詞が挟まれる。「自由の名のもと/響く銃声が/何を正義に/その生命奪うのか」

 硬骨の歌は、敬愛している竹原市出身の先輩ミュージシャン浜田省吾さん(56)の世界と響き合う。東西冷戦を「権力(ちから)と権力のシーソーゲーム」となじり、地球レベルの危機に対し、歌による警鐘を鳴らしてきた人だ。同じ被爆2世という共感もあるのだろうか

 6日、9日、そして15日。8月の日本列島では、サイレンや鐘を合図に黙とうのリレーが続く。高校球児の熱戦に沸く甲子園も、きょうばかりは正午のひととき、球音も消え、応援合戦もやむ

 夏空に鳴り渡る「ウウー」という大音声。その途端に、辺りの空気がピリッと引き締まる。戦後生まれでも「非常時」気分に包まれてくるから不思議だ。福山さんの心に響き続ける平和へのサイレン。聞く人にどう伝わっていくのだろう。

 天風録 中国新聞 2009年8月15日
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2009年08月15日

鉄づくりツアー「産業のコメ」盆も正月もない・・・ 天風録 八葉蓮華

 鉄板1キロの市場価格はおよそ70円という。同じぐらいの重さといえば大根1本。スーパーで150円ぐらいだから、鉄は大根より安いといえる。それでいて用途は広い。ビルを支え、自動車や鉄道に変身し、機械となってさまざまな物を生み出す

 地球にはふんだんに鉄がある。だから安く調達できる。求めやすい上に、それなしでは産業が成り立たない。そこから「産業のコメ」とも呼ばれてきた。夏休みの鉄づくりツアーで、その現場を見た

 福山市にあるJFEスチールの製鉄所。マツダスタジアムの千倍近い広大な構内に、100メートルの溶鉱炉がそそり立つ。中でも迫力があるのは圧延ラインだ。真っ赤に焼けた鉄の塊が、4千トンの力で数ミリの薄板に加工される

 温度は千度に達する。20〜30メートル離れた見学ルートにいても、その瞬間には熱がワッと襲いかかり、体中から汗が噴き出した。今でこそ現場にほとんど人はいないが、自動化する前は、さぞ厳しい作業だっただろう

 不況の影響で4基の高炉も1基は休止している。「産業のコメ」としての存在感もやや薄れがち。しかしエコカーに使われる薄くて強い高張力鋼板などは、製鉄所でしかつくれない。盆も正月もない高炉に向かって「頑張っているね」とそっとつぶやく。

 天風録 中国新聞 2009年8月14日
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2009年08月14日

都会育ちの子や孫「古里への誇り」帰省しても盆踊りが踊れない・・・ 天風録 八葉蓮華

 キュッ、キュ。乾いた音をたてる鳴き砂を踏みながら、踊りの輪が広がる。やぐら太鼓と肉声の口説き歌。耳を澄ませば日本海の波音が聞こえる。飾り気はないが、なんともぜいたくな四重奏だ。夜空の下で、人と自然が溶け合うような気がしてくる

 大田市仁摩町馬路(まじ)の琴ケ浜できょうから始まる盆踊り。三晩続く踊りの主役は、古里に帰ってきた人々だ。全国を渡り歩いた石見左官を生んだ地。普段はお年寄りが目立つ660人の地区だが、盆の人口は3倍になる

 先祖の霊を迎えて供養する盆。今年は実家にたどり着くのが大変、という人も多かろう。千円高速の渋滞に豪雨禍、そして地震…。東名高速道の崩落現場では、帰省の車列をさばこうと突貫工事が続く。安全最優先でと願わずにはいられない

 人間にも帰巣本能のようなものがあるのだろう。年をとればとるほど、遠く離れていればいるほど、古里へ引かれる思いは断ちがたい。ただ、そこで育っていない子や孫の代はどうなるのか

 馬路でも、盆に帰省しても踊れない若者が増えた。そこで、都会育ちの子どもに踊りを教え始めた。琴ケ浜の砂は清掃を続けないと鳴かなくなる。踊りも、同じように手を掛けて次の世代に。引き継ごうとしているのは古里への誇りである。

 天風録 中国新聞 2009年8月13日
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2009年08月13日

「災害列島」警戒して備えることに慣れているから・・・ 天風録 八葉蓮華

 静岡県民は地震に対して非常に敏感。県出身のさくらももこさんがコミック「ちびまる子ちゃん」で、そう言っている。「震度1の揺れでも家族全員で息をのんで電灯のヒモに注目するという光景」があちこちで見られるのだそうだ

