南の国や洋上からは、皆既日食の映像が届いた。白昼から一気に暗闇へ。やがて天空のダイヤモンドリングの端が輝きを増す。光の世界が戻ると歓声がわいた。普段はあって当たり前。隠れることで、その存在が劇的に際立つ
日食が予測できなかったころの人々にとっては、一種の天変地異だった。神とあがめる太陽がにわかに欠けて暗くなれば、恐れおののいただろう。そして日輪の復活は再生のドラマだ。天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れて現れる日本神話の場面は、日食を表すともいわれる
記録的な豪雨が山口県内を襲い、多くのシ者、行方不明者が出た。土砂で埋まった老人ホームから運び出される車いす、あおむけに埋まった車…。痛々しい光景に言葉を失う。かなたで起きる日食を秒単位で予測する現代科学だが、足元の豪雨は見通せない
平穏な生活も、あって当たり前と思いがちだ。失われて初めて、あの時こうすればと後悔の念にかられる。人知を超えることもある自然の営み。恐れを抱くことから、日ごろの備えを見直したい。
天風録 中国新聞 2009年7月23日
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