 100年から150年の周期で起きる東海地震が近いとされる。「揺れた。ほら、電気のヒモが」。ユーモラスに描かれている一こまは緊張の一瞬。きのうの朝、この地方を震度6弱の揺れが襲った

 県内では100人がけがをした。しかしほとんどが軽傷で、揺れの規模の割に人の被害が少なかったのは不幸中の幸いだった。家具を固定しておく。高いところに物を置かない。日ごろの注意に加えて、県も家の補強をバックアップしてきた。「非常に敏感」な防災意識があったに違いない

 連想したのは沖縄である。台風銀座と言われながら、大被害のニュースをあまり聞かない。なぜ、と現地の知人に聞いたことがある。「警戒して備えることに慣れているから。たまに被害に遭うのは本土からの移住者」

 たて続けにやってきた豪雨と地震。まるで「災害列島」だ。しかし迎える側に心の準備があるとないとでは大違いだろう。「万一」を想定しつつ、異変のサインに敏感になりたい。まる子ちゃんの家族のように。

 天風録 中国新聞 2009年8月12日
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2009年08月12日

気まぐれな天候「甲子園」水の如くなくてならない人になれ・・・ 天風録 八葉蓮華

 三原の街は、昔から水との縁が深い。戦国時代に築かれた城は、湾内の小島をつないだ水軍の要塞(ようさい)が原型。堀には海の水を巧みに引き込み、満潮ともなれば一層際立つ姿から「浮城」とも呼ばれた

 この街から夏の全国高校野球大会に出場した、広島県代表の如水館が古豪の高知と対戦。2日続けて試合途中に雨が激しくなり、ノーゲームとなった。接近してきた台風のせいとはいえ、連続の水入りは、甲子園の歴史でも例がないらしい

 一昨日は、2―0と如水館が先制していた三回に雨が強くなった。きのうは逆に序盤リードを許し、逆転した後に6―5まで詰め寄られた五回での中断だった。きょうの第4試合で、あらためて決着をつけることになる

 「勝ってもいないのに3試合やらせてもらえる」とは、高知の監督の弁。やや分が悪かっただけに、調整法の見直しに向けて厳しい顔つきだ。対する如水館のエースは「気持ちを切り替え勝負するだけ」と、3連投の覚悟をしているのが頼もしい

 「水の如(ごと)くなくてならない人になれ」が如水館の建学の精神。気まぐれな天候を味方に付けるには、変幻自在の水軍の心構えで立ち向かうことだろう。映画監督大林宣彦さんが水をテーマに作詞した校歌もある。歓喜の旋律を甲子園でぜひ聞きたい。

 天風録 中国新聞 2009年8月11日
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2009年08月11日

アジア各地にいるファン「覚せい剤所持の疑いで逮捕」イメージを自ら壊した酒井容疑者・・・ 天風録 八葉蓮華

 愛くるしい笑顔に元気いっぱいの歌声。20年前、ひろしまフラワーフェスティバルでFF歌手を務めた。アイドル「のりピー」のさわやかなイメージが、警察に向かう車中でうつむく酒井法子容疑者の映像と、すんなり重ならない

 家庭を大事にしながらドラマや歌もこなす。最近は良き妻、優しいママという印象だった。「覚せい剤所持の疑いで逮捕」との落差に驚くばかりだ。薬物は絶対ダメ、と訴えるイベントに出たこともあったのに

 仕事がはかどる、疲れを感じない…。戦時中は軍需工場などで使われていた覚せい剤。戦後、市中に流れ出て一気に広まった。中毒になった作家や芸能人も少なくない。混乱と不安が渦巻いた時代が見える

 今は、3度目の薬物乱用期といわれる。芸能界だけでなく大学生や力士の事件が後を絶たない。好奇心から近づく若者もいれば、家庭の悩みから手を出す主婦も増えているという。つかの間の逃げ場が欲しいのだろうか

 薬物中毒に苦しみながら、周りの人に支えられて復活を果たした人もいる。英国の人気歌手エルトン・ジョンさんや「ギターの神様」エリック・クラプトンさんだ。イメージを自ら壊した酒井容疑者。まず真実をすべて話してほしい。アジア各地にいるファンもきっと同じ思いのはずだ。

 天風録 中国新聞 2009年8月10日
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2009年08月10日

梅雨明けもずれ込み、やっと「夏の海」心揺れる忘れがたい出会い・・・ 天風録 八葉蓮華

 波がざざあっと寄せては、さあっと引いていく。太古から繰り返されているゆったりしたリズム。夏の夕暮れ、海をじっと眺めていると、いつしか体までその揺れに共振しそうだ。川崎洋さんの詩「海で」を思い出す

 暮れなずむ浜辺で若者が二人、海水を一升瓶に詰めている。なぜと問うと…。「ぼくら生まれて始めて海を見た/海は昼も夜も揺れているのは驚くべきことだ」。そこで海の水を持ち帰り、たらいにあけて、終日揺れるさまを眺めるのだという

 現実世界と遠く離れたメルヘンのような話である。問うた人はうれしくなった。ところが詩にはオチがつく。「あなたもかつがれたのかね/あの二人は/近所の漁師の息子だよ」

 今年はエルニーニョ現象によって、地球の大気の揺れがいささか変調をきたしているらしい。梅雨明けも8月までずれ込み、水温もなかなか上がらなかった。それでもその後の暑さ。やっと「夏の海」になった

 まぶしいほどの日中の明るさと、夜の闇。そのはざまにある夏の夕暮れは、心が緩むような不思議な時間だ。川崎さんの詩も、ほとんど実体験をもとにしている。一場の夢のようなハプニングや、心揺れる忘れがたい出会い。あちこちの海辺の夕暮れに、詩の種が生まれ始めているに違いない。

 天風録 中国新聞 2009年8月9日
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2009年08月09日

昆虫の宝庫「夏休み」蝉時雨ぜいぜいぜい・・・ 天風録 八葉蓮華

 まぶしい青空に、カッと太陽が照りつける。蝉(せみ)時雨が、そこらじゅうに響き渡る。夏ならではの光景だ。「たいよう ばんざい ざいざいざい」。セミの声をこう聞いたのは、詩人のまど・みちおさん。昆虫たちの喜びを代弁しているようだ

 まどさんの出身地の周南市が、児童向けに「昆虫の宝庫」という大型のパンフレットをつくった。セミはもちろんクワガタ、カミキリ、タガメ…。見ただけで懐かしい。思い出すのは田舎で虫を追った夏休み。昆虫は、大人を少年時代に引き戻す

 コンビナートの街だけどちょっと足を延ばせばいろんな昆虫がいる。それを知ってほしいと地元の愛好家が企画した。早速、採ってきた虫の名前をパンフで確かめている子どももいるだろう。いつか思い出の一こまになるはずだ

 炎天に鳴き声を振り絞るのはセミだけではない。総選挙の公示まであと10日。立候補予定者や政党のアピールもボルテージが上がっている。政権がかかった歴史的な戦いだから、無理もなかろう

 マニフェストを見ると、あれをします、これもします。ありがたいことだが、懐を痛めずに済むムシのいい話はないと、みんな思っている。財源は。いずれ増税では。「ざいざいざい」の大合唱がつい「ぜいぜいぜい」にも聞こえる

 天風録 中国新聞 2009年8月8日
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2009年08月08日

被爆地の思い「核の傘」すれ違いの溝も深い・・・ 天風録 八葉蓮華

 広島市の平和記念式典に初めて出席した首相は佐藤栄作氏だった。退任前年の1971年。激しい風雨の中、献花の際に女子学生が飛び出したり、「帰れ」コールを浴びたり…。それでも「多数の参会者が声援を送ってくれた方が記憶に残る」と日記にある

 ともすれば首相の発言は被爆地の思いとすれ違う。12年前、当時の平岡敬市長は平和宣言で「核の傘」からの脱却を求めた。式典後、橋本龍太郎氏は「できっこない」と言い切ったという。6回も訪れたのに被爆者代表から要望を聞く会にほとんど顔を出さなかったのは小泉純一郎氏だ

 きのうは麻生太郎首相が会場に足を運んだ。6年越しの懸案だった原爆症認定訴訟で原告全員の救済を決めた。しかし直後の記者会見では硬い表情で、核の傘は必要とも。すくい取られた願いがある一方で、すれ違いの溝も深い

 民主党の鳩山由紀夫代表の姿もあった。被爆者の体験に耳を傾け「核廃絶に向けて皆さんとともに頑張りたい」。ただ、今は野党の党首。将来首相になったとしたら、その時どこまで寄り添ってくれるか…

 核兵器を「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」の非核三原則。初めて表明したのも佐藤氏だった。首相が誰になろうと、国是に関してすれ違いがあってはなるまい。

 天風録 中国新聞 2009年8月7日
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2009年08月07日

「あの日を語る遺品」やがて被爆者から証言がじかに聞けない時代になる・・・ 天風録 八葉蓮華

 娘が着ていた女学校の制服が形見となった。焼け焦げてぼろぼろ。それでも母は桐箱(きりばこ)に入れて大切にした。月命日の度に取り出しては涙を流した。その遺品が先月から、原爆資料館で展示されている

 「ごめんね。ごめんね。熱かったじゃろ」。説明に添えてあるのは母の言葉だ。建物疎開に出ていて閃光(せんこう)を浴び、手当てのかいなく息を引き取った。母は生前、いつも制服に向かって謝っていたという。じっと読んでいた女子高生はハンカチを目に当てた

 あの日を語る遺品にはすべて忘れがたい記憶がある。ただ子や孫の代になれば、意味が忘れられてしまうかもしれない。それならいっそ…ということなのだろう。大事な形見を資料館に寄贈する人が増えてきた。爆心地近くで拾った瓦のかけらを「遺骨代わり」と託した人もいる

 前身の陳列室から数えて今年で60年。遺品など資料館の収蔵点数は2万を超えた。温度は22〜23度、湿度は50%。年中変わらぬ地下の収蔵庫では、衣類を桐のたんすに入れているという。遺族の思いをくみ、きちんと未来に残したい。そんな気遣いも感じる

 ただ公開できているのは、全体の2%ほどだ。やがて被爆者から証言がじかに聞けない時代になる。遺品にどう語らせるか。それにどう耳を傾けるか。

 天風録 中国新聞 2009年8月6日
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2009年08月06日

裁判員裁判「平易を主とする」難しい言葉で固まった世界に風穴を開ける・・・ 天風録 八葉蓮華

 つい「応有の材料」と書いてしまって、漢語では通じないと気づく。そこで「有り合い(あり合わせ)の品」と書き換えた。こんなふうに書いては直し、書いては直した、と福沢諭吉が回想している(「福沢全集緒言」)

 周りの者に聞かせて分からない言葉ではだめ。文章の草稿は家族にも必ず一度は読ませ、引っかかる字句があれば、改めた。一万円札の顔は「難解の文字を避けて平易を主とするの一事」に徹する人でもあった

 「難解」を絵に描いたような場所がこれまでの法廷だ。難しい用語が飛び交い、当事者である被告でさえちんぷんかんぷんだったかもしれない。東京地裁で始まった初の裁判員裁判で、それががらりと変わった

 素人の裁判員にどうやったら理解してもらえるか。「平易」を競うのが、検察と弁護側のもう一つの勝負どころとなる。例えば「防御創」は「とっさに刃物を受け止めたり、払いのけようとしてできる傷」。丁寧すぎるほどの言い換え一つに、工夫が伝わる

 易しい言葉は、難しい言葉で固まった世界に風穴を開ける。諭吉の「学問のすゝめ」は、まだ封建的な気風の残る明治初年の人々の心を揺さぶり、大ベストセラーになった。これから各地で始まる裁判員裁判の法廷には、どんな風が吹くのだろう。

 天風録 中国新聞 2009年8月5日
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2009年08月05日

「一流と超一流の差は精神力」昔はふんどしで泳いでいた。水着のことで騒ぎすぎ・・・ 天風録 八葉蓮華

 戦後間もない1949年、打ちひしがれた日本人に自信と希望を与えてくれたヒーローが二人いる。一人がノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹さん。もう一人が、水泳選手として活躍した古橋広之進さんである

 敗戦国日本は48年のロンドン五輪に招待されなかった。翌年、米国ロサンゼルスでの全米選手権に招かれた古橋さん。400、800、1500メートル自由形で世界新を連発し、米国メディアから「フジヤマのトビウオ」と称賛された。日本人が熱狂したのはいうまでもない

 引退後は、後進の育成に力を注ぐ。モットーは「魚になるまで泳げ」。94年の広島アジア大会では組織委員会の会長を務めた。その下で理事・競技部長だった立川哲男さん(74)は「ざっくばらんで、人の話をよく聞いてくれた」という。今でも心に残っている言葉が「一流と超一流の差は精神力」

 高速水着問題が持ち上がると「昔はふんどしで泳いでいた。水着のことで騒ぎすぎ」と苦言を呈した。だが、国際水連副会長として参加したローマの世界水泳選手権は「水着力」による記録ラッシュ。どんな気持ちで見つめていたのだろう

 大会最終日の朝、滞在中のホテルで突然、亡くなった。80歳。最後まで現場にこだわっていた古橋さんらしい最期だった。

 天風録 中国新聞 2009年8月4日
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